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デビュー5周年の決意。俳優・永田崇人は戦うことを決してやめない

ぴあ

20/3/13(金) 20:00

永田崇人

舞台から映像へ。何度も自信を失った1年だった

俳優・永田崇人がデビュー5周年を迎える。「5周年」という数字に対し、当の本人はまだ受け止め切れていないような、少し不思議そうな表情を浮かべた。

「まだ5年かというのもあるし、もう5年かというのもある。まだ自分でも気持ちが定まらないんです」

初仕事は、大型テーマパーク『東京ワンピースタワー』内で上演されるライブ・エンターテインメントショー『ONE PIECE LIVE ATTRACTION』。そこで初代・ルフィ役を務めた。以降、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」の孤爪研磨役など舞台を中心に活躍してきた。

「年々、自分に対するハードルは上がってきています。昔はいい意味で怖いもの知らずだったというか、羽が生えたように自由だったんですけど、去年あたりからやっと地に足がつきはじめて、いろんなことに直面して。そのたびに自分ってダメダメだなと思うことが増えて、去年1年はすごく自分と向き合う1年になりました」

転機は、2019年に放送されたドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)。同作で、永田は横浜流星演じる由利匡平の仲間のひとりであるエンドー役を演じ、演劇ファン以外からも注目を集めるように。以降、舞台のみならず映像にも積極的に進出。秋にはドラマ『モトカレマニア』(フジテレビ系)で、学生時代にモデルを務めていたタウン誌の先輩モデルであり、憧れの高良健吾と共演。充実の1年となった。しかし、同時にそれは逆境の1年でもあった。

「去年1年は大きかったですね。新しい挑戦というか、舞台から離れてドラマに出させていただいたんですけど、やっぱり新しい畑に行くと打ちのめされることが多くて。何度も自信を失いました」

同じ俳優業といっても、映像と舞台では世界がまったく違う。実績も知名度もほとんどゼロからの再スタート。これまでのように馴染みのスタッフや仲の良い共演者に囲まれた場所ではないところで、イチから自分を知ってもらわなければいけなかった。

「本当にまたゼロからのスタートっていう感じでした。最初の頃はできるって強がっていたんです。でも実際にやってみたら現実は厳しくて。思った通りにいかないことの方が多かった。理想と現実はこんなにも違うんだって気持ち的にもすごく落ちちゃって、ひどいときは3日間、家から一歩も出ないこともありました」

胸に広がる不安と焦り。その結果、永田崇人は自分の芝居を見失った。

「一度、ずっと一緒にやってるマネージャーさんから、自分の芝居についてダメ出しをもらったんです。いちばん近くにいる人からいちばん厳しい言葉をもらって。今考えたらすごくありがたいことなんですけど、当時はそれが心に突き刺さって。いい芝居って何だろうって正解が見えなくなりました」

高く飛ぶためには深くしゃがめ。模索の末に辿り着いた学びの時間

何か新しいことに挑戦しようと思ったら、失敗や挫折は避けられない。同じ場所にとどまり続けたら、こんなに苦しい想いはしなくてすんだのかもしれない。だけど、永田崇人は挑戦の道を選んだ。なぜなら、もっと成長したいと思ったから――どん底を味わった永田崇人は、そこからもう一度這い上がる決意を固めた。

「健吾さんとか、ぐっち(同じ事務所の俳優・坂口涼太郎のこと)とか、周りにいる素敵な人たちの話を聞いていたら、みんないろんな作品を知っているんですよね。それに対して、僕はあまりにも知らなさすぎる。だから、まずはもっとインプットを増やそうって決めて、時間さえあれば映画や舞台を観たり、本を読むようにしたんです」

昔から、国語が大の苦手だった。それでも、村上春樹に川上未映子。周りから勧められた作家の小説を片っぱしから読みふけた。

「本を読むと、そこから自分が求めている言葉とか想いみたいなものをもらえているような感覚があって。昔は活字にすごい苦手意識があったんですけど、最近はさらっと読めるようになったというか。それまでは努力でしかなかったのが、娯楽として楽しめるようになったのは変化のひとつですね」

何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く。そんな名言を体現するように、映画館や劇場にも時間の許す限り足を運んだ。

「スマホさえあれば何でも楽しめる時代だからこそ、アナログの良さというか、足を運ぶことを大事にするのも、ひとつの勉強な気がして。1月は映画館で13本映画を観たんですよ。とにかくインプットの量を上げることに集中できた1ヶ月でした」

