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anderlustが“スランプ”を乗り越えた先に見た景色 「これまでの中で一番自分自身を投影させた」

リアルサウンド

16/8/27(土) 18:00

 越野アンナ(Vo./Gt.)と西塚真吾(Ba.)によるユニット・anderlustが、8月24日に2ndシングル『いつかの自分』をリリースした。同作は、前作に引き続いて小林武史のプロデュースで制作され、表題曲は“ノイタミナ”アニメ『バッテリー』(フジテレビ系)のオープニング・テーマに、カップリングのカバー曲「明日、春が来たら」(松たか子)と「若者のすべて」(フジファブリック)はエンディング・テーマとして起用されるという、トリプル・タイアップシングルに仕上がっている。ほかにも、YEN TOWN BANDの名曲「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」をカバーするなど、幅広い楽曲に挑戦したことは、2人にとってもプラスの体験になったという。リアルサウンドでは今回、越野と西塚にインタビューを行ない、同作での経験がanderlustに何をもたらしたか、そして越野が制作期間中に陥ったというスランプなどについて、じっくりと話を訊いた。(編集部)

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「ついに私たちにもバトンが回ってきた!」

ーーメジャー1stシングル『帰り道』は、映画『あやしい彼女』の主題歌に起用され、越野さん自身も映画に出演するなど、話題の多い作品となりました。そこから今回の2ndシングルに至るまでの“メジャーデビュー以降の活動”で、印象的な出来事を教えてもらえますか。

越野アンナ(以下、越野):私は『帰り道』のリリースイベントですね。ショッピングモールでライブをするなんて初めてでしたし、あそこまで距離感の近いものだとは思っていませんでした。屋外ステージでライブをさせていただいたときは、外も結構寒かったのですが、それでも来てくれる方たちがたくさんいて。歌いながら泣きそうになりました。

ーーライブハウスとはまた違った形で「人の温かさ」を知る体験だったと。

越野:そうですね。デビュー後はほぼ毎週LINE LIVEでの生配信でコミュニケーションを図ったりもしていたんですけど、物理的に近いというのは、やはりインパクトが強いですね。

西塚真吾(以下、西塚):僕も一番印象に残ったのはリリースイベントかもしれません。CDを買ってくださる方のありがたみを知ったというのは、自分たちにとっても大きくて。

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ーー前回のインタビューでは、越野さんから「変化していく様子を面白がりながら見守ってほしい」という主旨の発言がありました。今作はどちらかというと、大きな変化はなく、前作からの地続きのように感じているのですが。

越野:小林武史さんと私が一緒に作曲や作詞をして、それを私と真吾さんで形にしていくという大枠の部分は変化していないですね。今作はアニメ『バッテリー』に溶け込ませようと夢中になって作ったもので、アニメの思いや世界観をどう表現するかという部分に比重を置いた作品なんです。

ーー表題曲はフジテレビ“ノイタミナ”アニメ『バッテリー』オープニング・テーマとして書き下ろし、エンディング・テーマの松たか子さん「明日、春が来たら」のカバーのほか、フジファブリック「若者のすべて」、YEN TOWN BAND「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」のカバーも収録されていますよね。カバー3曲については、どういった判断基準でセレクトしたのでしょうか。

越野:アニメ『バッテリー』の制作スタッフさんから「エンディングには四季を表現できる曲を」ということで、春の曲として「明日、春が来たら」を提案して頂き、「若者のすべて」はスタッフのみなさんと相談してご提案し、この2曲を仮歌で歌わせていただいたときに「すごく良かった」と言っていただけたので、今回作品にも収録することになりました。

ーー「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」についてはどうでしょうか。

越野:私は個人的にこの曲への思いが強くて。自分と同い年の曲ということもありますし、今までもいろんな偉大なるアーティストさんがカバーしてきたものなので、「ついに私たちにもバトンが回ってきた!」と感慨深い気持ちになりました。

西塚:僕もこの曲ですね。CHARAさんが好きでライブを見に行って、そこで歌っている現場を見たことがありますし、今回のカバーも作った張本人である小林武史さんがプロデュースしてくださったので光栄なことですし、現場はすごく緊張しました(笑)。

