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東京スカパラダイスオーケストラ、30周年記念ベストがチャート好調 世代問わず楽しめる“国民的歌謡集”に

リアルサウンド

20/3/28(土) 10:00

 3月最後の週間アルバムランキング、時節柄ベストアルバムが多数登場しています。10位にTM NETWORK『Gift from Fanks T』、9位にGLAY『REVIEW II ~BEST OF GLAY~』、6位には大滝詠一が90年代半ば以降TVドラマに書き下ろした楽曲を集めた『Happy Ending』。それぞれ“いかにもCD世代が飛びつきそうな……”と言える企画ではありますが、さらに上位を見ていくとスカパラの名前が飛び込んできます。

(関連:東京スカパラダイスオーケストラ、30周年記念ベストがチャート好調

 初登場4位の『TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』、初週のセールスは約2万枚。しばらく考えました。これは“いかにもCD世代”が買い求めた結果でしょうか?

 スカパラが25周年に出した『THE LAST』も、ボリュームたっぷりの3枚組ベストでしたが、30周年を記念した今回はさらに豪華絢爛。これまでに多くの名曲&名共演を生んできた“歌ものコラボ”が初めてコンパイルされています。茂木欣一(Dr)が歌うセルフ歌もの、さらにはaikoをゲストボーカルに迎えて作られた未発表の新曲もプラスされ、2枚のディスクがぜーんぶ歌もの。Disc3のみインストですが、ここにもさかなクンや上原ひろみとのコラボが並び、ゲスト名を羅列するだけでも目眩のしそうな大作となっています。

 どんな大型イベントやフェスであっても、aikoと桜井和寿と10-FEET、Charaとチバユウスケと斎藤宏介が一堂に会することはまずないし、あったところでひとつのステージでのセッションなどありえないでしょう。スカパラの下だからこそ彼らの名前は並列に並び、世代も音楽性の違いも関係なく“いい感じの歌もの”として聴けてしまう。ゲストの個性をしっかり立てつつ、同時に必ずスカパラ色に染めていく、その器の大きさと、リスペクトを音で具現化できるミュージシャンシップには頭が下がるばかりです。

 そしてまた、話題性のあとに残るのは普遍性なんですよね。たとえば、最も古いコラボのひとつであり、今やフェスの定番曲となっている「美しく燃える森 feat.奥田民生」は2002年発表。18年が経った今もまるで古びないし、「あぁ、時代だねぇ……」みたいな気持ちが一切起こらない。今をときめく売れっ子を狙い撃ちにしていけば簡単に話題は作れますが、それでは決して続かなかったし、こうして作品化もできなかったはず。スカパラがこのコラボに課してきた条件、信念のようなものが、ここからは浮かび上がってきます。

 ポップ=その時代に輝いているアイコンであること。独自性=時流に左右されない喉を持つシンガーであること。二つの条件が満たされているのは当然ながら、時代とともに若手の起用が進んでいったのも特徴的。そもそもは田島貴男、チバユウスケ、奥田民生から始まった“歌ものコラボ”ですから、同じ路線で続けていればアクの強いオジサンだらけになっていた。ハナレグミに声をかけ、モンパチ(MONGOL800)全員とセッションし、片平里菜や尾崎世界観に白羽の矢を立てたのは、このコラボの鮮度を保ちたいという願いの表れでしょう。あるいは、慣れ親しんだ昭和イズムみたいなもので固まらないための起爆剤。スカパラが30年間シーンを生き抜いてきたヒントが、このベスト盤からは見えてきます。

 結論として、これは“いかにもCD世代”のものにあらず。本当に世代を限定せずに楽しめる国民的歌謡集。手前味噌ですが、「めくれたオレンジ feat.田島貴男」の衝撃を今も覚えている私と、「Paradise Has No Border」でスカパラを知った小学生の娘も、この作品を楽しんでおります。(石井恵梨子)

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