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平辻哲也 発信する!映画館 ~シネコン・SNSの時代に~

池袋は「アニメの街」だけじゃない。 演劇色を打ち出すシネ・リーブル池袋。

隔週連載

第51回

20/12/6(日)

「ボーダーレスなセレクトで映像カルチャーを発信する」をコンセプトにしているシネ・リーブル池袋。アニメや日本映画に特徴がある印象だが、昨今、力を入れているのは、「ナショナル・シアター・ライブ」(NTLive)の特集上映だ。これは、英国ナショナル・シアターが傑作舞台をこだわりのカメラワークで収録し、映画館で上映するプロジェクト。12月18日から来年1月14日までは『ナショナル・シアター・ライブ アンコール冬祭り2020』と題して珠玉の8作品を上映する。

『天気の子』『君は彼方』などが作られ、「アニメの街」として知られるようになった池袋だが、もう一つ、「演劇の街」の顔も持つ。「シネ・リーブル池袋」があるのは東京芸術劇場がある池袋西口。駅ビル型ショッピングセンターのルミネ8階にある。寒さ深まるこの時期、雨や雪でも濡れずに来場できるのが便利だ。

180席のシアター1と130席のシアター2の2スクリーン。もともと、2000年に日活の直営館としてオープンし、2009年に東京テアトルと業務提携。館名はそのままに運営は東京テアトルが行っている。平日のサービスデイが充実のテアトル系だけに、月曜シニアデー(60歳以上1000円)、火曜ハッピーチューズデー(会員1100円)、水曜サービスデイ(1200円)、木曜ハッピーサースデイ(会員1100円)と、ほかのシネコンよりも低価格で見られる。

スクリーン1
最前列はリクライニング機能つき

支配人を務めるのは日活時代にアルバイトを経て、入社した浦野洋子さん。「以前はヨーロッパ系が多かったのですが、アニプレックスさんの『魔法少女リリカルなのは』(2010年)あたりからアニメ作品が増えました。池袋はアニメの街と言われていますが、最近では個々の劇場が特徴を出しているような気がします。シネ・リーブル池袋では2016年から、ナショナル・シアター・ライブの上映を開始させていただき、以降、新作や特集上映をやっていますが、お客様がどんどんついてきてくださっています」。

支配人の浦野洋子さん

ナショナル・シアター・ライブは2009年6月に英国では第1弾となるヘレン・ミレン主演の『フェードル』が上映され、現在は世界40カ国以上で展開中。日本では2014年にダニー・ボイル演出、ベネディクト・カンバーバッチ&ジョニー・L・ミラー主演の『フランケンシュタイン』で初上陸。有名映画監督、映画スターが多数参加しており、映画ファンとの親和性も高い。同館ではコロナ禍の外出自粛明けの7月末から「NTLiveアンコール夏祭り」として16作品を上映し、好評だった。

「コロナ禍の中、演劇を求めていたファンが多数見に来てくださったんだと思います。これまでの中心層は30〜50代の方でしたが、4〜5人の学生のグループも来てくださって、客層の広がりを感じました。大学の先生からもお問い合わせを受けることもあるのですが、授業の課題として使われているそうです。それとは別に、休みの間に興味を持った学生さんが、劇場に行くのは難しくても、映画館なら、という感じで来てくださっているのかもしれません」と分析する。

スクリーン2

浦野さん自身も、劇団四季や東宝のミュージカルがお好きだとか、初心者にオススメのナショナル・シアター・ライブ作品は、サム・メンデス監督が投資家リーマン家の3世代の栄光と衰退を描いた『リーマン・トリロジー』と、ダニー・ボイル監督が2バージョンを演出した『フランケンシュタイン』という。「『リーマン・トリロジー』は本当にあった出来事を題材にしているので、身近に受け入れやすいと思っています。主演3人の演技を堪能ください。『フランケンシュタイン』はみなさんがご存じの作品で、ベネディクト・カンバーバッチが博士役、怪物役の2バージョンを演じていますので、見比べていただけたらと思います」と話す。

ロビー

東京テアトル系は個性的な映画館が多い印象だが、全国に9つある映画館のうち、半分以上が女性支配人。作品を決めるのは編成部だそうだが、各劇場側からも意見を言いやすい環境が整っているという。「じわじわと演劇に強い映画館というイメージがつき、ファンの方々もついてきたと感じています。自粛明けのナショナル・シアター・ライブ特集の時に、改めて実感しました。今まで来てくださったお客様を大事にしつつ、今後もジャンルを関係なく取り入れ、チャレンジしていけたらなと思います」と意気込む。来年は松竹ブロードウェイシネマの『キンキーブーツ』(仮題)、『ジャニス・ジョプリン』(仮題)もラインナップに入っている。

※『ナショナル・シアター・ライヴ2020』『ナショナル・シアター・ライブ アンコール冬祭り2020』は特別興行料金。

映画館データ

シネ・リーブル池袋

住所:東京都豊島区西池袋 1-11-1 ルミネ池袋 8F
電話: 03-3590-2126
公式サイト:シネ・リーブル池袋

プロフィール

平辻哲也(ひらつじ・てつや)

1968年、東京生まれ、千葉育ち。映画ジャーナリスト。法政大学卒業後、報知新聞社に入社。映画記者として活躍、10年以上芸能デスクをつとめ、2015年に退社。以降はフリーで活動。趣味はサッカー観戦と自転車。

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