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憂鬱や窮屈さを“飛び越える”主人公を描く。新海誠監督が語る『天気の子』

ぴあ

新海誠監督 (C)2019「天気の子」製作委員会

『君の名は。』の新海誠監督の最新作『天気の子』が公開されている。本作は雨が降り続く東京の街で出会った家出少年の帆高と、祈ることでほんの少しの間だけ天気を晴れにすることのできる少女・陽菜の物語を描いているが、新海監督は「この映画では帆高たちに憂鬱や窮屈さを飛び越えてほしかった」という。本作で彼らはどんな困難に出会い、どうやってそれを飛び越えていくのだろうか?

新海監督はほぼ独力で制作した短編『ほしのこえ』で2002年に監督デビューを果たし、そこから着実にファンを増やしてきた。2016年に公開された前作『君の名は。』で新海監督はそれまでとは比較にならないほどの数の観客に出会ったが、自分が創作を始めた頃と現在では「自分の考える観客像は少しずつ変わってきている」という。

「SNSの存在は大きいです。『君の名は。』以前と現在では、世の中の成り立ちや透明度のようなものが違っていて、SNSによって世界が異様に透明なものに見えてきてしまっている。常に誰かが消費されている。それは政治家もそうだし、有名人もそうですし、一般の人も含めてそうですよね。僕自身もそういう対象になり得ることもあるだろうし。こんなにも息苦しい世界で現在の10代、20代の人は暮らしているのかと思うし、僕自身も苦しくなるような窮屈さを感じている。その時に、その窮屈さを飛び越えてしまうような少年少女を描きたいと思ったんです」

家出してひとりで東京にやってきた帆高と、幼い弟とふたりで東京で暮らしている陽菜は居場所がなく、必死に生きているだけなのに少しずつ追いつめられていく。劇中では“天気”がモチーフになっているが、これも新海監督が感じたことを表現する上で重要な役割を果たしている。

「子供の頃から温暖化が起きる、気候変動があるんだと繰り返し言われていて、僕は人間は何とかするんだろう、自分が大人になる頃には何とかなっているんだろうなと思っていたんです。でもここ数年で、はっきりと気候の変動期に入っている気がする。結局は止められなかったし、結局は変えられなかった、結局は何もしなかった。そして結局、本当に変わってしまった。その原因の一端には確実に自分たちの日常の生活があるんだけど、気候変動の話は大きすぎて、個人でできることは、ほとんど無に等しい。何かやりようはあるのかもしれないですけど、割と無力感の方が先に立つんですよね」

しかし、本作の主人公たちは誰かが犠牲になってしまう現実や、物事を変えられない無力感に飲み込まれたり、大人の諦めや憂鬱に追随したりすることなく、全力で進んでいく。

「これは無責任かもしれないですけど、この映画では帆高たちに憂鬱や窮屈さを飛び越えてほしかったんです。そこには僕たちの憂鬱を彼らに押し付けたくないという気持ちもあります。ただ同時に、自分と関係のないところで変わったのではなくて、自分がやったんだと感じる主人公でいてほしかった。その上で、大人の憂鬱と関係のないところで若い子には健やかに生きてほしい気持ちがある。だから、自分にはできないことを帆高たちには背負わせてしまっている感覚があるんですけど、そういう映画を世の中に出すことで、見えてくる風景があると思ったんです」

『天気の子』の主人公たちは物語を通して何を引き受け、どんな風に憂鬱や窮屈さを飛び越えるのだろうか? そして彼らの跳躍を目にする観客に見えてくる景色は一体、どんなものだろうか? 監督が「王道とは少し違うところで、見終わった後に意見が分かれる」と語る本作はこの夏、大きな話題を呼びそうだ。

『天気の子』
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