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いま、最高の一本に出会える

『トイ・ストーリー4』『トイ・ストーリー4』 (c)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

「ピクサーは変化の時期に来ている」 プロデューサーが語る『トイ・ストーリー4』

ぴあ

19/7/10(水) 12:30

ディズニー/ピクサーの新作映画『トイ・ストーリー4』が今週末から公開になる。本シリーズはピクサーが最初に手がけた長編アニメーションからはじまっており、シリーズの歴史はピクサーの歴史そのものと言っていい。では、待望の4作目は一体、どうなるのか? プロデューサーを務めたマーク・ニールセンは「ピクサーは変化の時期に来ている」という。

ピクサー最初の、いや世界で最初の長編フルCGアニメーション映画『トイ・ストーリー』は、スティーヴ・ジョブズが資金を投じていた小さなスタジオ、ピクサーが長い時間をかけて試行錯誤の末に完成させ、1995年に公開された。結果的に映画は驚異的なヒットを記録するも、その続編は紆余曲折があり、制作時間がない中でスタジオが一丸となって完成させ、前作を上回るヒットを飛ばした。そして3作目は“トリロジー”を締めくくる内容で、多くの観客が最高の結末を迎えたと感じたはずだ。

だからこそ、4作目制作のニュースは世界中を驚かせた。ニールセンも「1~3作目は“3冊でワンセット”のようにして映画がつくられていたと思います」と語る。「ですから、4は単なる続編というよりも、その3冊セットに別の本を加えることで、みなさんに驚いてもらうイメージです。3作目で話が終わったとみなさんは思っているかもしれませんが、実はまだ1冊分、ウッディには“学ばなければならない”ことがあるという位置づけです」

そもそも、本作はシリーズの脚本を手がけてきたアンドリュー・スタントンが新しいアイデアを思いついたことから企画がスタートしたが、結果的に「ストーリーをつくるのに5年ほどかかってしまいました」とニールセンは笑う。「とは言え、ピクサーではどの映画もそれぐらいの時間がかかっています。とは言え、この企画はチャレンジがたくさんありました。最終的には10~12バージョンの『トイ・ストーリー4』が作られたと思います。最初はウッディとボー・ピープを主人公にしたロマンティック・コメディをつくろうと企画がスタートしたんです。でも、アイデアを重ねて脚本を書いていけばいくほどに、『トイ・ストーリー』ではなくて、単にサイズの小さい男女のラブストーリーになっていきました(笑)。そこで私たちは、改めてこの映画の根底にあるのはキャラクター=オモチャたちなんだと考え直して制作を仕切りなおしました。そこでフォーキーというアイデアが生まれたのです」

大好きなアンディの家を離れ、新しい持ち主ボニーの家にやってきたウッディ、バズらオモチャたちは彼女の部屋で新しい生活をおくっていたが、ウッディはボニーに遊んでもらえる時間がなく悲しさを感じている。ボニーは幼稚園に通うことになり、そこで手作りオモチャ“フォーキー”を作り出す。プラスティックの先割れスプーンにモールを巻きつけたフォーキーはボニーのお気に入りになるが、フォーキー自身は自分はオモチャではなく“ゴミ”だと思っている。そんなある日、ボニーの一家はキャンピングカーで旅行に出かけるが、その道中でフォーキーが脱走。彼を奪還するべく捜索に出たウッディはそこで数年前にはなればなれになったボー・ピープと再会する。

かつてはアンディのお気に入りのオモチャだったウッディは、子供に遊ばれなくなってしまった新しい環境でどう生きるのか? オモチャたちを率いて、仲間を第一に行動するウッディの姿勢に間違いはないのか? シリーズ最新作はニールセンが語る通り、単なる続編ではなく、シリーズに客観的な視点を盛り込み、ときにこれまでのシリーズの定石をくつがえす展開を盛り込んだ作品になった。「このシリーズには長年に渡って観客と共に歩んできたキャラクターがいますから、フォーキーやダッキーなどの新キャラクターは、これまでに登場したキャラクターに“揺さぶり”をかけるようなユーモアや不気味さを備えるようにしました。彼らが登場することで、ウッディは考えるようになり、目が覚めるような状況に置かれるわけです」

数年ぶりの再会によって、新しいオモチャとの出会いによってウッディは考える。そして、自分の置かれている状況や、これからについて想いをはせるようになる。ニールセンは「この映画は物事がある状態から次の状態へ移ろうとする“過渡期”を描いた映画」だという。「ウッディの環境はかつてとは違います。だからこそ、彼は人生の新しい章へと歩みだそうとするわけです」

それはウッディだけでなく、ピクサーも同じだ。彼らはいつも自分たちの置かれた境遇や感情を、その時々の作品に盛り込んできた。小さな子供たちを喜ばせる映画をつくろうと奮闘している姿が『トイ・ストーリー』になり、赤ん坊をどう扱っていいのか分からずに右往左往した経験が『モンスターズ・インク』になり、自分よりも若い世代が成長することに誇りを感じた記憶が『カーズ/クロスロード』を生み出した。

「ピクサーの監督たちはいつも“個人的な想い”が込められたストーリーを語ろうとしてきました。ウッディと同じく、ピクサーは変化の時期に来ていると思います。ピート・ドクターがCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)に就任して新しいスタジオ体制になりました。それが意図的なことなのか、無意識的なことなのかは分かりませんが、私たちの歩みや関係の変化が映画に反映されているのだと思います」

どんなことも変化し続ける。子どもは成長し、フィルムメイカーも経験を重ね、スタジオもオモチャたちも新しい環境に置かれる。しかし、ニールセンはウッディもピクサーも変化することは良いことだと考えているようだ。「スタジオ内は将来について楽観的に考えています。新しくCCOになったピートはみんなから尊敬されていますし、彼は新しい才能を起用したり、ただ登用するだけではなくてスタッフを成長させることに長けていますから。みんなスタジオの未来に期待を寄せていますね。ちなみにピクサー内にはオリジナル作品を作り出す開発の部門があるのですが、現在はそこが活発に活動していますよ」

『トイ・ストーリー4』はこれまでシリーズを愛してきた観客に懐かしさと楽しさと、予想もしなかった驚きをもたらすだろう。ウッディたちも、ピクサーも新しいフェーズに入ろうとしている。最新作は“続き”ではなく“新たなはじまり”を宣言する作品になりそうだ。

『トイ・ストーリー4』
7月12日(金) 全国ロードショー

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