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ジョイス・ライス、チャーリー・ウィルソン、ジャズミン・サリヴァン……年越し前に聴いておきたい、今冬注目のR&Bシングル5選

リアルサウンド

20/12/27(日) 10:00

 コロナ禍にロックダウン、Black Lives Matter運動の再加熱……身動きが取れずも騒々しかった2020年。良いニュースが少ない中でも救いだったのは、ステージを奪われたアーティストたちが創作意欲を爆発させてくれたことかもしれない。

 R&B界隈では新人からベテランまで充実の作品が多く(今までも不毛な年など無かったのだが)、シングル単位でも追いきれないほどに良作がリリースされている。そんな流れを受けて、今回は年越し前に聴いておきたい注目の楽曲を紹介。来年のR&Bシーンを賑わしそうなアーティストたちによる、聴き逃し厳禁の5作品だ。

日本とアメリカにルーツを持つ新世代のR&Bシンガーがキャッチーな新曲を発表!
Joyce Wrice「So So Sick」

 アフリカンアメリカンの父と日本人の母をルーツに持ち、ロサンゼルスを拠点に活動するジョイス・ライス。過去作でMndsgnやジャマディーらLAの気鋭ビートメイカーと抜群の相性をみせてきた可憐な歌声を武器に、新世代のムーディーR&Bを引っ張る存在として日本でも人気を博す彼女が、新曲「So So Sick」をリリースした。

 ジョン・B.による1997年のヒット曲「They Don’t Know」をサンプリングしたトラックと甘酸っぱさたっぷりのメロディは、彼女が最も影響を受けてきた1990年代〜2000年代初期のR&Bを匂わせ、クラブDJにも愛聴されること間違いなしのキャッチーな出来栄え。プロデュースを担当したのは、ヴィクトリア・モネイの新譜でも手腕を光らせたD・マイル。近年のR&Bを語る上では確実に外せないシーンの立役者だ。

 前作のシングル「That’s On You」では、同じくLA在住でアメリカと日本にルーツを持つシンガーUMIを招いたジャパニーズリミックスが話題となったが、本作のMVも日本語のセリフでボーイフレンドへと別れを告げるところから楽曲がスタートする。リリックの内容とは裏腹に、可愛らしいコレオグラフィで軽快に踊るジョイスの姿は実に痛快だ。本国での知名度も徐々に高まりつつあり、きたるデビューアルバムではさらなる躍進をみせてくれるだろう。

Joyce Wrice- “So So Sick” (Official Music Video)

圧倒的なボーカルで恋愛の痛みを歌い上げる、ジャズミン・サリヴァンの真骨頂!
Jazmine Sullivan「Pick Up Your Feelings」

 10代半ばにしてフィラデルフィアのオープンマイク「Black Lily」(ジル・スコットやフロエトリーらも、ここで腕を磨いたことで知られる)を賑わせた生粋の実力派シンガー。2008年のソロデビュー以降、存在感あふれるハスキーなボーカルは作品ごとに貫禄を増しており、ブラックコミュニティが彼女に寄せる信頼は相当に手厚い。

 最近では、ブライソン・ティラーとのデュエット曲「Insecure」で聴かせた彼女のボーカルランを再現する「#InsecureChallenge」企画がInstagramで話題に。各地の歌自慢シンガーがこぞって挑戦し、ついにはブランディも参加するなど、そのテクニックへの再評価が高まった。しかし彼女の真骨頂は、そういった技巧以上に豊かな感情表現力。とりわけ恋愛の痛みを歌った時の彼女は最強で、今回の新曲「Pick Up Your Feelings」はまさにそのど真ん中な仕上がり。「In Love With Another Man」「Forever Don’t Last」に続き、別れ際ソングクラシックとして彼女の代表曲となりそうだ。

 アルバムのリリースは前作からはすでに5年経っているが、年明け1月8日にニュープロジェクト『Heaux Tales』を発表予定。現代に生きる女性としての立場と意見を反映させた作品らしく、2021年のR&Bシーンで最初の重要作になること必至だ。

Jazmine Sullivan – Pick Up Your Feelings (Official Acoustic Live Video)

名曲を大胆にサンプリング! 姉妹デュオ、ヴァンジェス流の麗しいスロウジャム
VanJess「Slow Down」

 2018年のデビュー作『Silk Canvas』でマセーゴやケイトラナダらと組み、ダンスフロア直結の洗練されたサウンドを打ち出したVanJess。今年大躍進したChloe x Halleと並び、長らく不在だった女性R&Bデュオとしてシーンに台頭中だ。

