Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

OKAMOTO’S オカモトショウのマンガビレッジ

心に沁みる名言の宝庫 子供が生まれたら読ませたい『鈴木先生』

隔週連載

第48回

20/10/26(月)

今回取り上げるのは、長谷川博己主演でドラマ化、劇場版映画もヒットした『鈴木先生』。教育学科出身の武富健治の代表作である『鈴木先生』は、中学校の教師である鈴木が生徒たちの心の問題と向き合う姿を描いた作品。現代の教育問題、学校をめぐる状況ともリンクした本作について、「まったく先生には向いてないけど、このマンガは大好き」というオカモトショウが語ります!

── 『鈴木先生』は中学教師の鈴木先生を主人公にした学校マンガ。かなりの異色作ですね。

オカモトショウ(以下、ショウ) そうですね。ホントに好きなマンガで、この連載でもいつか紹介したいと思ってたんです。初めて読んだのは、10代の終わりくらいかな。友達に教えてもらったのがきっかけで、その時点で完結してたんですけど、本当におもしろくて。何度か読み返してます。

── 舞台になっている緋桜山中学は、どこにでもありそうな普通の公立中学。2年生の担当で、国語を教える鈴木先生はクラスのなかで起きる問題に向き合い、生徒の心の問題を解決しようとする、というストーリーです。

ショウ “中学の先生と生徒の心の交流”というテーマって、どうしても『3年B組金八先生』っぽくなりがちじゃないですか。金八先生をディスってるわけではなくて、『鈴木先生』はまったく違う作品なんです。最初に感じたのは、「子供って、じつはもう大人だよね」ということ。大人が考えることはほとんど理解しているし、同じようなことで悩んだりしていて。そういう人間同士が1年間、同じクラスのなかで過ごさなくちゃいけないから、当然、いろんなことが起きるんですよ。エグい暴力事件とかではなくて、もっと日常レベルで、人間の深い部分が描かれているんですよね。

── 一見地味な出来事なんだけど、そのなかには人間の奥深い精神性が潜んでいると。

ショウ そうそう。マンガのなかで一番最初に起きる問題が、給食を食べるときに汚い発言をする男の子の話。同じ班の女の子が「こんな子と一緒に食べられない」って怒るんですよ。最初は鈴木先生も、ただ「やめないか」って言ってるだけなんだけど、「何か理由があるんじゃないか」と探っているうちに、男の子の気持ちがわかってきて。

男の子は目の前の女の子が給食を食べてるときに左手を机の上に出してないのがイヤで、わざと嫌な発言を繰り返していたと。人間同士のなかで起きることって、そういう小さい理由だったりするじゃないですか。「どうしてこの人は、こういう行動をせざるを得ないのか」と想像できるかどうかで、人間の深みが変わってくると思うし。

── 深い話ですね。鈴木先生も、生徒と接するなかで人として成長していくと。

ショウ “先生が教えて、生徒が教えられる”ということじゃないんですよね。先生は先に生まれて先導しているだけで、歩くのはあくまでも生徒自身っていう。そういう関係のなかで、鈴木先生が生徒に話す言葉もすごく良い。悩んでる生徒に対して、「壁を越えられなくても、みんなは“大丈夫だよ”って言ってくれる。でも、ここで頑張れば、普通以上になれるんだよ」と言うシーンがあるんですけど、本当にリアルな名言だと思います。人生のなかで“これ以上は無理”ということはいくらでもあるけど、そこでやれるかどうかで人間の器が決まるというか……。子供が生まれたら、ぜひ読ませたいですね(笑)。

── ただ、鈴木先生ってかなり変わってますよね。ずっと一人で生徒のことを考え続けていて、ときどきヤバイ心理状態になったり。

ショウ お気に入りの子を「天使だ」って崇めちゃったりね(笑)。要領も良くないし、決して仕事ができるタイプじゃないんだけど、鈴木先生のように自分なりの哲学を持っている先生はいいなと思います。実際に自分の担任だったらイヤかもしれないけど(笑)。

── 『鈴木先生』は絵柄も独特ですよね。ちょっと70年代の劇画っぽくて。

ショウ 確かに不思議ですよね。今の中学校の話なのに、なんで劇画タッチ?っていう(笑)。ただ、そこまで古くさいコマ割りではないし、ぜんぜん懐古主義ではないんですよね。音楽に例えると、「今っぽい作風なんだけど、真空管のアンプやビンテージのギターを使ってる」みたいな感じかも。鈴木先生が「もしかしたら大事なことを見落としてたかも」って悩んでるときの顔とか、すごいですけどね。楳図かずお先生の恐怖マンガみたいなんですけど、そのアンバランスさも良い。

── なるほど。ちなみにショウさんは、先生になりたいって思ったことはあるんですか?

ショウ まったくないし、向いてないです(笑)。でも、最近よく「教育って大事だな」って思うんです。自分が大人になって、仕事をするようになって、自分なりに物事を判断できるようになって。学生時代を振り返ってみると、「学校生活って、自分で判断する力を奪いかねないな」と思ったりするんです。自分にとって大切なこと、やりたいことを見失わないためにも、やっぱり教育は重要ですね。

──最後にOKAMOTO'Sの近況はいかがでしょうか?

ショウ 新曲のレコーディングをしていますね。バンドもそうだし、ソロの方も制作を進めています。なので、今後のOKAMOTO'Sとオカモトショウには期待していてください。楽曲制作のほかにもいろいろなことが決まってきているので、そちらも楽しみに待っていてくれればと思います。

(取材・構成=森朋之)

プロフィール

オカモトショウ(OKAMOTO’S)

1990年生まれ、ニューヨーク出身。 OKAMOTO'Sのボーカル担当。
2010年3月、「S×SW2010」に日本人男性としては最年少での出演を果たす。そのまま全米6都市を廻るツアーをおこない、5月に1st.アルバム『10'S』でデビュー。
その後もオーストラリアツアーや夏フェスなどに出演。11月には2nd.アルバム『オカモトズに夢中』、翌年9月には3rd.アルバム『欲望』と、ライブを続けながらもアルバムを立て続けにリリースする。
2017年、7thアルバム『NO MORE MUSIC』を発売し、中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを成功。2019年、8thアルバム『BOY』を発表し、7月には日本武道館でのワンマンライブを成功させる。その他、2018年よりNHK教育テレビ「ムジカ・ピッコリーノ」のベルカント号・船長、ジュリオとして出演中。

Label : Sony Music Labels
HP : http://www.okamotos.net/


新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む