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KREVA、ソロデビュー15周年キックオフインタビュー ヒップホップの変化とともに進化する表現

リアルサウンド

19/2/22(金) 12:00

 ソロデビュー15周年を迎えたKREVAが、野心的な企画を次々と打ち出している。

 まず告知されたのは、9カ月連続リリースと6月の日本武道館でのワンマンライブ。1月には第一弾として「音色 〜2019 Ver.〜」が配信リリース、2月27日には第二弾としてカセットシングル『基準 ~2019 Ver.~/ストロングスタイル ~2019 Ver.~』がリリースされる。

 アニバーサリーイヤーのプランについて、そして『908 FESTIVAL』や『完全一人ツアー』など唯一無比のスタイルを築き上げてきたライブパフォーマンスについて、そしてヒップホップシーンの今を彼がどう見ているかについて、たっぷり語ってもらった。(柴那典)

バンドで録り直すギリギリセーフのタイミングだったかも 

ーー今年はどういう一年にしようと思って今回の企画を始めたんでしょうか。

KREVA:具体的に言うと、普通のベストじゃなくて全曲録り直したいっていうのは、結構早い段階で言ったような気がする。アニバーサリーっていうとベストというのがありがちだけど、ただ出すんじゃなくてバンドで録り直そうというのは、だいぶ前から決めてました。

ーーバンド編成でのツアーを重ねてきて、かなり経ちますよね。

KREVA:そうですね。8年くらいかな。

ーーその手応えがあったからこそ録り直そうという発想が出てきた。

KREVA:もちろん。自分自身もバンドとやることで、ラップも歌も上手くなったと思いますね。例えばDJとだと必ず同じ音が出てきて、そこにどうアプローチしていくかというものになる。もちろんそこはいいところでもあるし、同じだからこそ上手くなろうっていうのもあるんだけど、そこに、毎回表情を変えるバンドの中で際立っていくにはどうしたらいいかという発想が加わった。それは満足のいく伸びを見せられたと思うから、そろそろ形にしてもいいんじゃないかと思えた感じですかね。

ーーラップの表現が、いわゆるミュージシャンシップに近いものになった感じがある。

KREVA:そうだと思う。最初の頃はバンドの演奏するトラックに乗っかってる感じがあったけど、今は楽譜を見ながら「ここはこう」って指示したりできるようになってきた。より理解も深まったし、成長できたところはあるかな。

ーー加えて、今の時代ってベスト盤という発想自体もどうかと思うんですよ。

KREVA:そうだね。必要性が微妙っていうか。

ーーストリーミングサービスに「初めてのKREVA」とか「This is KREVA」っていうプレイリストがあれば、それを聴けばいいじゃん、って。

KREVA:そう(笑)。だから、新しく録って表情を全く違うものにしたかったっていうのはあるかな。二回もベスト盤出してるし、リマスターって言っても「何に向けての?」っていうね。

ーーそう、リマスターも難しいですよね。

KREVA:うん。CDに向けたマスタリングと、ストリーミングに向けたマスタリングが、全く違う方向になってきているから。それが音楽のトレンドさえ作るような流れがある。アメリカみたいに完全にストリーミングが主流になったらそっちに振り切るっていう手もあるけど、日本ならある程度CDで聴く人もいるわけだし、そうなるとリマスタリングも難しい、ちゃんと作り直すというか、やったことない形にトライしておくのがいいかなと。

ーーこないだ、ロックバンドが低域のサウンドにどう向き合うかというテーマでASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチ(後藤正文)にインタビューしたんです。そこでもCDとストリーミングで音作りのルールが変わってきたという話をしていて。これは、バンドだけじゃなく、全てのミュージシャンが向き合わざるを得ない問題になっている。

KREVA:間違いない。

ーーそこに関しては、どう捉えてますか?