ーー「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」は、原曲とはかなり色を変えたアレンジが特徴的ですよね。テンポも性急なものに変わっていますし、印象的だったアナログシンセの音色もあえて取り払っているような印象を受けました。

越野:anderlustとして原曲とは異なる色を添えるうえで、“初々しさ”を重視して、テンポを倍にし、ハキハキした歌声を入れようと思いました。小林さんからは、特に歌い方に関するディレクションはなかったのですが、CHARAさんの特徴的な声は私にマネできるものではないので、自分らしい歌を乗せることができたと感じています。

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ーーベースはどうですか? 原曲に比べ、西塚さんは今回かなり攻めた演奏をしていますよね。メロディーに当たるように、しかもかなり動いているように聴こえます。

西塚:anderlustのベースとしては、バックに徹するものでなく、歌と対等になるような演奏を心がけているので、カバー曲の中で僕たちらしさを出すうえで必要だと考えました。あとは作品全体に言えることですが、『バッテリー』の世界観を表現するために、若さや青さを意識してプレイしているので、そのあたりも作品には反映されていると思います。

ーーこのままほかのカバー曲についても聞かせてください。「明日、春が来たら」では、anderlustらしさを出すために何を心がけたのでしょう。

越野:この曲はかなり歌詞を意識しながら歌っていました。松さんもまた、歌うたいとして誰にも真似できないものを持つ方なので、無理に近づけようとするよりもどこまで初々しさを出せるかという部分を心がけました。

西塚:原曲で松さんが歌っている声って、大和撫子というか、日本的な美しさがあるのですが、今回はちょっとアメリカンな子(越野は幼少期をアメリカで過ごした)が歌うので、どんな感じになるかなと思いつつ。

越野:根は日本人ですよ!(笑)

西塚:(笑)。演奏的には原曲の雰囲気を意識して、Fenderの74年モデルのジャズベースやチューブD.I.を使いました。今時のハイファイな音というよりも、ヴィンテージ感を出したかったんです。

――確かに、温かみのあるベースが曲全体を包み込むように鳴らされていますね。「若者のすべて」に関しては原曲がバンドサウンドで、かつ男性ボーカル曲なわけですが、難しさはありましたか。

越野:そうですね。この曲だけは歌い方に関して、違った意識を持って取り組みました。自分の声を鐘として響かせるというか。1番のBメロに<夕方五時のチャイムが>という歌詞がありますが、楽曲全体に伸ばして歌う個所が多いので、鐘のように打ってからしばらく反響するような歌い方を心がけたんです。

西塚:僕は、バンドの曲なのでほかの曲よりもライブ感を意識しました。

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「イチから自分で作曲ができなくなっていた」

――ここまでカバー曲の話を聞いてきましたが、今回の取り組みを通して、anderlustに還元できたと思えるものは見つかりました?

越野:自分の役割が鮮明に見えてきました。私、anderlustを始めるまではギターをそこまで弾いたことがなくて、作曲でもたまに使うくらいだったんです。でも、LINE LIVEでカバーを弾き語り形式で生配信したりしたことで、ギターボーカルとしてもっと前に出なければいけないということに気づきました。歌うたいとして、曲や歌詞をもっと伝える存在にならなければいけない、と。

西塚:僕はプレーヤーとして偉大なる先人の楽曲を弾いたことで、たくさん自分の中に蓄積できたものがあったと思っています。弾くときはあまり考えず直感に従うことも多いので、今回取り入れたことも自分たちの個性として昇華して、感覚のなかでアウトプットできるようにしていきたいですね。

――カバーでの経験は次作以降に期待といったところですね。表題曲「いつかの自分」は、どのような経緯で生まれたのでしょうか。

越野:この曲は『バッテリー』のお話をいただいてから作り始めました。まずは小林さんが持っていたデモがあって。そのデモがAメロ→Bメロ→サビという構成だったのですが、私がそのAメロとBメロを丸ごと変えて、そこに大サビを足したことで楽曲が完成したんです。歌詞はそこから付けていったんですけど、この時はちょうどスランプに陥っていて……。

