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【re:START】キーパーソンInterview

松尾健司(J-WAVEエグゼクティヴプロデューサー)【中編】

特別連載

4-2

20/6/6(土)

コロナウイルス感染拡大の対策として外出自粛の日々が続いた4月から5月にかけて、ラジオ局はどんな現実に直面していたのか。株式会社J-WAVEエグゼクティヴプロデューサーの松尾健司さんへのインタビュー中編では、制作状況の変化、5月6日に行った『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL #音楽を止めるな ~STAY HOME FESTIVAL〜』という15時間の特別番組の反響、そして「#音楽を止めるな」プロジェクトの先行きについて語ってもらった。

── 4月7日の緊急事態宣言発令以降は、ラジオの制作状況も大きく変わったのではないかと思います。そのあたりはどうでしょうか。

松尾 大きく変わりました。まずスタジオでコロナ感染が発生してしまうと、もう僕らは何の商品も作れなくなってしまう。とにかくスタジオに関わる人数を最小限にしようということで、ゲストもリモート、プロデューサーを含めたスタッフもできる限りリモートになった。場合によってはナビゲーターもリモートで、特に都府県をまたいだ移動をしなきゃいけない出演者はリモートによる出演がごく普通になりました。

── そういった状況の中で5月6日に『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL #音楽を止めるな ~STAY HOME FESTIVAL〜』というラジオ上のフェスを準備していったわけですが、状況の変化はどう捉えていましたか?

松尾 J-WAVEだけでなく全国的に「ステイホーム」、家にいようというメッセージが広まっていったわけですよね。そんな中で、ステイホームでも音楽は楽しめるし、音楽の演奏はできるし、ライブを体験できるということを形にしたいという思いがあった。そういうフェスをなんとか具現化できないかと、みんなで知恵を出し合って作っていった感じですね。

── 複数ステージのフェスという形による15時間の特番で、いろんなミュージシャンが関わって、それぞれの状況や立場や考えはバラバラかもしれないけれど、一つの共通した思いが具現化できたという手応えはあったんじゃないかと思います。実際、やってみてどうでしたか?

松尾 めちゃくちゃ手応えがありました。J-WAVEの特番史上、一番聴かれたと思います。それはやっぱり、70組以上の参加アーティストの皆さんが自ら「この後、このフェスに出るよ」と発信してくれたということも大きかったと思います。あと印象的だったのは、ステイホームのライブって、基本、弾き語りになるんですね。でもそこには音楽が生まれた瞬間に立ち会っているような、生の新鮮さと無骨さがある。そういう音の響きにすごく心が動いたんです。音楽が生まれる原初的なポイントにリスナーも一緒に立ち会えたんじゃないかという手応えもありました。

SKY-HIは自宅からライブを行った

── もともとラジオは1対1のメディアでもありますし、弾き語りのようなパーソナルな表現は親和性がありますよね。

松尾 ありがとうございます。ただ、横のつながりもあるんですよね。リスナーのメールを紹介して「今こんなふうに楽しんでます」と言うと、同じように聴いている人が安心するようなところもある。1対1のメディアではあるんだけれども、それと同時に1対nというか、他の人たちも同じようにつながってると感じる連帯感みたいなものが醸成されていた感じもしました。

── 「STAY HOME FESTIVAL」に向けて投げ銭のシステムを準備していたということでしたが、それはどんな形になったんでしょうか。

松尾 「nugget」という投げ銭の仕組みを使った支援プログラムを作りまして、何組かのアーティストにそれを活用していただきました。代表的なものを2つ挙げさせていただくと、ひとつは冨田ラボ、音楽プロデューサーの冨田恵一さんのソロユニットです。実はGWに六本木ヒルズで「TOKYO M.A.P.S」という都心で楽しめる無料の音楽フェスを毎年J-WAVEと森ビルで開催してきたんですが、これも中止になってしまって。冨田さんからできなかった「TOKYO M.A.P.S」のイベントを曲の形にしたいという提案をいただいて、出演予定だったペトロールズの長岡さんとか藤原さくらさんとかbirdさんとか坂本真綾さんとか、いろんなシンガーが参加してくれて「MAP for LOVE」という曲が出来上がりました。これをチャリティソングにして、日本赤十字社を通じて医療従事者の支援ということで寄付させていただくという形が一つできた。もうひとつは、SKY-HIの自宅からのワンマンライブを生中継させてもらいました。これも投げ銭システムを使って、賛同した人に投げ銭してもらって、これは「SaveOurSpace」というライブハウス支援のプロジェクトに寄付させてもらいました。どちらもみんなの「何かしたい」という思いが支援の形になって届いたという、すごく大きな手応えがありました。

── 「nugget」というのはどのようにして始まった仕組みなんでしょうか?

松尾 仕組みを作ったのはFintertech株式会社という、大和証券グループとクレディセゾンの合弁会社です。彼らがフィンテックの分野に進出するために新しい金融サービスを考えているなかで、たまたま僕のところに相談が来た。だったら「#音楽を止めるな」で活用させてくださいと言って始まったという流れです。

── こういう投げ銭による支援のシステムを運用していくことでの手応えもありましたか。

松尾 ありました。医療従事者への支援、ライブハウスに対しての支援と言っても、メディアができることは基本的には話題を紹介していくことなんですよね。でも、具体的に経済的な支援ができるツールを得たというのが非常に大きい。ただ、これを次のステップにつなげていかないといけないので、今後もこの投げ銭システムを使ったイベントやオンラインイベントを計画しています。今回の「音楽を止めるなプロジェクト × nugget」の仕組みに関しては、集まったお金の95%を還元できるようにご配慮頂けたのが大きなポイントなんですね。

── 手数料が5%ということですね。

松尾 通常のクラウドファンディングはもう少し手数料が高いです。サービスによっても異なりますが、10%から20%の手数料がかかる。YouTubeにも「スーパーチャット」という投げ銭の仕組みがあるんですが、これも30%の手数料がかかる。こういう状況下かつ出来たばかりのシステムということで、手数料を最大限おさえて協業できたというところに手応えを感じてますね。なので、他のアーティストにも活用していただきたいし、ライブハウスの方にも活用してもらいたいと思っています。そういうオープンソース型のプラットフォームにできないかなと思っています。

── 他にも「#音楽を止めるな」プロジェクトで行っていることはありますか。

松尾 BEAMS RECORDSさんと組んで、ライブハウス支援を目的にした「#音楽を止めるな」Tシャツを販売しました。いろんなクリエイターの方にイラストやデザインをしていただいて、そのTシャツをBEAMS RECORDSさんに作っていただいて、売上から制作、販売にかかる経費を差し引いた金額を都内のライヴハウスの支援に活用するというプロジェクトです。他にも計画していることがたくさんあるので、続々と「#音楽を止めるな」プロジェクトを発表していこうと思っています。

関連情報

「#音楽を止めるな」
https://www.j-wave.co.jp/topics/2004_ongaku.htm
「ACTION FOR TOMORROW」
https://www.j-wave.co.jp/topics/2004_actiontomorrow.htm
J-WAVE
https://www.j-wave.co.jp/



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