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今週の「おとな向け映画ガイド」

アカデミー賞有力候補作がこんなにも!ー『Mank/マンク』『ミッドナイト・スカイ』など劇場公開されたNetflixオリジナル4作品をオススメ。

ぴあ編集部 坂口英明
20/12/20(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末のロードショー公開は11本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『劇場版ポケットモンスター ココ』『映画 えんとつ町のプペル』『ジョゼと虎と魚たち』の3本です。今回ご紹介するのは、いま話題のNetflixオリジナル作品4本。館数は少ないですが、今なら映画館でご覧になれます。この年末年始は、おうちでゆっくり配信を観るという楽しみ方も。

『ミッドナイト・スカイ』



ジョージ・クルーニー主演・監督・製作、世界の静かな終末を描くSF大作です。

2049年、地球は壊滅の危機にあります。クルーニーの役は、避難をせずに北極圏の天文台にひとり残った老宇宙物理学者オーガスティン。食料の備蓄もあるこの観測施設で死を待つ状態です。施設内で、家族とはぐれ取り残された少女アイリスを見つけるのですが、彼女を救うすべもありません。ある日彼は、木星の探査を終え地球に帰還する宇宙船からの無線をキャッチします。彼らは、地球との連絡が途絶え、混乱状態のなか、情報を求めてあてのない発信を続けていたのです。オーガスティンは、よりよい通信設備のある遠く離れた別の基地へ氷原のなかをアイリスと移動します。映画は、そのサバイバルの旅と、宇宙船の地球帰還を並行して描いていきます。

原作はリリー・ブルックス=ダルトンの『世界の終わりの天文台』。なぜ地球は滅亡するのか? 木星探査のミッションは?  宇宙船内の人間関係は? オーガスティンはなぜ残ったのか?  少女アイリスの謎?などなど、原作とは異なる部分もあったり、観た人の想像力に委ねられるところも多くて、映画を観終わっても話題はつきません。氷とオーロラの北極圏、宇宙空間でのスリリングな船外活動シーンや、船内のライフスタイル、といった映像の見どころも盛りだくさんです。

12/11(金)から劇場公開。ヒューマントラストシネマ渋谷他で上映中。
12/23(水)からNetflixで配信開始。

『ザ・プロム』



ブロードウェイとハイスクール・ラブコメをガッチャンコさせた良いとこ取りミュージカル。しかもメリル・ストリープ、ニコール・キッドマンら大物俳優を起用するという大盤振る舞いの、ゴージャスなNetflix映画です。

ルーズベルト大統領夫人を主人公にした新作ブロードウェイ・ミュジーカル『エレノア』、劇場前の派手なキャンペーンで華々しく初日を迎えるのですが、酷評であえなくクローズ。やけ気味の主演女優ディーディー(メリル・ストリープ)とその仲間たちは起死回生のアイデアをSNSでみつけます。

それは、インディアナ州の田舎町の高校で、同性の恋人とプロム(卒業パーティ)に参加する予定の女子高校生がいるため、PTAがプロムそのものを中止したという記事。この女子高生をブロードウェイのスターが応援しよう、というわけです。ディーディーたちの出現に、現地は大騒ぎ。

監督は学園シリーズ『glee グリー』のライアン・マーフィ。女子高生エマを演じる新人ジョー・エレン・ペルマンは、どこか『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンを彷彿とさせます。学園ミュージカルの躍動感とベテランたちの円熟の芸の見事な交配。メリル・ストリープ扮する大女優のセルフ・パロディは余裕を感じますし、彼女や、ニコール・キッドマン、ジェームズ・コーデン(トニー賞受賞男優)らが歌い踊るシーンは一見の価値あり、です。

12/4(金)から劇場公開。ヒューマントラストシネマ渋谷他で上映中。
Netflixで配信中。

『Mank/マンク』



米アカデミー賞レースで最有力候補といわれている作品です。監督は『ゴーン・ガール』などのデヴィッド・フィンチャー。映画史上燦然と輝く名作中の名作『市民ケーン』は監督で主演のオーソン・ウェルズの功績が語られますが、この映画は脚本を担当した”マンク”こと、ハーマン・J・マンキーウィッツにスポットをあてた新味の“名作誕生秘話”になっています。

脚本を担当したのはジャック・フィンチャー。監督の実父です。『市民ケーン』のモデル、新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストや、MGMの創始者メイヤー、『ラスト・タイクーン』の主人公、タルバーグなど、実在したハリウッド・レジェンドが実名で描かれています。1930年代、黄金時代のスタジオらしい熱病のような浮かれた雰囲気と、きらびやかな世界の裏で展開するどろどろとした人間模様。ハリウッド内幕ものの魅力にあふれています。

評判をよんでいるひとつは映像です。モノクロの、まるで『市民ケーン』(1942年作品)と同じようなテイスト。様々な時制のシーンをインサートする構造は、フラッシュバックを多用した『市民ケーン』を連想させます。

役者も高い評価を得ています。マンクを演じているのは、個性派ゲイリー・オールドマン。今回も、この酒びたりで、毒舌、ハリウッドの暴れん坊を魅力的に演じています。

『市民ケーン』はいまや世界の映画ベスト1にも選ばれますが、当時、ハリウッドからは総スカンで、アカデミー賞9部門にノミネートされるも、受賞したのはこのマンキーウィッツ(とオーソン・ウェルズ)の脚本賞だけ。さて、『マンク』はどんな結果になりますか。

11/20(金)から劇場公開。アップリンク吉祥寺他で上映中。
Netflixで配信中。

『シカゴ7裁判』



1968年シカゴでおきたベトナム戦争への抗議デモ弾圧事件の、今からみると衝撃的で理不尽な裁判を描いた物語です。

事件は、大統領選挙に向けて民主党全国大会が行われたシカゴにベトナム反戦の活動家が集結したなかで起きました。デモ隊と警察、州兵が対立し、なかば暴動状態となり、デモ指導者が逮捕されました。映画は翌年に行われた裁判を追いながら、事件の背景も描いていきます。

シカゴ7とよばれた被告は、新左翼の学生団体SDSのリーダー、トム・ヘイデンや、政治に傾斜したヒッピー集団イッピーのアビー・ホフマンとジェリー・ルービン、非暴力の活動家など7人。さらに過激派ブラック・パンサーのリーダーも告発されていました。

監督・脚本はアーロン・ソーキン。『ホワイトハウス』などTVシリーズのヒット脚本家として知られ、最近は映画監督として活躍しています。当初、この作品はスティーブン・スピルバーグが監督するといわれていました。

トム・ヘイデンといえば、その後、カリフォルニア州議会議員となりますが、映画ファンにはよく知られた名前。ジェーン・フォンダの元夫です。この映画では、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのエディ・レッドメインが演じています。

フランク・ランジェラが演じた超タカ派の裁判官の横暴、意外な証言者の登場(マイケル・キートン扮する前司法長官など)、被告団の内輪もめ……といった裁判ドラマならではの展開の面白さ。そして感動のラスト!

アメリカではベトナム反戦、フランスの五月革命、日本では全共闘運動と、若者たちの関心が政治に向けられた時代の物語です。それが、トランプが再選をめざし、さまざまな政治対立が現出した今年に公開されたことに意味があります。これもアカデミー賞の有力候補の一本です。

10/9(金)から劇場公開。アップリンク渋谷他で上映中。
Netflixで配信中。

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