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緑黄色社会、『G線上のあなたと私』主題歌の衝撃 ドラマと結びつく「sabotage」を分析

リアルサウンド

19/10/22(火) 21:00

 10月15日からスタートしたドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)。恋愛マンガの名手として知られる漫画家・いくえみ綾(『潔く柔く』『あなたのことはそれほど』など)の原作を波瑠の主演でドラマ化したこの作品の主題歌「sabotage」を手がけているのが、緑黄色社会。優れたポップセンスに裏打ちされた音楽性、共感度の高い歌詞によってネクストブレイク候補の最右翼として注目を集める名古屋出身の4ピースバンドだ。

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 ドラマ『G線上のあなたと私』のストーリーは、大人のための音楽教室でバイオリンを習い始めた3人の男女を中心に展開される。結婚目前で婚約を破棄され、仕事と恋人を同時に失った27才の女性・小暮也映子(波瑠)、どこか暗い影を感じさせる大学生・加瀬理人(中川大志)、小学生の娘を持つ主婦・北河幸恵(松下由樹)がそれぞれに葛藤を抱えながら、幸せな人生を目指す姿を描いた恋愛ドラマだ。異なる世代の3人の交流と友情が反映されていることもこのドラマの特徴。幅広い層の視聴者に訴求できる作品と言えるだろう。

 このドラマの主題歌として書き下ろされた緑黄色社会の「sabotage」は、長屋晴子(Gt/Vo)の作詞・作曲によるアップチューン。楽曲の主人公はまわりの人たちと同じようにスタートしたはずなのに、いつの間にか自分だけ取り残されている(ような気がしている)“私”で、これはもちろん、波瑠が演じるドラマの主人公像と重なっている。はっきりしない将来のビジョン、自分が何を求めているかわからない状態から、〈ならばここからだって奮い立てよ〉と自らを鼓舞し、〈これが私だと 少しだけなら 今は胸を張って言えるの〉という思いに至るまで描いた歌詞は、ドラマの物語と強く結びついていると同時に、年齢、性別を超え、多くのリスナーの共感を呼び集める普遍性を備えていると思う。

 ギターロック系のバンドサウンドと華やかなストリングスを軸にしたアレンジ、ドラマティックに展開するメロディラインも、この楽曲に内包されているポジティブな意志をさらに増幅させている。J-POPをルーツに持ち、幅広いリスナーに開かれた楽曲を志向してきた緑黄色社会だが、「sabotage」の爆発的なポップネスは明らかに新機軸。ここまでポップに振り切り、カラフルな感情を放ちまくる楽曲は初めてではないだろうか。

 カラフルに飛び跳ねるポップサウンド、そして、“自分らしく生きたい”という思いを色濃く反映させた歌詞をストレートに伝える長屋の歌も素晴らしい。思い切りよく感情を解放し、圧倒的なカタルシスへと結びつける「sabotage」のボーカリゼーションによって彼女は、シンガーとして完全に覚醒したと言っていい。特に大サビにおけるソウルフルな歌いっぷりは絶品。最初に「sabotage」を聴いたとき、そのダイナミックな歌声に圧倒され、「え、別人みたいじゃない?」と思ってしまったこともここに記しておきたい。

 カップリングには、作詞を長屋と穴見真吾(Ba/Cho)、作曲をpeppe(Key/Cho)が担当した「Alright!!」を収録。エレクトロを取り入れた高揚感に溢れたトラック、ブライトな光と大らかに解放されるメロディ、“きっといいことがありそう”という予感に満ちた歌詞がひとつになったこの曲は、「sabotage」と同様、緑黄色社会の“ポジティブなポップ感”を端的に示すナンバーだと思う。シャープなギターカッティング、ファンクネスを含んだベースラインなど、メンバーのプレイヤビリティが活かさているのもこの曲の魅力だ。さらに初回生産限定盤には、今年6月14日に恵比寿LIQUIDROOMで開催された自主企画イベント『緑黄色夜祭 vol.9-東京編-』(マカロニえんぴつをゲストに迎え、チケットはソールドアウト)から「Alice」「またね」のライブ音源も。卓越した演奏能力、観客とのハッピーな一体感など、ライブバンドとしての魅力を感じ取ってもらえるはずだ。

 緑黄色社会は11月から12月にかけて、全国ツアー『リョクシャ化計画2019』を開催。ホール3公演(愛知・名古屋市公会堂、大阪・NHK大阪ホール、東京・昭和女子大学 人見記念講堂)を含む全9カ所の同ツアーは、キャリア史上最大規模となる。ギターロック、エレクトロ、ブラックミュージックなどの要素を組み合わせながら、質の高いJ-POPへと昇華させる音楽性、そして、ダイナミズムとポップネスを兼ね備えたサウンド、エモーショナルの度合いを高め続ける長屋のボーカルがひとつになった緑黄色社会の音楽は2020年以降、さらに大きなリアクションを引き起こすはず。シングル『sabotage』は、その大きなきっかけになるだろう。(森朋之)

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