KREVA:俺は前向きに進めていきたいタイプですね。でも、研究はちょっと足りなかったかなと思う。ただ、ゴッチが言うように、ストリーミングだとバンドの方が絶対に不利なんだよね。隙間がある音の方が強く聴こえる。

ーーですよね。サブベースでローエンドの低域をすごく鳴らして、中域を思いっきり抜いて、上の方でハットを鳴らすような、隙間の多い音作りの方が映えるというか。

KREVA:そうそう。だから、今回バンドで録り直すって、ギリギリセーフのタイミングだったかもしれないね。

ーーいや、ドレイクみたいな音作りがストリーミングにおけるひとつの正解だとするならば、むしろ今回のバンドアレンジはその真逆だと思うんです。めちゃくちゃこってりとしたロックバンドのアレンジになっている。

KREVA:ははは(笑)。でもまあ、フリみたいな感じかな。全部をこっちにしようというのは全くない。自分が作る今のストリーミングに合っているようなサウンドは好きだし、今後はそうなっていく気がするけど、ただその一方でライブはバンドでやってるわけだし、その音源は今までなかったから、今回ちゃんと録ったのはいい経験だった。ビクターのいいスタジオに入って、いつもライブしてるみんなとじっくり録ってみて、改めて録音物とライブの違いを感じることができたし。俺が普段聴いてるような音楽の強さもわかったし、その一方で、みんなで演奏を重ねるもののよさも感じてるから。「どっちも良い」って言いたい気持ちはありますね。ただ、とにかく勉強しないといけないな、って。バンドでやることでよりそう思えた。

三浦大知、渡辺直美ら『908 FESTIVAL』出演者に共通する“歌心”

ーー2019年には9カ月連続のリリースが決まっていて、今のところ公開されている情報だと、1月にデジタルシングル「音色 ~2019 Ver.~」が配信され、2月にカセットシングル『基準~2019 Ver.~/ストロングスタイル~2019 Ver.~』がリリースされます。カセットテープで音源を出そう、というのは?

KREVA:「やったことないことはやろう」ってことですね。カセットっていうものを出したことがない、じゃあ出そう、っていう。

ーーじゃあ次もやったことのない形態で出す?

KREVA:マイクロSDで出そうという話もしたんですけど、あれはものすごいコストがかかるからダメだって(笑)。まあ、いろんな形態で出すことはやっていこうと思っています。もしかしたら野菜なのかもしれないし(笑)。

ーーそして、6月30日に日本武道館でのワンマンライブが開催されることが決まっている。ここはどういうステージにしようと思っていますか?

KREVA:俺の中では、今までの武道館でやってきたライブの総まとめみたいなことができればいいかなと思ってたんだけど。でも、1人でやったライブで得たものもあるので、あの感じとバンドを合わせるっていうのも面白いかなとも思ってますね。派手さと静けさっていうか、アーティスティックにやるところと振り幅を持たせられたらいいなと思ってる感じというか。

ーーなるほど。二つのポイントがあるわけですね。まず一つは、これまでの武道館で培ってきたものの集大成がある。KREVAさん自身としては、武道館でやってきたこと、得たものって、どういうものだと捉えていますか?

KREVA:武道館を活かしているっていうより、甘えてる感じはあるかもしれない。武道館が持っている箔なのか格なのかわからないけど、とにかく武道館でやることでステージが違うものになるっていうところがあるじゃないですか。それを大いに利用しているのが『908 FESTIVAL』だと思うんですよ。そうかと思えば、そこで完全に一人でやったりもする。

ーー武道館は会場の構造も特殊ですよね。客席にステージが囲まれる形になる。

KREVA:間違いない。こっちからは全員見えるし、座っている人も2階だったら表情が見えるくらいだったりするじゃないですか。だから一人でもできるし。あと、勝手にホーム感があるかな(笑)。

ーーあと、これはここ数年の『908 FESTIVAL』を観ていて勝手に思ったことなんですが、渡辺直美さんが出たあたりから、だんだんフェスというより音楽バラエティ番組だと思って観るようになって。

KREVA:ははは、確かに。エンタメ化がね。

ーー変な言い方ですけど、たとえば幕間のMCとか転換も含めて、構成作家が入っているんじゃないか? って思うくらい、2〜3時間のショーをきっちり飽きさせずに見せていくための企画と演出が徹底していると感じたんです。このあたりのスキルに関してはどうでしょう?

KREVA:たしかに、自分がいろいろ口を出すようになってきて、エンタメ色が強くなってきたんだと思う。人に任せてた部分も「ここはこういう風に切り替えよう」とか、コントにしてもフリースタイルでやってたのをちゃんと台本を書くようになったりして。

ーーコントの台本もきっちり書いてるんだ!

