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SAVE the CINEMAが国へ要望書を提出、会見に諏訪敦彦や深田晃司が出席

ナタリー

20/4/15(水) 20:30

「SAVE the CINEMA」ロゴ(デザイン:COMPOUND inc.代表 小田雄太)

「ミニシアターを救え!」プロジェクトの記者会見が本日4月15日にオンラインミーティングツールZoomを使用して行われ、映画監督の諏訪敦彦、白石和彌、深田晃司、西原孝至、上村奈帆が出席した。

新型コロナウイルスの影響で経営的に大きな打撃を受けている小規模映画館のために、有志の呼びかけ人と賛同者によって立ち上がったSAVE the CINEMA。4月14日までに集まった署名とともに内閣府、経済産業省、厚生労働省、文化庁に緊急支援を求める要望書を本日提出し、その後会見を行った。

諏訪は「ミニシアターが日本の映画界に果たしてきた役割は大きい。スクリーン数は全国の劇場の12%程度ですが、映画文化の多様性がミニシアターの存在によって守られています。小さな劇場が、日本でいろいろな映画を観ることができる環境を支えているんです。その地域に1軒だけ存在している劇場が閉じてしまったらどうなるか? 損失は膨大なものだと思います。基本的なインフラがなくなってしまうことに等しいのではないでしょうか」と投げかける。そして「ミニシアターは経営が脆弱で、コロナウイルス感染拡大の前から問題はありました。そんな中、緊急事態宣言が出されて、映画館は休館に追い込まれています。劇場だけの問題ではなく、映画に関わるすべての人がダメージを受けている。この緊急事態に、映画館を救わなければならない、そしてミニシアターの芸術的、文化的な意義を国に訴えていきたいと思いました」と思いを語る。

東京・ユーロスペースの支配人である北條誠人は「感染拡大防止のために協力しなければならないけれど、収入がないという恐怖があります。賃金、家賃の支払いが絶望的な状況です。仲間の映画館は廃業を余儀なくされていますし、廃業を免れても元の状況に戻すのにたくさんの時間がかかる。多くの監督が育ち、世界に羽ばたいてきたミニシアター文化を、未来の日本の文化のために生かしたい。そのためには支援が必要だと考えています」と言及した。

5月10日に新作のクランクインを予定していたという白石。「長野県での撮影を予定していたんですが、緊急事態宣言が出されている東京から来るのは自粛してほしいというお話でした。僕の組もそうですが、周りは軒並み撮影中断で追い込まれている」と映画業界の現状を明かす。また白石は「映画制作は9割がフリーランスに支えられています。スタッフにヒアリングをしていますが働く場所がなく、それぞれ途方に暮れています。ミニシアターを救うことと、現場のスタッフをフォローすることは少し違いますが、小さい規模の映画がなくなってしまうとスタッフの働く場所を失うだけでなく、若い才能、俳優がキャリアを積んでいく土壌が奪われてしまう。人材を供給していく根源的なものがなくなってしまうことに日々危機感を強くしています。どんな形でもいいからお手伝いさせてほしいと思いました」と本プロジェクトに参加した理由を説明する。

深田は「平時の補償の少なさが有事に大きく現れてしまった」と分析。そして「外出自粛要請が出され、苦境に立たされている劇場関係者の思いがTwitterから伝わってきて、SAVE the CINEMA、ミニシアター・エイド基金が立ち上がりました。国の支援を待っていたら間に合わない。クラウドファンディングで一般の映画ファンから支援を募ったところ2日足らずで8000万円が集まりました。映画そのものが応援されているんだと、励まされている思いです」と感謝を伝える。しかし「あくまでも緊急処置だと思っています」と言い、「本来なら国が助成を出していれば1、2カ月で潰れてしまうかもしれないということにはなっていない。映画業界でも劇場を支援する仕組みが欠けていた。コロナウイルスの問題で顕在化したことですが、改善していかなければと思っています。ご支援のほどよろしくお願いします」と真摯に呼びかけた。

SAVE the CINEMAは日本政府にミニシアターへの緊急支援を求めるため、10万筆を目標とした署名活動をWebサイト「Change.org」で実施。西原は「6万6000筆もの署名が集まり感謝しています。国は行政権を持って、劇場に休館を促し、損害を負わせている。大きく声を上げていかなければならない」と話し、自身がドキュメンタリー映画を手がけていることに触れ「ドキュメンタリー映画の95%はミニシアターで上映されています。映画という文化がなくなってしまうという危機感を持って、厚労省、文化庁に行ってきました」と力強く口にした。

記者から各行政機関の反応はどのようなものだったか尋ねられた諏訪は「厚労省は生活衛生課が対応してくれました。要望に対する具体的なアイデアはいただけなかった。ただ、現場の雇用状況がどういったものなのか、リアルな実態を初めて耳にしたそうで『話を聞けたのはよかった』『具体的に速やかな方法を考える』と言ってくれました。映画館の文化的な価値を伝えたところ、担当者の方は受け止めてくれたようです」と報告する。また文化庁については「ミニシアターの文化的な価値を伝え、文化庁がリーダーシップを取って支援していく仕組みがなされるべきだろうと話しました。今日の段階で具体的なアイデアはなかったですが、話は継続することになっています」と述べた。

内閣府と経済産業省に要望書を提出した弁護士の馬奈木厳太郎は「内閣政府は現在行っている政策以上のものについて、先方からの回答はありませんでした。この困難な状況に縦割りではなく省庁を横断する形で取り組んでいってほしいと思っています」と述懐し、「経産省においては補償という話は出なかったです。私自身が原発事故で被害救済に関わっていることもあって、教訓にしてもらいたいと要望を申し上げました。ミニシアターが置かれている状況を聞くのは初めてだと。実態をご存じないなと感じました」と続けた。

配給の立場から実情を伝えるのは太秦の小林三四郎。「戦争犯罪や、差別、そういったものを描いた作品を引き受けてくれるのはミニシアターです。自国では公開できないアジア映画も日本のミニシアターでスクリーンにかかる。日本国内だけでなく、アジア映画の問題だと思っています」と声を上げた。

そして最後に上村が若手監督の熱い思いを伝える。「私の声を若手監督たちの声だと思って聞いていただければと思います。劇場の方に『私たちは作家を育てる場所なんだよ』と言っていただいたことが心に残っています。中学生の頃、学校に行くのがしんどいとき、いつか絶対に映画を撮るということが心の支えでした。ミニシアターは自分の居場所が見つけられるところだと思っています。監督と、心をさらけ出してくれるお客さんとの出会いがある場所なんです」と震える声で劇場への思いを口にした。

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