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――スランプ、ですか。

越野:イチから自分で作曲ができなくなっていて、誰かから貰った種を、自分で広げていくことしかできなくなっていたんです。今までは自分で最初から書けたのに、急に浮かばなくなってしまって。最近までずっと悩んでいて、そこからどうやって抜け出そうかと葛藤していた時期に浮かんだ歌詞でした。駅の改札で2番サビの<なに一つ上手くいかないなんて 長いことは続かないからね>を思いついて、そこから一気にスマートフォンに打ち込んで全部書くことができたんですが、これまで書いた曲の中でも一番自分自身を投影させた曲だと思います。

――書き下ろし曲として作品への思いもありつつ、越野さんの気持ちも乗っかった楽曲に仕上がったということですね。ちなみにスランプはいつから?

越野:2015年末くらいから、気づいたらという感じでした。でも、この曲を作ったことで出口は見えてきて、前ほどすぐに浮かぶところまでは戻っていないですが、時間をかければ何とか作れるようになりました。

――それを西塚さんはどのように見守っていたのでしょう。

西塚:全然わからなかったですね。制作期間中は毎回曲のデモをもらって自分なりに演奏して戻すという感じだったので。今回初めて聞きました。

――ちなみに越野さんが小林さんのデモを大きく改変したということですが、元のデモはどのような楽曲でしたか?

越野:もっとシリアスなトーンですね。(主人公の)巧と豪に降りかかってくる戦いを表現していたと思うのですが、私はそこに少し明るさやダイナミズムを足すように心がけました。

――この曲を聴いていて印象に残るのはストリングスの使い方で。anderlustの楽曲でもここまで大胆に使うものはなかったと思うのですが。

越野:これは私が後から足したものです。さっき言ったように、ダイナミズムを足したいと思って大サビを作ったのですが、楽曲全体にも壮大さを加えたいという目的があってストリングスを積極的に取り入れました。

――そんな展開の楽曲なので、ベースがバックに徹すると思いきや、歌と鍵盤に加えてストリングスの合間を上手く縫って前に出てきていますね。

西塚:ストリングスも印象的なフレーズがあって、この曲自体はいろんなところに主役がいるという印象です。だからといってバックには徹したくなかったので、いつも通り歌と対等に近づけるような演奏を心がけました。

――歌詞については、越野さんのなかでもかなり思い入れのあるものになっているようですが、小林さんとやり取りするうえで変わった部分はあったのでしょうか。

越野:いえ、今回は散漫になっている日本語部分を直していただいたくらいで、2番は自分の表現も含めて丸ごと残っています。大きな変更は、大サビの<いつかの自分に 会いに行く>というところだけですね。元々は<la la la~>だけだったんですけど。

――ここで使っている<la la la~>というメロディ・コーラスは少し洋楽ポップス的なエッセンスを感じました。

越野:作ったときは「この曲にはこの大サビが入って当たり前」というくらいの感覚だったのですが、今振り返るとそうなのかもしれないですね。改めて聴くとAメロやBメロにもその要素はあると思いますし、無意識に出るものなんですよ。

――その大サビ部分にも関連してきますが、これまでの楽曲と比べてもA・Bメロからサビ、大サビと駆け上がる階段の数が多い分、音域もかなり広がっていますよね。ボーカルワークとしては難しい部分もあったと思うのですが。

越野:駆け上がる部分もそうですが、地声とファルセットの切り替えも激しくて、歌うのが難しい曲なんですよ。でも、ファルセットで強く歌うことを意識しないと上手く届かない曲なので、ライブではそのあたりに気を付けたいと思います。

――楽曲全体は柔らかさや温かさがあるものの、ボーカルは力強さを求められたわけですね。

越野:「やってやるぞ!」みたいな、燃えている感じがありますよね。実際作った当時はすごく燃えていたと思いますし、気持ちがしっかり反映されているのかなと。

西塚:実体験をもとに書いた曲だから、想像で書いたものよりも説得力はあるでしょうし、共感できる部分も多いかもしれないですね。

――先ほど「いつかの自分」を作ったことでスランプから脱出の兆しが見えたと伺いましたが、現状はどうですか?