KREVA:あれはちゃんと書いてますね。最初はノリで「仲良しだからできるよね」って感じだったんだけど、忙しいみんなのことを気にして、ちゃんと台本書いて。

ーーそれは誰か指南役がいたんですか?

KREVA:いや、いないです。自分でやりました。同じような話で、時間が限られてる中でやりたいことが増えたんで、バンドに楽譜を書いて渡せるくらいにはなった。今までは「そうじゃない」とか「違うな」とか口で伝えながらやってたんですけど、簡単にバンドが演奏できるくらいの楽譜は書けるようになりましたね。

ーーそして、もう一つ。いまや『908 FESTIVAL』のもう一人の主役になった三浦大知という人について聞ければと思うんです。10年くらい共演を続けて、彼がスターとして世に羽ばたいていくのをKREVAさんはずっと見てきたわけで。

KREVA:そうですね。

ーーアーティスト同士の信頼関係のある相手としてずっと見てきて、彼はどう変わっていったと思いますか?

KREVA:その質問に対しては、逆に変わらないところばっかりなんですよ。まず人が変わらない。ちょっとぐらい天狗になったり、嫌そうなところを一秒でも見せてもいいんだけど、ほんっとに見たことがない。そこが素晴らしいし、だからみんなに愛されるんだと思う。で、歌って踊るというスキルの上手さも昔から変わらないんだけど、その精度がめちゃくちゃ上がってる。自分で修正をかけたり、コントロールするのがすごく上手いんですよ。歌でもピッチが外れそうになった時に音程が合ってる方にグッと持っていくような安定感をもたらす体幹の強さみたいなものもあるし。あとは『908 FESTIVAL』で「こういう役割をしてほしい」って言った時にそのキャラにアジャストする力も半端なくなってる。全開で後輩キャラになってくれるところもあるし、バリッと見せてくれるところもあって。その力たるや末恐ろしい。まだまだ伸びると思うから。すごいなって思う。

ーーあれだけ芸術性の高いアルバムを出して、完璧なパフォーマンスをして、その直後に牛乳瓶の底みたいなメガネかけて出てくるわけですからね。

KREVA:そうそうそう(笑)。それもすごく嬉しい。俺があのキャラをこんな感じでって説明したら、俺以上にそれをキャッチしてくれて。彼も高畑充希ちゃん相手にやるとは思っていなかったと思うんだけど(笑)。

ーー高畑充希さん、渡辺直美さんのように、俳優や芸人として活躍する人も同居できる懐の広さも『908 FESTIVAL』の特徴ですよね。

KREVA:そうですね。でも、単に八方美人な感じにならなきゃいいなとは思ってる。直美ちゃんにしても、歌心があると思っているからオファーをかけてるし、みっちゃん(高畑充希)もあれだけ歌えるから。そういうのは大事にしていきたいですね。誰でもいい、っていうんじゃない。

ヒップホップが音楽としてだいぶ変わった 

ーーそうやって『908 FESTIVAL』が培ってきた武道館の文脈がある一方で、その対極にあるものとして、「完全1人武道館」から去年の「完全1人ツアー」の文脈がある。あれも大きいと思うんです。たしか、最初に一人でやったのは2007年のツアーですよね。

KREVA:そうですね。最初の武道館も2日間で、最初は派手にやって、次は一人だったという。

ーー最初はどんなアイデアだったんでしょう?

KREVA:最初のとっかかりは思い付きですね。それこそ対比で、派手な武道館と、完全に俺だけの武道館があったら面白いんじゃないかという。それがいろんな人に褒めてもらったんですよね。それこそ大ちゃん(三浦大知)ともそこがきっかけで知り合った、仲良くなったところもあるし。あれはすごく大きなライブだった。自分が好きなところのコアな部分をエンターテインメントにすることができるんですよ。いわゆる「ザッツ・エンターテインメント!」っていう感じとは違うのかもしれないけど。本来はニッチでマニアックな世界をエンターテインメントにするみたいな。

ーーあのスタイルはフォロワーがいないですよね。

KREVA:近いのはあるけどね。難しいんじゃないかな。

ーーただ、最初は「一人でやった」ということで観客も同業者も驚いたと思うんですけれど、回を重ねるごとに、どんどんその見せ方も進化していったと思うんです。それが「完全1人武道館」から去年の「完全1人ツアー」への流れだったんじゃないかと。

