Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

“本気で何かを変えるために本気で動くこととは何か”を実感した『グレタ ひとりぼっちの挑戦』

月2回連載

第77回

子供の可能性を尊重するスウェーデンの子育てにも注目です

今回は現在公開中で、私が個人的に思い入れのある2作品を紹介します。まずは『グレタ ひとりぼっちの挑戦』。スウェーデンのドキュメンタリー映画です。

2018年の国連気候変動会議で、世界のリーダーたちを前に「How dare you!(なんてことしてくれたんだ!)」と檄を飛ばしたことで知られる、ティーンエイジャーの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん。この作品では、彼女があの一件で一躍注目を浴びる前からカメラで追い続け、彼女の人となりや世界中から称賛と批判を浴びた後の生活までを映し出します。

『グレタ ひとりぼっちの挑戦』

映画はあのスピーチの1年前から始まります。2018年8月、当時15歳だった彼女は、気候変動に対して何も動こうとしない政府への抗議のため、たったひとりで国会議事堂前での座り込みストライキを始めます。毎週金曜に行っていたこの行動は、SNSで拡散されて、一気に世界中の若い人の心を動かし、環境や気候の変動に対する意識を変えていきます。

『グレタ ひとりぼっちの挑戦』

そして2019年の国連を経て、世界のリーダーたちと議論を重ねていくまでになっていくんです。自身が抱えるアスペルガー症候群の症状と向き合いながらも、自分が声をあげることの意味を問い続けるグレタさん。そんな彼女をそっと支える家族の姿をとらえたドキュメンタリーです。

グレタさんのことを知って賛同する人、それと批判してイライラしている人、真っぷたつですよね。でも、考えてもみてください。あんな小さい子が世界の問題点を的確に言い当てて、ティーンのみならず大人たちを動かすきっかけを作ったんですから、それだけでも十分素晴らしいこと。

『グレタ ひとりぼっちの挑戦』

国会議事堂前でストライキしているときから、世界中からのフォロワーが増えたのも、彼女が指摘していることが正しいことだからでしょう。本気で何かを変えるために本気で動く、ということが何かということを、このドキュメンタリーを観ているとあらためて実感します。

なにせグレタさん、「検討します」という言葉が大嫌い(笑)。そうなんですよ、問題点が明らかなことに対して「検討します」というのは逃げでしかないわけですから。

『グレタ ひとりぼっちの挑戦』

そして、このように育ったグレタさんの生い立ちも興味深いんです。グレタさんが大人びているから、大人に操られているのでは? というデマが流れたこともありますが、本作を観たらそうではないことが分かってもらえるはず。

スウェーデンの子育てって、家族が子供をすごく尊重して、信用することから始まるんですね。たとえば、私も9歳のときから弟の世話をしていましたし、それに対して親はサポートをちゃんとする、というのが当たり前だったんです。

『グレタ ひとりぼっちの挑戦』

グレタさんと彼女の家族もそう。彼女がやろうとしていることを、家族は準備まで見守って、実行するときに全力でサポートしてる。子供の可能性を尊重する社会から出てきた注目の活動家がどういう生い立ちか、この作品で学んでみてはいかがですか?

超個人的にプッシュしている本当に埋もれてほしくない作品!

さて、もう1作品は超個人的にプッシュしている『WHOLE/ホール』です。なんと44分の中編、公開規模もものすごく小さい作品ですが、これは一見の価値ありです。

海外の大学を辞めて日本に帰国した春樹は、親からも周囲からも理解を得られず疎外感を感じています。そんなある日、彼は誠に出会い、友情を深めていきます。

『WHOLE/ホール』

あらすじはシンプルですが、春樹も誠もハーフなのが非常にオリジナル。日本で暮らしている、もしくは日本で育った外国人やハーフの人たちが直面している問題を、当事者の目線で描いた作品です。これは本当に埋もれてほしくない!

私自身も日本とスウェーデンのハーフで18歳から日本で暮らしていますが、この作品で描かれる“傷つくアルアル”は何度も体験しています。他の国だったらありえないんですよね……この問題。

『WHOLE/ホール』

そもそもその国の人、という見た目はある程度あったとしても、ここまでハーフと呼ばれる人たちが外見で判断されるのは日本くらい。グッドルッキングや英語ペラペラだったら羨ましがられ、そうじゃなければいじめられる。差別ですよね、これ。

本作では、ハーフの人たちが見た目で判断されることに対してどう感じているのか、その上で、自分自身のアイデンティティについてどう悩んでいるか、ということが非常にうまく描かれているんです。

『WHOLE/ホール』

ちなみにこの作品は、監督の川添ビイラルさんから直接紹介されて拝見しました。主演の誠役は彼の弟のウスマンさん、春樹役は俳優のサンディー海さん、と彼ら自身が体験していることが反映されているとしか思えない芝居です。

『WHOLE/ホール』

オリンピックが終わった今こそ、この作品を観て日本で暮らす人が潜在的に抱えている問題について考え、視野を広げてもらいたいですね。

※次回は11月5日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

(C)2020 B-Reel Films AB, All rights reserved.
(C)078

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

アプリで読む