人間の感情を表現するのが、俳優の仕事。だからこそ、常に感性は磨き続けなければいけない。インプットを増やし、今まで働かせていなかったアンテナを動かすことで、自身の感度も格段に上がった。

「本を読んだり映画を観るのが俳優の修行として正しいのかどうかはわからないですけど、自分でこれをやってみようと思ったことをちゃんとやり切れた。その充実感が、完全に自信を失って下を向いていた自分のマインドをもう一度上げてくれた気がします」

少しずつ見えてきた変化の兆し。僕は人に恵まれているんだなと思った

正攻法なんて誰にもわからない。突破口がどこにあるかなんて誰も教えてくれない。そんな袋小路の中で、それでもあがくことだけはやめなかった。ジタバタともがき続けたその両手が、上昇気流を生む。2020年に入り、ドラマ『ケイジとケンジ』(テレビ朝日系)の第7話にゲスト出演。アウェーの現場で思い出したのは、お芝居の楽しさだった。

「僕はいろいろ考えすぎると、とりあえず平均点を出そうとする悪い癖があって。でも、平均点のお芝居をやるだけなら、自分がやる意味がない。だから、失敗しても恥をかいてもいいから自分がやりたいことを全部やってみようと思ってやってみたらすごく楽しかった。ずっと自分を押し込めていた不安や恐怖を外せたというか、久々にお芝居をやっていて『今、やれるぞ』と思えた瞬間でした」

さらに、3月2日には初主演ドラマ『100文字アイデアをドラマにした!』(テレビ東京)がオンエア。上裸にサスペンダーというコミカルなシーンから、初めてのキスシーンまで体当たりで演じきった。

「とにかく自分は全力でぶつかろうって。それだけ考えていたので、すごく集中してやれました」

同作で演じたのは、永田崇人本人。「サブスク彼氏」というテーマを表す自らの台詞に、永田は強い共感を覚えた。

「『取っ替え引っ替えされて割り切れるわけねえだろ』って言われて、『割り切るしかないでしょ。俺ら取っ替え引っ替えされて当たり前の存在なんだ』『どんなに頑張っても、結局代役は用意されるんだよ』って言い返すんですけど。この言葉がすごく自分の中で響いて。演じている瞬間も、自分をさらけ出せたというか、今まで溜め込んだいろんな鬱憤をあそこで全部出せた感じはちょっとありました」

停滞していた自分の何かが、少しずつ動きはじめた2020年。その中で永田崇人が改めて噛みしめるのは、人と人とのつながりの大切さだ。

「『モトカレマニア』の脚本の坪田ふみさんは、僕がその前に出演した『スター☆コンチェルト〜オレとキミのアイドル道〜』というドラマでお世話になった方だったし、『100文字アイデアをドラマにした!』の監督の芝崎弘記さんも、以前、『アヤメくんののんびり肉食日誌』という映画でご一緒した方で。そうやって前に何かしら接点があった方からもう一度声をかけてもらえたり、一緒にお仕事ができるのは本当にありがたいなって。僕は人に恵まれているんだなって改めて実感しました」

人との縁を次のチャンスに変えられるかはその人次第だ。中途半端な仕事をしている人間と、誰もまた一緒に作品をつくりたいなんて思わない。どんなに未熟でも一生懸命やっているからこそ、評価してくれる人がいる。今の自分を救ってくれるのは、いつだって頑張ってきた過去の自分なのだ。

「ぐっちが言ってました、『ちゃんと見ている人がいるから』って。本当にそうだなと思って。ぐっちはいつもすごくいい言葉をくれるんですよ。この間も『絶対に満足しちゃダメだから。何が正解かわからないからこそ追い続けよう』って言ってくれて。それはすごく勇気をもらった言葉でした」

正解なんてわからなくていい。平均点なんて狙わなくていい。とにかく今できることを全力でやる。それが、迷いの果てに見つけた永田崇人の戦い方だ。

いつか憧れの健吾さんを超えたい。26歳の胸に宿る野心と決意

さらに今年6月末からは音楽劇『プラネタリウムのふたご』のW主演が決まっている。約1年ぶりとなる舞台を控え、永田崇人は咲いたばかりの朝顔のような笑顔を見せた。

「たぶんね、最初は戸惑うと思います。『舞台って、どうやったっけ?』みたいな(笑)。やっぱり映像と舞台では使う引き出しがまた違うので、きっと葛藤することになるんだろうなと思います」