KREVA:そうですね。あとは、ヒップホップが音楽としてだいぶ変わったと思うんです。俺が最初に完全1人武道館をやった時のヒップホップは、もう「ブーンバップ」っていう違うジャンルの名前で呼ばれちゃってるじゃないですか。機材もだいぶ進化しているし。そこについていくとなると、よりミニマムな世界になってくる。昔のヒップホップはブロックパーティでガンガン聴く音楽だったけど、今はどんどん一人で聴く音楽になって密室感が増している気がするんですよ。もちろん今もデカいところで盛り上げたりもしているけれど、俺の印象ではどんどん密室感が増してきていると思うし、作り方もだいぶ違ってきてる。

ーー機材の進化とトレンドの変化を、今のヒップホップの最先端の変化を知らない人にも嚙み砕いて説明してもらえればと思うんですが。どう変わってきているんでしょう?

KREVA:簡単に言うと、昔は、古き良き音楽をサンプリングして、そこから作るっていうことが主流だったし、サンプラーという機材があって、ターンテーブルがあって、レコードをサンプリングして音を作るという世界だった。そこから、パソコン一台、何ならiPadでもいい世界になってきた。でも、出てくるものはヒップホップと両方呼ばれていて、今はコンピュータのほうが主流になっている。で、自分はレコードとサンプラーの良さも知ってるし、コンピュータでできることの良さもわかってるから、両方見せたいっていう感じかな。変わってきてるんだよっていうのを見せたい。最初に言ったバンドで録り直したという話と全く同じなんだけど、どっちもいいと思っているんですよ。どっちがいい、じゃなくて、そういう風に全部で捉えたい感じなんで。

ーーちなみに、前にマンブルラップはイヤモニの進化によって生まれたジャンルなんじゃないかという話をしてましたよね。

KREVA:ああ、言っていましたね。ヘッドフォンとイヤモニ。ああいうのがあれば、デカいとこでもラップができるじゃないですか。ただ、それこそ、ケンドリック・ラマーのライブなんてだいぶ鬼気迫るものがあるけど、あれもしっかりイヤモニして、かなり正確にやってる感じが出てると思うんです。あのとんでもないパフォーマンスを可能にしてるのもイヤモニの発展があると思うし。

ーーそうなんですよね。機材の発展が新しい音楽を生むというのは、これまでもずっとある話なわけで。たとえばロックンロールはエレキギターから生まれたジャンルだし、ヒップホップだってターンテーブルだった。でも、そういう新しい音楽性を生むような機材のイノベーションってもうないのかなって思ってたら、イヤモニだったんだ! っていう。

KREVA:まさかのね(笑)。やっぱり、イヤモニだったらいつもと同じ音が鳴ってるわけだから、リハなしで出番お願いします! みたいな世界でもラップの奴は強いと思うんですよね。

ーーなるほどねえ。脱線しましたけど、「完全1人ツアー」に至るまでのライブ表現の進化には、一つはそうやってヒップホップの世界が変わってきたっていうのが背景にある。

KREVA:うん、あると思う。

ーーで、もう一つは、ライブ評にも書いたんですが、よりエデュテイメントの要素が強くなってきていると思うんです。DJがどういうことをやっているのか、どんな機材を使ってどんな風にトラックメイキングしているのか、そういう手の内を明かしている。このへんは、どういう理由だったんでしょうか。

KREVA:考え出したのは一昨年ぐらいからかな。誰かに何かを教えるとか、そういうことをあまりやってこなかったなと思って。あとはヒップホップのトラックメイカーがあまり育ってないと思うし、もっと出てきたらいいなと思ってるから。俺が求めてるのって「どこから出てきたの? その才能?」みたいな人なんですよ。俺が「ビートメイカー集まれ!」って言ったって、本気の奴が「お願いします!」みたいに集まっちゃうわけで。それより「やることないからiPhoneに入ってたアプリで作ってみました」みたいなやつのほうが爆発力のあるものが生まれるんじゃないかなって。

ーーということは、興味を持った人に「やればできる」と思ってもらえるのが大事なポイントなわけですよね。

KREVA:そう、まさに。で、やってみたら全然できないっていうのも、俺がやっていることのすごさや深さをわかってもらえると思ったし。ぜひやってみてほしいなっていう気持ちが強いですね。まずは自分のライブに来てくれる人がそうなってほしいし、ゆくゆくは自分からもっといろんな形でそういうことを発信していければいいなとは思ってる。

ーーそうやって「1人ツアー」で培ってきたものも、今年の武道館に反映させたい?