越野:anderlustは目標として「多くのリスナーに、自分たちの信じる音楽をもっと届けていきたい」というものがあって、その目標へ向かう気持ちはずっと変わらないです。歌詞の話に戻っちゃうんですけど「いつかの自分」の“いつか”には2つの意味があるんです。目標に向かっているレールの先にある、自分が成長した未来としての「いつか」と、原点にいて、目標へ向かうことを熱く決心した過去の「いつか」。この曲は、そんな2つのいつかが、どこかでまた巡り合うんじゃないかという思いで書いたもので。スランプを抜けたあとはその巡り合いを期待しながら、常に「明日もっと頑張ろう」という気持ちで音楽と向かい合うことができています。

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「びっくり箱を開けるような感覚をもっと味わってもらいたい」

――楽曲制作について、次にトライしたいと考えていることはありますか。

越野:私としては、まだ踏み入れたことのないジャンルに挑戦したいと思っています。あと、先日『anderlust ショートムービーコンペティション』を開催して、多くの方に応募いただきました。この映像をもとに、映像を先にした曲作りも行なっていきたいですね。

――越野さんはもともと音楽以外にもアートや映画など、様々なものから影響を受ける方なんですよね。

越野:そうなんです! だから、いろんなものとの混じり合いを経たライブは、anderlustで絶対実現したくて。そのための表現方法はまだまだ模索中なんですけど、びっくり箱を開けるような感覚をもっと味わってもらいたいなと考えています。

西塚:色んな枠組みにとらわれず、その時々に感じているものを表現できたらいいと思っているのですが、そんな中で他の人がコピーしてても「あれ、これanderlustの曲じゃない?」と思わせられるような音楽がしたいという理想もあるんです。

越野:それ、めちゃくちゃいいですね!

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――西塚さんは他アーティストのサポートもしているわけですが、anderlustで演奏するときに「この2人だからこうする」というチョイスの判断基準はどこにあるのでしょう。

西塚:僕自身が直感タイプのプレーヤーなので難しいところもあるのですが、存在感を出すという意味合いもあって、バラードでシンプルなフレーズを弾いていても“うねり”があるようにしたいという意識はあります。そこが自分の持ち味だとも思っているので。

――それって誰かの影響だったりするんですか?

西塚:好きなベーシストが亀田誠治さんや山口寛雄さんなので、その方々の影響でもありますね。

――ありがとうございます。この夏は他アーティストと共演するライブも多いですが、どういった面を強く打ち出していきたいですか。

越野:さっき真吾さんが言ってくれたみたいに、幅広い音楽をやっていたとしても、私たちにしか出せない色は絶対にあると思うんです。もしかしたらそれは洋楽らしさなのかもしれないし、キャラクターなのかもしれないし、2人のコンビネーションなのかもしれない。答えが何かはまだハッキリとわかっていないのですが、今はただ、私たちの信じるパフォーマンスでanderlustの音楽を皆さんに届けられればいいという気持ちで楽しみたいと思います。

西塚:僕も特別意識はせずに、どういうお客さんが来てくれるのかを考えて選曲しつつ、パフォーマンスに関しては周りの目を気にしないでやっていきたいです。

(取材・文=中村拓海/写真=下屋敷和文)

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■リリース情報
『いつかの自分』
2016年8月24日(水)リリース
初回生産限定盤【CD+DVD】¥1,500+tax
<CD収録曲>
M1.いつかの自分 
M2.明日、春が来たら 
M3. Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜
<DVD収録内容>
「いつかの自分」 Music Video
「いつかの自分」 Music Videoメイキング映像

期間生産限定盤【CD+DVD】¥1,500+tax
※バッテリー描き下ろしオリジナルイラストジャケット仕様
<CD収録曲>
M1.いつかの自分 
M2.明日、春が来たら 
他予定
<DVD収録内容>
「バッテリーノンクレジットオープニング映像」 (いつかの自分ver.)
「バッテリーノンクレジットエンディング映像」 (明日、春が来たらver.)
他予定

通常盤【CD Only】¥1,296+tax 
<CD収録曲>
M1.いつかの自分 
M2.明日、春が来たら 
M3. Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜
他予定

■関連リンク
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anderlustオフィシャルTwitter 
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Sony Music内anderlustページ 

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