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Jvcki Wai、GIRIBOY、Keith Ape……企画力やサウンドで個性発揮した韓国ヒップホップ新譜6選

リアルサウンド

19/3/17(日) 8:00

 2018年末から2019年初頭にかけての韓国ヒップホップシーンは、20代前半の新鋭ラッパーたちによる圧倒的勝利に終わった。総論としては高揚感のあるサウンドとシンギングラップが続出。似たような系統のトラックが並ぶ中、各アーティストは様々なアプローチで独自の魅力を引き出した。本稿ではそれらの中から特に企画力やサウンドで個性を発揮したものからセレクトした。

 まずはこの冬の韓国ヒップホップでNo.1ヒットとなった「Dding」から。大物ラッパーのSwings率いるヒップホップレーベル<Indigo Music>と、ソーシャルメディアコンテンツ制作会社・Dingoによるコラボ企画として生まれた楽曲だ。新世代ラッパーが集結した同レーベルは2017年の設立以降すさまじい勢いで新譜をリリースし続け、そのいずれも成功を遂げている。そんな<Indigo Music>とDingoの両社は2018年7月に企画第1弾として「flex」をリリースし、チャート9位に上るほどの健闘をした。リリースから半年でYouTubeの再生回数が2000万回に到達したことからも、その人気の高さがうかがえる。同じ企画の第2弾として年明けにリリースされた「Dding」は、大衆的な知名度の低い新鋭ラッパーたちによるヒップホップトラックとしては異例のチャート1位を獲得。Jvcki Wai特有の鋭い声で「モリガティン(訳:頭がガンッ)」と繰り返されるフックは、一度聴いたら耳から離れない。

[MV] Jvcki Wai,ヨンビ,Osshun Gum,ハン·ヨハン – he (Prod.By ギリボーイ)[Official Video]

 前述の2曲をプロデュースしたGIRIBOYのソロEP『Thank You』に収録されている「Vv2」は、ジャジーなビートが印象的なコンピレーショントラックだ。同じくSwings率いるレーベル<Just Music>の中心人物でもあるGIRIBOYは、ラッパーとして、そしてプロデューサーとして、時代の先を行くオリジナリティを武器にトレンドを引っ張ってきている。本トラックには、そんな彼が結成した“宇宙飛行”と呼ばれるヒップホップクルーから3名が参加。スロービートに乗せられたKid Milliのスキルフルなラップがとりわけ印象的だ。いずれのトラックにも共通することだが、GIRIBOYはキャッチーなリフを作るのが本当にうまい。

[MV] GIRIBOY(기리보이) _ vv 2 (Feat. Kid Milli, ChoiLB(최엘비), Kim Seungmin(김승민), Hayake)

 KOHHが参加した「It G Ma」によって、日本のヒップホップファンの間でもその名が知られるKeith Ape。自身の名を冠した初のEP『Born Again』から「My Wrist Clearer Than Water!」のMVを新たに公開するなど、久々に活発な姿を見せた。同EPには「It G Ma」で世界から注目を浴びたことへの戸惑いを乗り越え、本来の自分に生まれ変わるという思いが込められているという。活動拠点をアメリカに置く彼は、韓国国内の同世代ラッパーたちとはトレンドを共にせず、本トラックでもサウンド、ラップスタイル、映像の世界観すべての面で自分らしい路線をブレずに貫いている。

Keith Ape – My Wrist Clearer Than Water! (Official Video)

 こちらも久々のお目見えとなったpunchnelloの作品から。実に2年ぶり(といっても本人はまだ21歳だが)の新作となったシングル曲「Absinthe」は突き抜けたハードコアトラックだ。幻覚症状を引き起こすとして製造・販売が禁止されていたお酒のアブサンを曲名に掲げ、MVの中で銃を手にしながら激しくシャウトする。このような曲がメジャークラスのレーベルから出てくるのが、韓国ヒップホップのおもしろさのひとつと言えよう。この直後にリリースされたEP『ordinary.』は軽快なラテンビートからしっとりしたメロウチューンまでバラエティ豊かに構成され、punchnelloの器用さが堪能できる。

[MV] punchnello(펀치넬로) _ Absinthe (Prod. by 0channel, 2xxx!)

 昨年から動きが活発なPENOMECOの新曲「No.5(Feat. Crush)」は大衆性の高いサウンドで勝負。ZICO、DEANなどのスターたちと活動を共にしながらも先手を取られ気味だったが、ここに来て巻き返しを図り始めた。テレビ出演や精力的なリリース活動を通して着実に結果を残している。年末にリリースした1st EP『Garden』はオシャレで先鋭的なビートで統一。中でもPENOMECO最大の持ち味である尖った声質と滑舌の良さがよく生かされたこの曲は、爽やかで躍動感あふれるビートが心地よくて思わず身体を揺らしてしまう。盟友Crushの伸びやかな歌声もサウンドとの相性が抜群だ。

PENOMECO 페노메코 ‘No.5 (Feat. Crush)’ MV

 最後にラップサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY』で誕生した曲をご紹介。韓国で絶大な人気を誇る同番組は、2018年に早くも7度目のシーズンを迎えた。その常連参加者であるSUPERBEEは、今回1万人を超える応募者の中からセミファイナル(TOP 6)にまで残るという健闘ぶり。先日は自主レーベルの設立を発表し、期待の新人を立て続けに迎え入れて話題をかっさらうなど経営者としてもなかなかの手腕だ。そんな彼の最新シングルは、番組内のミッションで披露して人気を博した「Heu !」のフルバージョン。ノリの良いビートに乗せて何度も反復される「heu!」や「yeah yeah」の声は中毒性たっぷりで、ライブで一緒に盛り上がりたくなる。

수퍼비 (SUPERBEE) – “Heu !” (Official Music Video)

 以上、この冬を代表する韓国ヒップホップの中から6曲をご紹介した。ここに登場した総勢13名のアーティストのうち、「Dding」に参加した19歳のOsshun Gumを筆頭に9名がアンダー25だ。上の世代よりもトレンドに追従することへの意欲が高く、さらに制作スピードも早いため、あっという間に若い世代が支配力を広げていった。この傾向がいつまで続くのか、目が離せない。


■鳥居咲子
韓国ヒップホップ・キュレーター。ライブ主催、記事執筆、メディア出演、楽曲リリースのコーディネートなど韓国ヒップホップにおいて多方面に活躍中。著書に『ヒップホップコリア』。
運営サイト「BLOOMINT MUSIC」/ Twitter

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