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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

アイドル三つ巴全盛期のきっかけを作ったのは?

毎週連載

第128回

前回の後半で少し話した中森明菜さんの作品で超ヤバいアルバムがあるんだ。『不思議』『CRIMSON』っていう2枚なんだけど、まず『不思議』のほうはボーカルの音が「ここまでちっちゃくて良いのか」っていうくらい小さいの。さらに音はイギリスのニューウェーブのレーベル、4ADみたいな音でコクトー・ツインズみたいになっちゃってる。たぶん、何も言わずに音を鳴らしたら「これ、コクトー・ツインズ?」って思っちゃうくらい、アイドルには相応しくないような音なの。

その次に出た『CRIMSON』ではボーカルの音は少し上がるんだけど、やっぱり音も超すごい。しかも、シングルカットもない実験的なアルバムなのに2枚とも売れたらしいよ。

松田聖子さん、中森明菜さんの後、今度は小泉今日子さんが出てきたでしょ。あえてキョンキョンと呼ばせてもらうけど、この三つ巴が日本のアイドル全盛期を一番盛り上げてさ、日本の音楽、芸能、カルチャーに大きな影響を及ぼしていったと僕は思ってる。

もちろん、僕はキョンキョンも大好き。有名なドラマで『生徒諸君!』っていうのがあるけど、僕個人的には田村正和さんと一緒に出てた『パパとなっちゃん』が好きで、後にDVD BOXも買っちゃった。しかも、『パパとなっちゃん』にはダウンタウンの浜田さんも出ていたりして、キャスティングも最高なんだけど、ドラマの最中にセリフ噛んじゃったりしてるのもそのまま活かしたりして、この荒っぽい編集も興味深く観てる。今だったら完全NGなんだけど、そういう細かいことよりも、空気とか生き生きとした雰囲気を優先させてる感じで観ていて楽しいんだよね。

そして、この『パパとなっちゃん』の主題歌が『あなたに会えてよかった』って曲なんだけど、これは小林武史さんによるもの。まだミスチルで名を馳せる前の仕事なんだけど、あの切なくて、でもキラキラしてるようなメロディ……本当に素晴らしいよね。

アイドルソングを軽く聴く人もいるかもしれないけど、でも、こうやてきちんと音楽目線で掘り下げていくといろんな作家陣が関わっていて、その深さ、影響力、変遷がわかって面白いよ、本当に。

おそらく日本の大衆音楽、音楽史を辿っていく中で、大きく変えたのってはっぴいえんど関連の人たちじゃないかと思う。それまでの日本の音楽も良いものはいっぱいあったけど、いわゆるアイドルに良質の音楽を提供するっていうのは、はっぴいえんどが先駆けだったんじゃないかな。海外の音楽もちゃんと取り入れて曲を作ったり、あるいは、いしだあゆみさんのバックで演奏したりとかも含めて。それが中森明菜さんのようなアンチ的表現を生み、次にはまた松田聖子さん、中森明菜さんの路線とも違うニューウェーブ的なキョンキョンの登場にも繋がったんじゃないかなと思う。

80年代アイドルのレコードを掘り下げていくと、日本の音楽のすごさがわかります

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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