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『銀魂』坂田銀時はジャンプらしくない主人公? ギャグとシリアス、ギャップの魅力

リアルサウンド

20/10/8(木) 8:00

 2021年1月8日に完全新作にしてアニメ版ラストとなる『銀魂 THE FINAL』が公開される。それに先駆けて、10月7日からは数あるシリーズより『よりぬき銀魂さん ポロリ篇』(テレビ東京系)が放送。再び『銀魂』界隈が盛り上がりを見せている。

 『銀魂』は2004年から連載がスタートした、誰もが知る作品。アニメはもちろん、映画、実写映画、Web、ゲーム、小説、キャラクターズブック……と数え切れないほどの展開がされており、老若男女問わず人気を博した作品だ。約15年半に及んだ連載は、惜しまれつつも2019年6月20日を持って完結。SNS上には原作者・空知英秋に対する労いと感謝の声が多く挙がっていた。多くの人に愛された作品だけに、毎回キャラクター人気投票は『週刊少年ジャンプ』上でも大いに盛り上がっていたように感じる。その不動の1位は、主人公・坂田銀時。本稿では、その坂田銀時の魅力を探ってみたい。

 天然パーマの銀髪がトレードマークの坂田銀時は、何でも屋「万事屋銀ちゃん」を営んでいる侍。いつも気が抜けた顔をしており、真選組副長・土方十四郎からは「死んだ魚のような目」と言われたこともある。かつては攘夷戦争に参加し、伝説の攘夷志士「白夜叉」と呼ばれていたこともあったが、今ではマイペースな怠け者が板についてしまっている。実を言えば筆者は連載当初、「ほぼプータローのような生活をし、ダラダラと糖分ばかりを摂取しているこの男が『週刊少年ジャンプ』に連載されている漫画の主人公なのか……」と思ったことすらある。だが、話が進んでいくと見事な『週刊少年ジャンプ』の主人公になっていったのだから、驚きだ。

 そんな銀時は、攘夷志士だった頃、恩師である吉田松陽との過去、「スナックお登勢」の2階に「万事屋銀ちゃん」を開いた理由など、過去を紐解けばキリがないほど魅力が出てくる。その中で1つ挙げるとすれば、「普段と本気になった時のギャップ」ではないだろうか。そもそも『銀魂』がこれだけ多くの人に愛されてきた理由は、ギャグパートとシリアスパートのメリハリだろう。銀時は、そんな本作を象徴するキャラクターだ。いつもふざけていたり、無気力さが全面に出たりしているが、シリアスパートの長編に入った時はとにかく煌めく。そして、かつて「白夜叉」と呼ばれていただけあって戦いにおいても強い。痛手を負うことは多いものの、最後は必ず相手を討ち、読者を魅了し続けてきた。しかも、その動力源となっているのが「情」というのがたまらない。

 例えば、「真選組動乱篇」で鬼兵隊のNo.2・河上万斉とやりあった時。万斉に「貴様は何がために戦う! 何がために命をかける!」と問われた銀時は、こう答えている。

今も昔も俺の護るべきもんは何一つ

変わっちゃいねェェ!!

 このシーンには、これまでを振り返るようなコマが挿入されているのだが、そこには万事屋メンバーやお妙、真選組メンバーなどを回想するようなカットが散りばめられている。そこから、銀時にとっての「護るべきもん」とは、仲間たちを指しているのではないかと推測できる。

 こうして常に仲間のために戦ってきた銀時だが、シリアスパートの最後にはいつのまにか飄々とした様子に戻っているのも“らしい”。読者からも人気が高く、映画化、実写映画化にもなった「紅桜篇」でもそうだ。瀕死の状態になりながらも桂小太郎と背を合わせつつ、高杉晋助が手を組んだ天人たちを斬り倒している真っ最中。高杉を止められなかった桂が「国どころか 友一人変えることもままならんわ!」と呼びかけると、「ヅラぁ お前に友達なんていたのか!? そいつぁ勘違いだ!」とニヤリと応える。そして、桂と剣を合わせながら「俺達ゃ次会った時は仲間もクソも関係ねェ! 全力でてめーをぶった斬る!!」と高杉に宣戦布告し、パラシュートで船を脱出。落下している最中、桂が松下村塾の教本を取り出し、感慨深く過去と今に思いを馳せる。そして、「銀時…お前も覚えているか コイツ(教本)を」問うと、銀時はしれっとこう述べた。

ああ

ラーメンこぼして捨てた

 当時、「育ての親とも言える松陽や桂・高杉などの仲間たちとの絆とも言えるべき教本を捨てられる訳は無い」という意見、「教本がなくても教わったことは魂に刻まれている」という意見、様々な考察が飛び交っていたことを覚えている。真相は分からないが、いずれにせよ最後の最後で桂の問いかけをのらりくらりと交わす姿は、なんとも銀時らしいのではないだろうか。

 難しく考えない単純な男に見えて、想像以上の過去を背負っている「坂田銀時」という男は、ストレートなメッセージに溢れつつも想像の余地が十分にある『銀魂』という作品を反映した、紛うことなき主人公であったのではないだろうか。連載が終わってもなお、人々を魅了し続ける『銀魂』の最後のアニメ化が待ち遠しい。

■書籍情報
『銀魂』(ジャンプ・コミックス)77巻完結
著者:空知英秋
出版社:集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/list/gintama.html

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