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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

片桐仁の アートっかかり!

質量ともに圧倒されるコレクション! 名家の世界を堪能できる『ハプスブルク展』

毎月連載

第15回

19/11/10(日)

数世紀にわたりヨーロッパの中心に君臨し続けたハプスブルク家。そんな名家が誇る世界屈指のコレクションを、国立西洋美術館の主任研究員、中田明日佳さんに解説いただきながら鑑賞しました。

15世紀後半から始まったコレクション
甲冑好きなコレクターも

中田 この展覧会は、ハプスブルク家のコレクションの歴史を紹介するものです。同家の人々や歴史の紹介を織り交ぜながら、時代ごとの収集傾向などを紹介しています。第1章は「ハプスブルク家のコレクションの始まり」として、15世紀後半から16世紀にかけて、本格的な収集が行われるようになった時代を見ていきます。

片桐 ローマ王の肖像画で始まるんですね。

ベルンハルト・シュトリーゲルとその工房、あるいは工房作
《ローマ王としてのマクシミリアン1世》1507/08年頃 油彩/板 ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum Wien

中田 この人物はマクシミリアン1世で、ハプスブルク家出身の神聖ローマ皇帝です。神聖ローマ帝国というのは小さな国の連合体で、建前上は皇帝を選挙で選ぶ仕組みをとっていました。しかし、ハプスブルク家は15世紀半ばごろから皇帝の座をほぼ世襲で独占するようになります。

片桐 マントの生地の描き方がめちゃくちゃ細かい。板に描かれた絵なんですね。

中田 特に北イタリアなどでカンヴァスの使用が普及していた頃ですが、北方ではまだ主に木の板に油彩で描いていました。板は精緻な描写により適しているという特徴があります。

珍奇な素材を使った
金銀細工の工芸に魅了!

片桐 うわっ!すごい甲冑が並んでいる! 甲冑ってあまり美術館で見ることないからコーフンしますね。

イェルク・ゾイゼンホーファー《徒歩槍試合用甲冑、オーストリア大公フェルディナント2世の「鷲の紋章付き甲冑セット」より》インスブルック 1547年 ウィーン美術史美術館

片桐 時代によって流行があるんでしょうね。これはスカートみたいなのが革で吊り下げられている。

中田 フェルディナント2世の甲冑です。彼は甲冑の収集を熱心にしていて、過去数世紀までさかのぼって有名な人の甲冑を集めたりしていたようです。

片桐 甲冑マニアだったんだ。実際のコレクションはものすごい数あるんでしょうね。

中田 そうですね。ウィーン美術史美術館には武器甲冑のための部門があるくらいです。

《角杯(グリフィンの鉤爪)》
北ドイツ? 15世紀初頭 角、鍍金された銀の台 ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum Wien

片桐 グリフィンの鉤爪! これ、注目していたんですよ。この形がなんとも言えないかわいらしさがあって好きなんですよね。鳥足がステキ!

中田 おそらくウシ科の動物のツノで作られたものです。

片桐 こっちは下半身が魚のおじいさんがほら貝を背負ってますよ!?

中田 ほら貝に半身半魚の体をもつ海神の息子、トリトン像が組み合わされているものです。

片桐 ウミガメの甲羅から作ったハート型の容器とか、大実椰子から作った水差しとか、こういう立体もの大好きです!

偏愛収集で名を馳せた
ルドルフ2世

ヨーゼフ・ハインツ(父)《神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の肖像》
1592年頃 油彩/銅板 ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum Wien

中田 第2章は「ルドルフ2世とプラハの宮廷」です。

片桐 ルドルフ2世って、宮廷画家だったアルチンボルドを擁護したり、プラハの宮廷内に動物園や植物園を作った人ですよね。

中田 ルドルフ2世は自分の趣味をかなり反映したコレクションを形成しました。またデューラーが大好きで、非常に熱心に作品を収集していたようです。

バルトロメウス・スプランゲル《オデュッセウスとキルケ》
1580-85年頃 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館

片桐 この絵は動物が至るところからわんさか顔を出していますね! 馬、牛、イノシシ、狐、ライオン…。

中田 古代神話の一幕で、動物たちはキルケの魔術により動物に変えられたオデュッセウスの部下たちです。ルドルフの宮廷に設けられた動物園にいる動物たちを観察して描いたのではないでしょうか。

片桐 なるほどね。でもこのライオンは犬みたいで可愛すぎます。動物園にライオンはいなかったってことでしょうかね?

ベラスケスによる肖像画は
婚約者の姿を伝えるためのもの

中田 ここでは「スペイン・ハプスブルク家とレオポルト1世」の収集を見ていきます。16世紀の半ばから17世紀末まで、ハプスブルク家はスペイン系とオーストリア系に分裂しますが、その間、両家の間では密な親戚付き合いが行われ、しばしば縁組もなされましたが、近況を知らせたり、婚約者の姿を伝えたりするために肖像画が利用されました。ベラスケスはスペイン・ハプスブルク家お抱えの宮廷画家でした。

ディエゴ・ベラスケス《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》
1659年 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum Wien
ディエゴ・ベラスケス《スペイン国王フェリペ4世の肖像》
1631/32年 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum Wien

片桐 出た! ベラスケス! この肖像画も許嫁に送られたんですか?

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