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柳下毅一郎&田野辺尚人が『テッド・バンディ』を語る 連続殺人鬼の動機からそのカリスマ性まで解説

リアルサウンド

19/11/19(火) 20:38

 12月20日公開の映画『テッド・バンディ』の日本最速試写が11月18日に渋谷のユーロライブにて行われ、上映後に映画評論家・特殊翻訳家の柳下毅一郎、『別冊映画秘宝』編集長の田野辺尚人が登壇してトークショーが開催された。

参考:場面写真はこちらから

 バンディの恋人の視点から物語が進むため、殺人現場の詳細が出てこない本作について、柳下は、「テッド・バンディは犯行が巧妙だったので、特にフロリダなど初期の現場では物証が何もない。見つかっていない死体がいくつもある」「映画を観ていると本当にバンディが犯人なのか分からなくなるけれど、当時はあやふやな目撃情報しかなかった。だからこそ真顔で『自分はやっていない』と言われると『あ、そうなのかな?』と思ってしまう。この映画も殺人現場を見せないという部分で、観客に彼は冤罪なのではないか?という印象を持たせるような作りにしている」と考察。

 続いて田野辺は、「この映画の原作は、バンディの恋人だったエリザベス・クレプファーの自伝。恋人側から普段のバンディの姿を描いているのがすごく面白いところ」と本作の魅力を語った。

 テッド・バンディの史実に関して柳下は、「1974年の犯行が最初の殺しだとされているけれど、それ以前にもやっていたという説もある。具体的に証明されたことはないですが、一般論として殺人鬼は犯罪を重ねれば重ねていくほど手口が洗練されていく。けれど、テッド・バンディは最初の事件からあまりにも手口が洗練され過ぎていて、その前があるのでは無いかと憶測されている」と解説する。

 頭が良く、容姿も端麗なバンディが連続殺人に手を染めた理由については「1973年の夏、バンディは数年前に自分のことを『成熟していない』という理由で振ったステファニーという女性と再会し、再び付き合うようになる。久々に再会したバンディが自信に満ち溢れている姿を見て、彼女は彼との婚約にまで至るけれど、突然バンディは彼女を振ってしまう」「その後からバンディの殺人が始まる。彼の被害者は、みんなタイプが同じで、長い髪を真ん中で分けている、ステファニーとそっくりな女子ばかり。彼女を振った時と同じような感覚で、バンディは犠牲者を選んで殺し続けたと言われている。リリー・コリンズの演じたリズも同じタイプの見た目ですよね」と動機を考える。

 また、バンディのカリスマ性についても柳下は、「裁判官に判決を言い渡された後、裁判官に『身体に気を付けて』と言われるシーンが本編にもあるけれど、あれは本当にあった話。死刑判決を下した後でさえも、こんなセリフを人に言わせてしまう、謎の魅力があった」と振り返る。

 さらに、2人は本作の監督であるジョー・バリンジャーについて、「『パラダイス・ロスト』では状況証拠だけで犯人に仕立て上げられてしまった青年3人組が、死刑判決までいったところにバリンジャー監督は斬り込んでいった。この青年たちが冤罪ではないかと思う人が増えて、ピーター・ジャクソン監督なども参加した釈放運動が盛り上がったのはバリンジャー監督のおかげといっても良い」とその影響力の大きさを語り合った。

 最後に、テッド・バンディが残虐な殺人鬼として有名になった背景について、柳下は「この頃はまだFBIが連続殺人の捜査をあまりしていなかったので、州を跨いだ事件という共通のデータベースがなかった。連携が全くないままだったし、当然ながらDNA鑑定も存在しなかった。70年代という時期だからこそ、こういう犯人が生まれてしまったと言える」と分析した。 (文=リアルサウンド編集部)

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