Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

荒井晴彦監督作「火口のふたり」に柄本佑と瀧内公美が出演、極限の愛描くR18+作品

ナタリー

18/12/17(月) 8:00

「火口のふたり」

荒井晴彦の監督・脚本作品「火口のふたり」が、2019年に公開される。

本作は直木賞作家・白石一文が東日本大震災を受けて書き上げた同名小説が原作のR18+指定作品。数年ぶりの再会をきっかけに、抑えきれない衝動の深みにはまっていく男女の極限の愛が描き出される。出演者は「きみの鳥はうたえる」の柄本佑と「彼女の人生は間違いじゃない」の瀧内公美のみ。脚本家として知られる荒井の「身も心も」「この国の空」に続く3本目の監督作となる。

荒井は本作の製作のきっかけを2006年までさかのぼり、相米慎二も見たという秋田の西馬音内盆踊りに言及。「亡者踊りともいわれてるように、死とエロスが匂い立ってくる。相米が三日間観ていたというのが分かる気がした。いつかこの盆踊りと男と女を絡めた映画を作りたいと思った」そうで、「東日本大震災と原発事故の翌年、白石一文の『火口のふたり』が刊行される。津波の翌年に××が××する話をよく書くなあと感心した。意表をつくカタストロフィーだが、まだ、あれから2年もたっていない時だ、あるかもと思わせられた」と明かした。

映画化の話を快諾したという白石は「私としてはめずらしいほど生命力にあふれた作品だ。人のいのちの光が最も輝く瞬間をどうしても描きたかったのだろう」と原作について述べる。また柄本は念願だった荒井作品への出演に「今回のお話をいただいた時、小躍りしました」とコメント。瀧内は「良い緊張感と幸福感が現場に漂い、荒井さんと柄本さんの何気ない会話の端々に、この映画にとっての大切な何かがあるような気がして、さりげなく聞いているのが毎日の愉しみでした」と撮影を振り返った。

※「火口のふたり」はR18+指定作品
※記事初出時、人名に一部誤りがありました。お詫びして訂正致します。

荒井晴彦 コメント

2006年に西馬音内盆踊りを見たのが、スタートだったかもしれない。あきた十文字映画祭が映画教室をやるというので、シナリオ指導で十文字町に来ていた。映画祭は2月なので、夏の秋田は初めてだった。雪の無い秋田はなんかスカスカしている気がした。雪が無けりゃ何も無いとでも言ったのだろうか、映画祭の吉村美貴子に、相米慎二監督が三日間観た西馬音内盆踊りというのがあるんですよ、見ますかと言われた。毎年8月16、17、18日に開催される盆踊りの2日前に、NHKの盆踊りの特集で観た相米に言われて田辺マネージャーが宿の手配で電話してきたという。2日前では宿はある筈も無く、吉村が奔走して、2晩は確保したが1晩は吉村の家に泊めたという。相米は「来年は俺も踊ろうかな……」と言い残して帰ったそうだが、その来年、2001年、相米は、2月の映画祭(露天風呂で降りかかる雪が相米の頭で溶けていた)のあと、入院、9・11の二日前に死んでしまう。
西馬音内盆踊りを観た。黒い布に目穴が開いた彦三(ひこさ)頭巾と深くかぶった編み笠で踊り手の顔は隠れている。男か女かも分からない。くるっと回転する時の草履が道をこする音がいい。亡者踊りともいわれてるように、死とエロスが匂い立ってくる。相米が三日間観ていたというのが分かる気がした。いつかこの盆踊りと男と女を絡めた映画を作りたいと思った。
東日本大震災と原発事故の翌年、白石一文の「火口のふたり」が刊行される。津波の翌年に××が××する話をよく書くなあと感心した。意表をつくカタストロフィーだが、まだ、あれから2年もたっていない時だ、あるかもと思わせられた。白石さんに原作をもらいに行った時、福岡を秋田に変えていいですかとお願いした。白石さんはアライさんじゃ仕方が無いですねと言ってくれた。その時から4年、震災から7年もたってしまった。
直子の結婚式に出るために故郷へ帰った賢治は直子に「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」と言われる。
「賢ちゃんが相手の人とうまくいかなくなるのは分かってたし、だったら、私、待ってればよかったかなって。ヘンな嫉妬なんてしないで、もっとちゃんと自分の身体の言い分を聞いてあげた方がよかったのかもしれないって」と直子は言う。
何があろうと「自分の身体の言い分」を聞いてあげようという映画です。

白石一文 コメント

「赫い髪の女」や「遠雷」の頃から荒井晴彦さんの脚本に魅せられてきた者のひとりとして、その荒井さんから映画化の話をいただき、一も二もなくすべてをお任せすることにした。しかも今回は自らメガホンを握って下さるという。原作者としてこれに優る光栄はない。
「火口のふたり」はあの大震災から時を経ずに一気呵成で書き上げた小説で、私としてはめずらしいほど生命力にあふれた作品だ。人のいのちの光が最も輝く瞬間をどうしても描きたかったのだろう。
映画界の伝説ともいうべき荒井晴彦さんの手で、その光がよりなまなましく、妖しく観る者の心を照らし、身の内に眠っていた“おとこ”や“おんな”が強く喚起されんことを切に願っている。

柄本佑 コメント

荒井晴彦脚本作品に出ることは僕の夢でした。今回のお話をいただいた時、小躍りしました。なんたって脚本だけでなく監督も荒井さんなんですから。ホンはなんともチャーミングで「大人」なホンでした。5歳の時から僕を知ってくれている荒井監督。今まで仕事したどの監督よりも付き合いの長い監督です。どんな映画になっているのか。出ている自分を見る不安はありますが、いち映画ファンとして出来上がりが楽しみです。

瀧内公美 コメント

最初に脚本を読んだ時の感想は、絡みのシーンが多い、他愛のないことをずっと喋っている。面白いけれど、私に出来るのかなぁと思いました。現場に入り柄本さんとお芝居をすると、賢治と直子として他愛のないことを話す、食べる、身体を合わせる、寝る。そんな二人の日常を積み重ねていくうち、ああ生きるってこういう事なのかなと、自然と身体が動き、賢ちゃんを真っ直ぐ見て、聞いて、素直に直子として生きたように思えます。
良い緊張感と幸福感が現場に漂い、荒井さんと柄本さんの何気ない会話の端々に、この映画にとっての大切な何かがあるような気がして、さりげなく聞いているのが毎日の愉しみでした。
まだ仕上がりは見ていませんが、綺麗に撮っていただきましたので、実物より綺麗な私を見て欲しいです(笑)。お楽しみに。

(c)2019「火口のふたり」製作委員会

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む