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KREVA主催『908 FESTIVAL ONLINE 2020』 初のオンライン開催で示した一つの高い“基準”

リアルサウンド

20/9/16(水) 22:00

 コロナ禍をうけ、様々なライブやフェスがオンラインにて開催されている2020年。様々なイベント主催者やアーティストが新しい状況への挑戦を見せているが、その中でもオンラインフェスというものの、一つの高い“基準”を見せられた。そういう実感がKREVA主催の音楽のお祭り、『908 FESTIVAL ONLINE 2020』にあった。

 2012年よりスタートし、今年通算9回目となる『908 FESTIVAL』。初のオンライン開催となった今年は、9月8日、ぴあアリーナMMで行われた。

 オープニングは出演者が一列に並んだ場面からスタート。全身純白の衣装に身を包んだKREVAがレッドカーペットの上を進むと、ステージではKREBandメンバーの柿崎洋一郎(Key)、白根佳尚(Dr)、近田潔人(Gt)、大神田智彦(Ba)、熊井吾郎(MPC+DJ)、SONOMI(Cho)がメロウなアンサンブルで迎える。そのまま「イッサイガッサイ 〜2019 ver.〜」を歌い始め、曲中では三浦大知、AKLO、ZORN、MIYAVI、PUNPEE、tofubeats、JQ from Nulbarichとこの日の出演陣をステージに呼び込む。

 この“絵”が、『908 FESTIVAL』の一つの象徴と言ってもいいだろう。ホストであるKREVAが中心になり、ここでしか観られないコラボレーションの数々が繰り広げられる。それをひとつなぎのショーとして展開する。そういう見どころたっぷりのステージだ。

 まずは一番手を任されたJQがKREBandをバックに「Sweet and Sour」、「Look Up」と伸びやかな歌声を響かせると、続けてはステージに戻ってきたKREVAと共に「One feat. JQ from Nulbarich」を歌う。パフォーマンスを終えた2人はトークブースに移動し『908 FESTIVAL 2018』での共演がきっかけで生まれたこの曲の制作の経緯を語り合った。

 続いて登場したtofubeatsはラップトップのスタイルで「LONELY NIGHTS」を高らかに歌い上げライブをスタート。「みなさん、手を挙げれますか?」と画面越しに呼びかけたtofubeatsは「Virtual Luv」でVaVaを呼び込み、さらに公開されたばかりの新曲「RUN REMIX feat. KREVA & VaVa」でKREVAがステージに登場し3人の力強いコンビネーションを見せる。「Too Many Girls feat. KREVA」はKREBandの生演奏によるバンドセットのアレンジでの披露だ。

 PUNPEEは原島“ど真ん中”宙芳とDJ ZAIによる4台のターンテーブルをバックに従えたスタイルで登場。「Renaissance」から「お隣さんより凡人」を続け、この日のステージへの思いやKREVAへのリスペクトを込めたフリースタイルのラップを披露する。見せ場になったのはフェス出演のきっかけになったともいう新作『The Sofakingdom』収録の「夢追人 feat. KREVA」だ。アリーナ2階席を歩きながらPUNPEEがラップするバースからカメラが切り替わり1階からKREVAが登場するというMVを彷彿とさせるドラマティックな演出も見せた。

 トークスペースではtofubeats、PUNPEEと3人が並び、楽曲制作の経緯や、トラックメイキングとラップの両方を一人でやるアーティストならではの判断基準、tofubeatsが始めたYouTube映像企画「THREE THE HARDWARE」にも触れつつ使っている機材やソフトウェアの話など、作り手同士のディープな会話を繰り広げる。

 MIYAVIはドラマーのBOBOと2人というミニマムな編成ながら、「Flashback」から代名詞のスラップギターで魅了し、飛び交うレーザー照明の中でド派手なパフォーマンスを見せる。音楽家の現状を視聴者に熱く語りかけたMCに続けて、ステージに赤と黒の衣装に身を包んだKREVAと三浦大知が登場し、「Rain Dance feat. KREVA, 三浦大知」を披露。重量感たっぷりのビートにヘヴィなギターリフ、炎を背後にしたシャウトが織り成す迫力の瞬間を見せた。

