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『さよなら絶望先生』シリーズ、キャラと楽曲の数だけある魅力 サブスク解禁を機に色褪せない各曲を紹介

リアルサウンド

20/6/24(水) 6:00

 6月17日にアニメ『かくしごと』×大槻ケンヂのコラボシングル『愛がゆえゆえ/あれから(絶望少女達2020)』がリリース。シングルには大槻ケンヂと絶望少女達による約10年ぶりの新曲「あれから(絶望少女達2020)」が収録された他、リリースに合わせてアニメ『さよなら絶望先生』シリーズの関連楽曲が一斉にサブスク解禁となり、久米田康治作品ファンの間で大きな話題を集めている。作詞家の只野菜摘をはじめ、大槻ケンヂ、特撮、ROLLYなど多彩なクリエイターを巻き込みながら、数多くの名曲を生み出したアニメ『さよなら絶望先生』シリーズの音楽の魅力とは? 本稿では、サブスク解禁された楽曲から「今だからこそ聴いて欲しい曲」を紹介する。

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■懐かしい人からの手紙を受け取った、むず痒さと高揚感

 アニメ『さよなら絶望先生』は、2005年から2012年まで講談社『週刊少年マガジン』で連載された久米田康司による漫画を原作に、2007年7月から2009年9月まで3期にわたってテレビ放送され、OVAも2作制作された人気シリーズ。自殺願望のある高校教師=糸色望が、超個性的な女生徒たちに翻弄されていく物語で、主人公の望を声優・神谷浩史が演じたほか、女生徒役で野中藍、沢城みゆき、井上麻里奈、小林ゆう、後藤邑子、新谷良子、真田アサミ、谷井あすか、松来未祐といった実力派が出演。彼女達がユニット「絶望少女達」として歌った楽曲やキャラクターソングが話題を集め、その人気と楽曲のクオリティーの高さから、日比谷野外大音楽堂などでワンマンライブも開催された。

 絶望少女達が10年ぶりに再集結してレコーディングされた「あれから(絶望少女達2020)」は、絶叫とメタルサウンドで激しく始まる『さよなら絶望先生』シリーズらしい1曲。歌詞は、久しぶりに親戚の子と会ったことで時の流れを実感し、自分は成長できているのかと自問自答を繰り返しながら、最終的にはこの10年を肯定してくれるといった内容だ。6分強と少々長めの尺の曲ながら、めくるめくような楽曲展開と、次々と飛び出す絶望少女達の個性溢れる歌声によって、まったく飽きることなく一気に聴くことができる。特に終盤でたたみかける大槻ケンヂと絶望少女達の絶唱は、実に胸を熱くさせる。

 また、絶望少女達が歌うパートには〈人として軸がぶれてる て歌でブレブレ踊った〉というフレーズが飛び出すほか、同作のメインヒロインである風浦可符香の存在を彷彿とさせる〈記憶の中で生きてれば〉と歌う場面があるなど、随所に伏線が散りばめられており、『さよなら絶望先生』ファンにはたまらない内容となっている。ちなみに大槻ケンヂとめぐろ川たんていじむしょが歌う「愛がゆえゆえ」も、〈ゆえゆえ〉という言葉の繰り返しが、「人として軸がぶれている」の〈ブレブレブレブレ〉というコーラスのオマージュになっており、大槻の久米田作品への愛が感じられる。

 往年の『さよなら絶望先生』ファンは、「あれから(絶望少女達2020)」を聴き、思いがけず届いた、懐かしい人からの手紙を読んだ時のようなむず痒さと、また彼女たちに会えたという高揚感を噛みしめながら、6分強の間にこの10年の月日を走馬灯のように甦らせただろう。

■キャラと楽曲の数だけ魅力がある『さよなら絶望先生』シリーズの音楽

 アニメ『絶望先生』シリーズが生んだ楽曲は、大槻ケンヂとNARASAKIによるメタル調の楽曲が広く知られているが、実は非常に多彩で、アニメの内容を知らなくても、純粋に音楽だけで楽しめるものばかりだ。

 1期『さよなら絶望先生』の10話と11話でOPテーマとして流れた「強引niマイYeah~」は、軽快なブラスサウンドとグループサウンズを彷彿とさせるエレキギターによる極上のダンスナンバー。メランコリックに展開するBメロと、そこから爽快に広がるサビが秀逸だ。ザ・歌謡曲といったメロディと要素満載の編曲は、まさにアニソンのお手本のよう。そのなかで情感たっぷりに歌う風浦可符香(野中藍)、木津千里(井上麻里奈)、木村カエレ(小林ゆう)、日塔奈美(新谷良子)4人の歌唱力の高さも際立っている。

 2期『俗・さよなら絶望先生』の第3話挿入歌「主人公」は、キラキラとしたエレキギターのイントロで始まる、アイドルチックでガーリーな楽曲。作曲・編曲を手がけた川田瑠夏は、前述の「強引niマイYeah~」など『さよなら絶望先生』シリーズの曲も多数手がけている人物だ。そこはかとなく80年代感が漂うシティポップ調のサウンドが非常に心地よく、日塔奈美(新谷良子)のフワッとした歌声とも見事にマッチしている。

 また「fetish」は、アルバム『絶望歌謡大全集』に収録されたテクノ歌謡ナンバー。パーカッシブなリズムをメインにしたファンク/ディスコのサウンドで、今アニクラでかかっても間違いなく盛り上がるだろう1曲だ。大人の愛をテーマにした歌詞はちょっぴりセクシーで、ボーカルを務めた小節あびる(後藤邑子)、藤吉晴美(松来未祐)の歌声も実に聴き応えがある。

 そしてアルバム『絶望歌謡大全集2』に収録の藤吉晴美(松来未祐)のキャラクターソング「羽根ペンの魔法」は、怒濤の展開が秀逸な、アイドルチックな萌え/電波ソングで、賑やかなサウンドとマッチしたキュートな歌声の虜になったファンも当時多かっただろう。残念なことに松来未祐は2015年に急逝しており、サブスク解禁されたこの機会に、彼女の歌声の魅力を再確認して欲しい。

 『さよなら絶望先生』シリーズの音楽は、昭和レトロ、メタル、テクノ歌謡、ゴシック、和テイストなど個性的な楽曲が満載で、それは劇中に登場する絶望少女達のキャラクターとしての強度の高さゆえだ。ほかにも木津千里(井上麻里奈)が歌う情熱のバラード「薔薇の棺」、『俗・さよなら絶望先生』7話劇中歌で、架空の魔法少女アニメの主題歌である「リリキュアGO!GO!」、木村カエレ(小林ゆう)がひたすら絶叫するデジタルハードコアの「豚のご飯」など、キャラと楽曲の数だけ魅力がある。(榑林 史章)

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