デビュー以来、ほとんど途切れることなく舞台に立ち続けてきた。1年というブランクを経て改めて感じるのは、やっぱり自分は舞台が好きだということだ。

「2時間ずっとその役で作品の世界にいると、自分という存在がちょっと遠くなっていく感じがするんですよ。その感覚がすごく好きで。正直に言うと、僕はカメラの前に立つとまだ緊張するんですけど、舞台だと全然緊張しない。僕は(『はじこい』で共演した)中村倫也さんの役ごとにがらりと豹変できるお芝居が大好きで、すごいなって尊敬しているんですけど、舞台なら自分も倫也さんみたいにできる気がするんです」

俳優・永田崇人の出発点は、舞台。その体には、舞台俳優のDNAが染みついている。

「目の前で人が発している言葉のパワーは、画面を通すと通さないじゃわけが違う。お芝居の根本は絶対に舞台スタートじゃないですか。カメラなんて昔はあるわけないし。そう考えると、やっぱり舞台に立つのは俳優にとって必要なこと。欲張りかもしれないけど、舞台と映像、両方の良さがあるので、両方やっていきたいんです」

試行錯誤の1年を経て、永田崇人はまた本来の自分らしさを取り戻しつつある。人なつっこくて、行き当たりばったりで、たとえどれだけ落ち込んでも逃げずに立ち向かい続ける永田崇人を。

「結構落ち込みやすいですよ、俺。でも最近はメンタルが強くなりましたね。モヤモヤしていたものがクリアになったというか。どんどんいろんなことを経験して、ちゃんと失敗しなきゃいけないなって。だから、今はすごくいいマインドです」

デビューは21歳。決して早いスタートではなかった。そこから5年。何があっても踏ん張り続けたから、今がある。

「この仕事を始めるのが遅かったことへのコンプレックスはずっとあって。同い年で10年やっている人とかザラにいる世界なので、それはやっぱり大きな差だと思うんですよ。時々、関東に生まれなかったことを恨むぐらい(笑)。でも、その分、早くからこの仕事をしている人が知らないことを知っているんだと思うし。そういうハングリーさが自分のエンジンになっているんだと思えるようになりました」

永田崇人は、決して上昇志向を隠さない。「売れたいという想いは結構強い」と率直に口にする。

「自分にとって憧れは、やっぱり健吾さん。『モトカレマニア』が終わってからもちょこちょこお会いさせてもらっているんですけど、やっぱり自分はいつまでもファンなので、どっかで緊張しちゃうんです(照)。ただ、憧れであることは一生変わらないけれど、いつか超えたいなと思うようになりました。それを目標に頑張りたいというか。それぐらい気合いを入れてやらないとダメだなって気づいたんです」

応援の力がないと僕は弱い。5周年の節目で噛みしめるファンへの感謝

戦い続けたデビュー5年目。ボロボロになりながら、それでも決して心が折れなかったのは、応援してくれる人たちがいたから。ギリギリまで追い込まれた永田崇人に、いつもエネルギーをくれたのは、ファンの声だった。

「ファンのみなさんにね、僕、本当に支えてもらっているんです」

まるで大切な人を紹介するような口ぶりで、そう永田崇人は言う。通称“タカトモ”と呼ばれるファンの存在こそが、永田崇人の活力源。逆境の1年だったからこそ、改めてその大切さを再確認した。2016年に開催して以来、毎年行っているファンイベント『タカトーク』も今年8月に開催する。

「『タカトーク』はいつもファンの方に感謝の気持ちを直接伝えたいという気持ちでやっているんですけど、今年はもっともっと深い気持ちまで伝えられる場にしたいなと思っています。応援してくださる人たちの力がないと、僕は弱いんで。みんながいないとやっていけないというのが素直な気持ち。これからも応援よろしくお願いしますという言葉しか言えないのがもどかしいんですけど、本当に助けてもらっています」

そう切実な口調で結んでから、最後はくすぐったそうにはにかんだ。

永田崇人、26歳。まだ目指している場所は、ずっと遠い。進めば進むほど、その道のりの果てしなさを思い知るばかりだ。それでも絶対にあきらめない。いつかきっと夢見た場所に立っている自分を信じて。永田崇人は6年目も戦い続ける。

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(撮影/高橋那月、取材・文/横川良明)

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