Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

続きを読む

【おとな向け映画ガイド】

香港の巨匠アン・ホイに注目! ドキュメンタリー『我が心の香港』、プロデュース作品『花椒の味 』が同時期公開

ぴあ編集部 坂口英明
21/10/31(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(11/3~6)に公開される映画は17本。全国100館以上で拡大公開される作品が『エターナルズ』『劇場版 きのう何食べた?』『リスペクト』『アンテベラム』『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』の5本。中規模公開、ミニシアター系の作品が12本です。今回はそのなかから、香港の映画監督アン・ホイ関連の2本をご紹介します。

現代のアジアを代表する巨匠
『我が心の香港〜映画監督アン・ホイ』

中国による統制が厳しくなった香港。自由を奪われることに必死に抵抗する人々の姿が日本でも報じられて、息苦しい時代の到来を危惧するとともに、あらためて香港のパワーを感じた方も多いのでは。

この作品は2020年に作られた、香港を代表する映画監督アン・ホイの半生を追うドキュメンタリーです。彼女はことし74歳、中国人の父、日本人の母から生まれました。ロンドンで映画を学び、帰国後は武侠映画の巨匠キン・フーの助監督をへて、33歳に監督デビュー。社会派タッチの作風で“香港ニュー・ウェーブの旗手”と注目されました。その後、武侠映画も手がけますが、庶民目線の作品を作り続け、香港のアカデミー賞にあたる香港電影金像奨で最優秀監督賞を過去6度も受賞、2020年ヴェネチア映画祭では生涯功労賞の金獅子賞も受けています。

映画はホイ監督に密着し、その撮影風景や映画公開時の舞台挨拶、取材の様子や、自宅での生活ぶりをとらえ、長期間撮り続けられたインタビューでは映画観とライフスタイルが語られています。急展開する香港で、アン・ホイ監督がいま、どんなことを考えているのかー。

監督の作品には『客途秋恨』という日本人の母と彼女自身をモデルにした映画があります。今はそのお母さんとのふたり暮らし。ふだんは好奇心にあふれた、街歩きが好きな、超ヘビースモーカーのきさくな人柄です。言ってしまえば、香港の気のいいおばさん。硬派な映画監督の顔との、このギャップが何とも人間味あふれています。

デビューからの芯が通った作風と製作スタイルは、中国三地域の映画人からも敬愛されています。台湾のホウ・シャオシェン、大陸の大御所ディエン・チュアンチュアンやジャジャン・クー、香港の仲間ツイ・ハークやアンディ・ラウ、インタビューには中国映画のレジェンドが顔を並べます。

中国政府からの具体的な圧力はないものの、映画のなかには、多少そんな空気を感じられるシーンもあります。香港をこよなく愛し、香港を見続けたい、という強い意思もひしひしと伝わってきます。今、観るべき映画、と思います。

【ぴあ水先案内から】

植草信和さん(編集者、元キネマ旬報編集長)
「……香港・台湾・中国映画界の重鎮たちが、彼女の人柄と作風を語るインタビュー・シーンが圧巻。一篇のアジア映画史になっている……」

植草信和さんの水先案内をもっと見る

紀平重成さん(コラムニスト)
「……「私にできるのは映画を撮ること。香港人についての映画を撮りたい。香港の変化をたくさん撮ることで前向きの効果を生み社会に貢献したいのです」……」

紀平重成さんの水先案内をもっと見る

首都圏は、11/6(土) からK’s cinemaで公開。中部は、11/27(土) からシネマスコーレで公開。関西は、11/13(土) から第七​​藝術劇場で公開。

2020(C)A.M. Associates Limited

香港で人気の火鍋店の父が亡くなり……
『花椒(ホアジャオ)の味』

アン・ホイが製作を担当した『花椒の味』は『我が心の香港』の1日前に日本公開されます。彼女がその才能にほれこんだ新鋭ヘイワード・マックを監督に起用。香港では昨年公開され、香港金像奨に11部門ノミネートされました。受賞は最優秀美術指導のみでしたが、高評価であることはまちがいありません。

香港の繁華街にある人気の火鍋店、主人が突然亡くなり、閉店の危機を迎えます。残された娘は旅行関連の仕事をしていて家業とは無縁です。その娘が火鍋店をどう立てなおすか、という人情ドラマです。実はこのお父さん、若かりし頃は恋多き男性で、台湾、重慶にもそれぞれ娘がいて、三人は父の葬儀で初めてお互いの存在を知ることになります。……さてどうなるか。

娘たちは樹木になぞられて名前がつけられています。長女は如樹(ユーシュー)、香港のトップスター、サミー・チェンが演じています。プロのビリヤード選手になっている次女・如枝(ルージー)は台湾の女優メーガン・ライが扮しています。三女・如果(ルーグオ)は中国の人気女優リー・シャオフォンを起用、ネット通販の店を経営しているという設定です。長女ユーシューの元婚約者で香港のアンディ・ラウ、想いを寄せる男性役で台湾のリッチー・レンも出演。ラブコメの要素も加えた、まさに中国オールスターによるエンタテインメント作品になっています。

「花椒(ホアジャオ)」は山椒の一種で、さわやかな香りと舌がしびれるような辛みが特徴です。この花椒を中心にさまざまなスパイスを組み合わせ、父が作った火鍋のレシピをどう再現するか。グルメものとしても楽しめます。なんか懐かしい感じもするオーソドックスな作り。いい味です。

【ぴあ水先案内から】

佐々木俊尚さん(フリージャーナリスト)
「……是枝裕和監督の作品のファンなら、この香港映画を間違いなく気に入るだろう……」

佐々木俊尚さんの水先案内をもっと見る

首都圏は、11/5(金) から新宿武蔵野館で公開。中部は、11/20(土) からシネマスコーレで公開。関西は、11/5(金) からシネマート心斎橋他で公開。

(C)2019 Dadi Century (Tianjin) Co., Ltd. Beijing Lajin Film Co., Ltd. Emperor Film Production Company Limited Shanghai Yeah! Media Co., Ltd. All Rights Reserved.

アプリで読む