 この曲に込めた思いやアーティストとしての責任感を語り合う3人のトークに続けては、AKLOとZORNのラッパー2人が登場。2018年にジョイントツアー『A to Z TOUR 2018』を開催し、コロナウイルス感染拡大によって中止となったが今年3月にも『A to Z 2020』を予定するなど共演の機会を重ねてきた両者。「Fuego」などスキルたっぷりのラップを次々と見せ「炎の絵文字でチャットを燃やし尽くしてほしい」と告げた2人の声通りコメント欄には絵文字が並ぶ。KREVAを呼び込んだ「RGTO (REMIX)AKLO,ZORN,KREVA」に続いてはトークスペースに移動し、8月に公開されたばかりのZORN「One Mic feat. KREVA」についてスタジオで制作に参加したAKLOを加えてリリックの成り立ちを解説してから曲を披露。これもオンラインならではの演出だ。

 ステージを降りた2人が紹介し、続けては三浦大知が登場し、KREBandとダンサーを従え「Yours」からライブをスタート。静と動が交錯するような迫真のダンスと歌を披露する。SONOMIがコーラスを担当した「Blizzard」から「(RE) PLAY」と激しくアグレッシブな楽曲で汗だくになると「世界」では一転してディープな歌声を響かせ、圧倒的なパフォーマンスで魅了する。これまで『908 FESTIVAL』で様々なコラボを行ってきたKREVAとは、今回は「Your Love feat.KREVA」で共演。盟友としての関係性を感じさせる歌とラップのコンビネーションを見せ、主催者へとバトンを渡した。

 そして主役のKREVAは、この日に配信されたバラードナンバー「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」からライブをスタート。さらに「基準 ~2019 Ver.~」「ストロングスタイル ~2019 Ver.~」とアグレッシブな楽曲を重ねて熱気を生み出すと、MIYAVIをステージに呼び込み「STRONG MIYAVI vs KREVA」で火花が散るようなセッションを見せる。そしてこの日のクライマックスとも言える一幕となったのが、スペシャルゲストに石川さゆりを迎え、MIYAVIと三者で披露した「火事と喧嘩は江戸の華 feat. KREVA, MIYAVI」。今年2月にリリースされた石川さゆりのアルバム『粋~Iki~』の収録曲で、江戸の粋をラップで表現したという異色のナンバーだ。着物姿の石川さゆりを中心にMIYAVIとKREVAが並ぶ絵だけで相当のインパクトがある。

 石川さゆりに長く活動を続けながら新しいチャレンジに乗り出す秘訣を聞く一幕を経て、続いては「想い出の向こう側 feat. AKLO」を披露。一つの場所にとどまらず変わり続ける表現者としての意志を示す。終盤はメロウな「瞬間speechless」から、バンドメンバーを紹介し、この日に誕生日を迎えたSONOMIとのデュエットで「ひとりじゃないのよ feat. SONOMI」を歌い上げ、「音色 ~2019 Ver.~」でステージを締めくくった。

 ライブを終えたKREVAはトークスペースに移動し、『908 FESTIVAL』のもう一人の立役者でもある三浦大知とステージを振り返り、二人で新曲を作っていることを告げる。コロナ禍でライブがままならない状況を受け「また会おう」という思いを恋愛のシチュエーションに喩えた「Fall in Love Again feat. 三浦大知」という曲だ。生配信のみのスペシャルパフォーマンスとして公開されたこの曲は、二人の歌声が情感たっぷりに絡み合う、エモーショナルでありつつライブでグッとテンションをあげるような一曲だ。最後には出演者全員がステージに揃い、KREVAが「また必ず会いましょう」と告げてフェスは全て終了した。

 終了後には出演アーティストたちが打ち上げスペースに移動し、乾杯し歓談しながらライブを振り返る様子もたっぷりと配信。こうしたスペシャル感もオンラインフェスならではの演出だろう。当日の視聴者数は1万人超。そして、この日のライブの模様は9月22日21時08分まで一部を除きアーカイブ配信される。

 結局、全部含めると5時間近くの内容。MIYAVIもステージで言っていたが、まさに「カロリーが高い」フェスというのが本音の感想だ。

 もちろん、リアルなライブをオンラインで代替するのは難しい。会場に集ったお客さんの熱気がさらに一体感を生み出し、それが特別なフェス体験としての興奮を生み出すのは否めない。それでも、コメントを通したコミュニケーションや充実したトークパートなど、この形ならではの挑戦もそこかしこにあった。

 大きな変化を余儀なくされている今だからこそ、新しい形の「音楽のお祭り」。今回の『908 FESTIVAL ONLINE 2020』には、そういう、いわば時代のドキュメントとしての意味も大きく刻み込まれていたと思う。

『908 FESTIVAL ONLINE 2020』アーカイブ配信の詳細はこちら
KREVAオフィシャルサイト

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