KREVA:うちのバンドのメンバーが観に来てくれて話してたんですけど、「繋ぎ方がクレさんっぽかった」って言ってたんですよ。「それに合わせたら面白いと思う」って。今度は自分も機材をある程度持っていって、参加しつつやれば、もう少し面白いライブになるかもしれない。そういうところはあってもいいかなって思いましたね。

ーーいろんな話を聞いていると、15周年のアニバーサリーだからといってキャリアを総括するわけじゃなく、どんどん新しいことに挑戦する一年になりそうですね。

KREVA:確かに。改めて、この機会にいろいろやってみようかなと思ってますね。それが成功するかしないかはわからないけど。

ーーわかりました。これは、KREVAさん自身とは別の、どちらかと言うと国内外含めたシーンの状況的な話ではあるんですが、ここ最近、海外ではヒップホップという音楽が完全にメインストリームになっているし、日本においても、BAD HOPが武道館公演をやったり、どんどん大きな潮流になっている。

KREVA:ねえ。ちょっと怖いぐらい。

ーーさらにいえば、たとえば88risingが象徴するアジアの盛り上がりがあって、たとえばSKY-HIさんは「アジア人であることがこんなにアドバンテージに思える時代はないんじゃないか」と言っている。いろんな意味でヒップホップをめぐる状況が変わってる、と。

KREVA:うん。ガンガン変わってる。

ーーそういう時代において、日本でKREVAという人が15年ポップスのマーケットで戦ってきたことの強みはすごくあると思うんですが、そのあたりはどう捉えていますか?

KREVA:あのね、今の話を聞いて途中ぐらいからずっと思っていたのは、もうちょっとその恩恵を受けたい!

ーーあははははは! 

KREVA:フリースタイルブームの恩恵もあまり受けなかったし、世界的にヒップホップが流行っていることの恩恵もあまり受けられてない感じがするんですよね。それは、シンプルに自分が売れたいというのもあるけれど、あとは、ラップが完全なるポップミュージックになったことの強みがもうちょっとあっていいのになって思う。

ーーというと? 

KREVA:さっき言っていた話で、今の時代、海外ではビートメイカーの無名性がハンパないんですよ。「誰!?」っていう。5年前、10年前とかだったら、やっぱりファレル(・ウィリアムス)がやってるから売れるとか、ティンバランドがやってるから売れるとか、そういうのがあったのに。今はそうじゃない奴もガンガン出てくる。日本がそういう感じになってないのはちょっと残念なんですよね。ヒップホップなんて、なんでも乗っかれてるし、言ってることさえ面白ければ人気出るっていう世界だと思うから。たとえばインドのナショナルチャートにも、自分たちの伝統音楽をサンプリングしたラップが入ってるんですよ。タイとかでもそうなってるし。もっとそういう土壌になったほうがいいんじゃないかと思う。

ーー日本にも「野良トラックメイカー」がもっと出てきてほしい。

KREVA:野良トラックメイカーと、土足感満載のラップ。まあ、出てきてるんだけど、もっととんでもないヤツが出てこないかな、もっともっと行けるんじゃないかなっていつも思ってる。たとえば自分に急に送られてきたトラックがむちゃくちゃヤバくて、それでその時に考えてることをラップしたら、それがみんなに届くっていうことがあったりしてほしい。そういうのが、自分が受けたい恩恵の一番大きなことかな。

(取材・文=柴那典)

■リリース情報
シングルカセット
『基準 ~2019 Ver.~/ストロングスタイル ~2019 Ver.~』
発売:2019年2月27日(水)
価格:¥1,700(税抜)

『音色 ~2019 Ver.~』
2019年1月15日より配信中

■ライブ情報
『KREVA ワンマンライブ』
6月30日(日)東京 日本武道館

『ビクターロック祭り2019』
3月16日(土)千葉 幕張メッセ国際展示場 9、10、11ホール

■関連リンク
KREVA 15TH ANNIVERSARY YEAR特設サイト
オフィシャルサイト

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