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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

『博奕打ち 総長賭博』©東映

小西康陽 5243 シネノート

11月から12月

毎月連載

第6回

18/12/19(水)

 このひと月も、50本以上の映画を観ていたのだけれど、どうも印象は散漫で、この原稿も締め切りをかなり過ぎている。
 IMAX 品川で『ボヘミアン・ラプソディ』。世間の話題についていくことができるのは嬉しいけれども、映画としては特段の感動もなかった。というような感想を読みたい人などいるわけがないので、やめておく。
 シネマヴェーラ渋谷で、ニュープリントでの『花札渡世』を目玉にした特集【滅びの美学 任侠映画の世界】。この特集は『日本任侠道 激突篇』『人生劇場 新・飛車角』、以前に観た『博徒七人』それに試写で観せていただいた『花札渡世』以外の作品を観た。すべて東映の作品。小沢茂弘の監督作品が11本。山下耕作の監督作が7本。笠原和夫の脚本が11作品。高田宏治の脚本が5作。藤純子の出演作が8本。なによりも鶴田浩二の出演作が16本。もうそれぞれの作品がどんな話だったか、すっかりごっちゃになってしまっているのだけれど、大ハズレ、というのはなかったように思う。これはハズレだったかも、と思ったのは降旗康男監督の『日本暴力団 殺しの盃』だったが、これも坪内祐三さんは傑作、と言っていたし。映画の好みは人それぞれです。じぶんは鶴田浩二や藤純子の、あの歌うような台詞回しが大好きなので、すっかり堪能してしまった。いちばんよかったのは、やはり『博奕打ち 総長賭博』だろうか。シネマヴェーラのロビーで、「名画座かんぺ」を配布しにいらした、のむみちさんとお会いして、『博奕打ち 総長賭博』と『博奕打ち いのち札』、どっちが好きでした? と尋ねられて、やっぱり『総長賭博』ですかね、と答えたら、のむみちさんは『いのち札』がお好き、ということであった。いや、これはムズカシイ二択ですよね。『博奕打ち 総長賭博』に関して言えば、じぶんの中では同じ東映の『県警対組織暴力』という映画と並んでいるのだが、これは同意してくださる方もいる、と思うのだが。
 このシネマヴェーラ【滅びの美学 任侠映画の世界】という特集で異色のプログラムだったのが、近衛十四郎の主演した二本の白黒作品、大西秀明監督『悪坊主侠客伝』と内出好吉監督『祇園の暗殺者』だった。『悪坊主侠客伝』の方は盲目の破戒僧が主人公、という「座頭市」の二番煎じ的アイデアなのだが、近衛十四郎の破天荒なキャラと、実らぬ恋に人生を賭ける東千代之介の殺し屋「死神」という仇役の設定が素晴らしくて唸った。こんな映画があったとは。もう一本の『祇園の暗殺者』は、任侠映画というよりは、新撰組映画にして幕末時代劇なのだが、集団の中の理不尽に苦しむ主人公は、やくざ映画における鶴田浩二と変わらず、やはり笠原和夫ならではの造形。菅貫太郎も出ていた し、のちのチャンバラトリオ・南方英二の演じる人斬り以蔵、というのもよかった。

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