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大和田常務は敵か味方か? サラリーマン劇としての真価が問われる『半沢直樹』後半戦

リアルサウンド

20/8/18(火) 6:00

 7年前の第1作、「5億の融資」で大騒ぎしていた頃が懐かしい。その続編『半沢直樹』は、8月16日放送の第5話から原作小説第4作『銀翼のイカロス』に当たる「帝国航空編」に突入。証券会社への出向から東京中央銀行本社の営業第二部に次長として返り咲いた半沢(堺雅人)が、日本のフラッグシップである帝国航空の担当に。帝国航空は名門企業だが毎年、巨額の赤字を出し瀕死の状態に陥っていたところ、政府が介入し、融資元である銀行は7割の債権放棄を求められる。それを受け入れれば東京中央銀行の損失は なんと500億円にもなる。半沢は「政府の要請を回避しつつ、古い体質の帝国航空を組織改革した上で経営再建の道筋を立て融資した金額を回収できるか」という最高難度の“無理ゲー”をプレイさせられる。

 プレイヤーのレベルが上がれば上がるほど、対戦相手のレベルも上がる。ソシャゲでもあるあるの展開だが、結末に向けて、物語の大きな進化も見えてきた。2013年放送の第1作は、半沢がかつて父親を死に至らしめた宿敵である大和田常務(香川照之)の不正を暴き、頭取の前で土下座させるまでを描いた復讐劇であり、いわば私的怨恨による仇討ちの物語だった。今回の第2作でも前半は、証券会社に飛ばされた半沢が自分たちから大口案件を横取りした銀行の副頭取・三笠(古田新太)と伊佐山部長(市川猿之助)を成敗するという勧善懲悪の物語。その中で、半沢が部下の森山(賀来賢人)に語った言葉が印象的だった。サラリーマンには「組織や世の中はこういうものだという強い思い」が必要であり、半沢の場合、その信条は3つあると。「正しいことを正しいと言えること」「組織の常識と世間の常識が一致していること」「ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価されること」と半沢は述べ、「その当たり前が今の組織はできていない。だから、戦うんだ」と言った。

 ここからようやく、半沢は私怨や銀行内の派閥争いから解き放たれ、信念あるバンカーとしての闘いができるようだ。これまでは大和田ら重役たちのパワーゲームに巻き込まれ、そこに参戦するしかなかったが、そもそも仕事は「他人のため、世の中のためにするもの」であり、それを忘れたとき、自分のためだけに仕事をするようになって、サラリーマンは「内向きで卑屈で、醜くゆがんでいく、組織が腐っていく」とも語った半沢。その腐った人間のサンプルとして「三笠、伊佐山、大和田」の名を挙げた。第5話では帝国航空で再建プランを拒み情報をリークした永田役員(山西淳)を「あなたからは腐った肉の匂いがする」と糾弾。会社の中で保身に走り、自分の立場を利用して不正を働く者が半沢の敵なのだ。そんな敵に「近づくな!」と叫び、企業が「死に体」でないかを調査する半沢は、まるでホラー映画で腐ったゾンビと戦うゾンビハンターのようで面白い。

 このドラマは時代劇のようでもあり、歌舞伎役者が顔をそろえる荒事の演目のようでもあるが、仮にも日本を代表するメガバンクや航空会社が舞台である以上、半沢が「倍返しだ」と悪者を怒鳴りつけ退場させるだけでは、物足りない。今回は「恩返しだ」という新しいキーワードも出てきたが、どうしたら腐った組織を再生させられるのかということが、銀行の中でも外でも描かれていくことを期待したい。

 原作小説の読者には今後の展開がある程度、予想できる。第6話(8月23日放送)のあらすじ紹介にあるように「帝国航空をめぐる重大な過失が発見され」、東京中央銀行も無傷では済まないだろう。いかにも訳ありげな紀本常務(段田安則)の存在も気になる。それだけではなく、ドラマオリジナルの不確定要素も。それは他ならない、みんなが大好きなコミカルヒール、大和田常務の存在である。原作と違って、半沢が帝国航空を任され、もし失敗すればキャリアにとって大きなマイナスとなるように仕向けたのは大和田だった。もしかすると、大和田は「重大な過失」にも絡んでいるのかもしれない。さらに、半沢は「腐った人間」として大和田の名前も挙げており、一度はタッグを組んだものの大和田は最終的に排除すべき存在。それに「死んでも嫌だね!」と抵抗する大和田が再びラスボスに……という展開もありえそうだ。または、大和田が改心して、半沢と志を共にし組織改革をするのか。今後も香川照之が怪演する大和田の動きから目が離せない。

 半沢が挙げた組織の理想像の中では「組織の常識と世間の常識が一致していること」が最も達成困難なようだ。国土交通大臣の白井(江口のりこ)ら政府の面々も銀行の中枢も、とても一般庶民の感覚を分かっているようには見えない。この高視聴率ドラマが現実社会でも起こっている政治離れと格差の問題に何かしらのヒントを与えられたら、真の傑作となりえる。そんな予感がする。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS

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