 先月には同じく女性デュオとして90年代に活躍したジャネイの「Groove Thang」をカバーするなど(こちらも最高!)下半期に入りリリースラッシュが続いている彼女たちの新曲は、ジェイ・Z「Show Me What You Got」、レックスン・エフェクト「Rump Shaker」などでお馴染みの大ネタ、ラファイエット・アフロ・ロック・バンド「Darkest Light」を大胆に用いたスロウジャム。スネイクヒップスとジョナー・クリスチャンが共同でプロデュースを手掛け、原曲の印象的なホーンのフレーズを現行のビートに絶妙な塩梅で落とし込んでいる。

 アップでもスロウでも一貫した上品さとセクシーさを兼ね備えているのがVanJess流儀で、その円熟したスタイルは前述のジャネイの現代版とも言えるだろう。彼女たちを含め、ノーマニやラッキー・デイも所属する<Keep Cool>勢の作品にはハズレがなく、レーベルと合わせて来年の動きに目が離せない。

VanJess – Slow Down (Live Performance

英国からポジティブバイブスを届けるソウルマン! サム・ヘンショウ期待の新曲
Samm Henshaw「All Good」

 アースギャングを迎えた「Church」がトヨタ自動車のテレビCMに起用されたことで、その声を耳にした人も多いだろうサム・ヘンショウは、ナイジェリア人の両親のもと、ロンドンで育ったソウルシンガー/マルチミュージシャン。枯れた歌声の資質はアンダーソン・パークを思わせ、ゴスペル〜R&B〜ヒップホップを融合した音楽スタイルは、サムが前座を務めたこともあるチャンス・ザ・ラッパーに通じる多幸感にあふれている。

 数年前からネクストブレイクの才能として各メディアにも取り上げられていたが、アルバムまで漕ぎ着かないことにしびれを切らしたのか、新曲「All Good」は自身で立ち上げたレーベル<Dorm Seven>からリリース。タイトル通りのポジティブな開放感に満ちた本曲は、サムスン社が企画した「Inspired by a true photo」キャンペーンとのコラボレーションで、ジャケットに採用された微笑ましい犬の写真をもとに楽曲を制作。自然と笑顔になってしまうMVも最高だ。

 本来であれば今年5月に予定されていたサムの初来日公演はコロナ禍の影響で延期になってしまったが、実現するころにはもっとビッグな存在になっているであろう彼のステージングに、今から期待して待ち望もう。

Samm Henshaw – All Good (Official Video)

レジェンド2人による夢の共演! 世代を超え色めくロマンティックデュエット
Charlie Wilson feat. Smokey Robinson「All Of My Love」

 The Gap Band時代から約50年にわたってR&Bファンの心を射抜いてきたアンクル・チャーリー(チャーリー・ウィルソンの愛称)。今年に入ってから発表したシングル2作品もBillboard Adult R&B Songs Chartで1位を獲得し、名曲「Outstanding」をサンプリングしたO.T.ジェナシスとクリス・ブラウンの「Back To You」では自らゲスト参加して原曲の一節を歌ってみせるなど、その現役っぷりには目を見張るばかりだ。

 そんなチャーリーが次に用意したギフトは、なんと御大スモーキー・ロビンソンとのデュエット。2020年にこのビッグネームが揃うとは予想していなかったが、R&B/ソウルの真髄を知り尽くした者同士のラブソングは悪く仕上がる術がない。力強く突き抜けるように歌うチャーリーに、どこまでもスウィートに優しく響かせるスモーキー。楽曲の随所には各々の代名詞とも言えるフレーズが散りばめられ、バックトラックではMr. Talkboxことバイロン・チェンバースが華を添える。67歳と80歳のデュエットがこんなにも瑞々しいことがあるだろうか……! ベテランの在り方を背中で見せ続ける2人にただただ感服。先日の『Soul Train Awards 2020』でのライブパフォーマンスも必見だ。

Charlie Wilson & Smokey Robinson Perform ‘All My Love,’ & More! | Soul Train Awards 20
RealSound_ReleaseCuration@Yacheemi20201227

■Yacheemi
ダンサー / DJ / ライター / タコ神様。
国内~ジャマイカでダンスバトルでの入賞を経験後、 ヒップホップ・グループ「餓鬼レンジャー」 にマスコットとして加入。3密のナイトクラブを中心に年間100本近くのステージに立つ傍らで、地上波TVにも幾度か出演。またR&B音楽にまつわる座学や執筆活動も行うなど、独自のフリースタイル・グルーヴ道を歩む七変化系男子。

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