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「うちがあんたらを捨てたんや」 『おちょやん』千代の強く切ない故郷からの旅立ち

リアルサウンド

20/12/4(金) 12:45

 今週から新たに始まった連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)。第1週「うちは、かわいそやない」では、のちに“大阪のお母さん”呼ばれる大女優に成長する千代(毎田暖乃/杉咲花)がわずか9歳で家を追われるまでが描かれた。

 吞んだくれの父・テルヲ(トータス松本)から苦労を負わされ、弟・ヨシヲ(荒田陽向)を抱えながらも幼い頃に亡くした母・サエ(三戸なつめ)との約束を胸に日々逞しく生きていた千代。今日食べる物にも事欠く毎日だが、暗い影を落とさない竹井家の暮らしは平和に見えた。だが、ある日テルヲが連れてきた継母・栗子(宮澤エマ)の存在が千代の生活を大きく揺るがしていく。

 家事を全くする気がない上に、千代不在の中ヨシヲをほったらかし、危険な目に遭わせた栗子。あろうことか、彼女はテルヲに子ども二人を奉公に出させようと提案する。

 それなのに父親や近所の男衆はみんな美人な栗子にメロメロ。ヨシヲまでもお腹をさすっていた栗子のために薬草を摘み、そんなヨシヲを栗子は手料理でさらに手懐けた。「なんやねん、どいつもこいつも栗子栗子って」。女性は子供でも、何となく男性にはわからない同性の計算高さに気づくものだ。しかも、なんと栗子はすでにテルヲとの(?)子供をお腹に授かっているという。

 お腹の子供とテルヲと3人で暮らしたい。だから血の繋がりがない千代とヨシヲが目障りだと開き直る栗子を、千代は「こねえな家こっちから出ていってやるわ」と罵る。けれど、本当の母親の顔を知らないヨシヲにとって、栗子はようやくできた唯一無二の“お母さん”。身体一つで栗子を庇うヨシヲのために、千代は一人で奉公に出ることを決意した。

 そうして千代は大阪道頓堀の芝居茶屋にお世話になることが決まり、家を出る前日までバタバタと準備に追われる。綺麗なおべべを着させてもらった千代はいつものようにひょうきんな笑顔を見せるが、どこか寂しそうだ。

 少しだけ出席した小学校の先生(木内義一)にも別れを告げる千代。両親がいて、毎日学校に通える同級生と自分との違いに悩む千代に、先生は「色んな子がいて、みんなそれぞれ頑張ってるんです。あえて言うならそれが普通です。学校に行けなくても竹井さんは普通ですよ」と餞別の言葉を送る。近所に住む同級生・勝次(原知輝)も口では強がっているが、その表情から千代との別れを惜しんでいることが伝わった。

 どんなに貧しくとも周囲の人に支えられる南河内での日々が千代にとっては大切だったのだ。母から受け継いだ「明日もきっと晴れやな」という呪文のような言葉を呟く千代の姿が切ない。

 そして、旅立ちの日。気丈に振る舞ったまま家を出た千代だったが、後を追ってきたテルヲの姿に安堵した表情を見せる一幕も。きっとテルヲが自分を迎えにきてくれたと思ったはずだ。けれど、テルヲはサエの写真を渡すために追いかけて来ただけ。まるでサエが生きていた頃の思い出までも葬りさるかのような父親に、千代は「うちが捨てられたんやない。うちがあんたらを捨てたんや」と強烈な言葉を残し故郷を後にした。

 喜劇女優・千代の物語は、そんな悲しい幼少期の記憶から始まる。しかし、千代の悲惨な過去とは裏腹に、毎田や原といった子役たちの豊かな表情が私たちを笑顔にしてくれた。小学校の先生が藤堂先生(森山直太朗)と優しい雰囲気が似ていたり、奉公に出る千代が竹取物語のかぐや姫に例えられたりと、どこか前朝ドラの『エール』の名残りを感じた人もいるのではないだろうか。

 まだまだエールロスの人もいるかもしれないが、前作からバトンを引き継いだ『おちょやん』も“涙あり笑いありの楽しいひと時”を届けてくれるだろう。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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