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目標のための犠牲は必要なのか? 土屋太鳳主演『チア☆ダン』第7話には深く考えさせられる

リアルサウンド

18/8/25(土) 6:00

 精神的支柱であった太郎(オダギリジョー)が不在の中でも、対立していたチアリーダー部と事実上の合併を経て、20人体制となった福井西高校チアダンス部「Rockets」。8月24日に放送されたTBS系列金曜ドラマ『チア☆ダン』では、物語が“3年生編”へと移り変わる。わかば(土屋太鳳)を筆頭にした主要メンバーにとって、「打倒JETS」「全米制覇」の目標を追うことができる最後の1年が始まったのだ。

 そんな中で顧問代理の桜沢教頭(木下ほうか)から言い渡されたのは、学業以外はチアダンスに専念すること。つまりはアイドルグループさながらの「恋愛禁止令」というわけだ。しかしその直後に、桜沢教頭の娘である麻子(佐久間由衣)は後輩の男子からラブレターを手渡される。部活と勉強の両立に精一杯の麻子に、新たな悩みが生まれてしまうのだ。

 もっぱら高校生の青春ドラマというふうに大きく括ってしまえば、そのジャンルに「恋愛」というのは鉄板の題材だ。しかしこの『チア☆ダン』はその大きな括りの中の“スポ根”モノであると捉えれば、ある意味特殊でドラマチックなその小ジャンルにおいて、「恋愛」は障壁以外の何物でもなくなってしまう。

 結果的に麻子は、福井県大会への重要なステップとなる「北信越チャレンジカップ」で優勝するため(JETSが出場しない大会ならば尚更負けるわけにはいかないのだ)、その後輩とのLINEのやり取りを断ち、これまで通りの部活と学業の両立を選ぶ。それは、部活と家の手伝いとの両立を諦めた妙子(大友花恋)を“切る”という選択を仲間たちがするのを目の当たりにしたからに他ならない。

 だがその直後のシーンで、妙子の件を相談しにいったわかばに太郎が語る言葉は、麻子の境遇にも通じるものがあった。「何かを手に入れるためには、必ず何かを捨てなあかんのかな?」。部活と学業を完璧にこなすために、それ以外のことをゼロにしなくてはいけないのか、誰もが一度は経験したことのあるこのジレンマは、限られた時間の中で1秒1秒も無駄にできず、磨き続けなくてはならない彼女たちや、目標を追う人々にとっては永遠のテーマであろう。

 もちろんこのテーマに答えは存在し得ない。何かを捨てなければ何かに没頭できない人もいれば、そうでない人もいる。そして、その言葉を受けたわかばは、妙子が部活を諦めないことと、Rocketsが優勝することを両方実現するための策として、妙子の家の手伝いをメンバーが交代で行い、練習時間を分配していくという方法を見出すのだ。互いに助け合いながら、誰も見捨てることなく成長していく、Rocketsらしいチア・スピリッツといえよう。

 大会に後輩を誘った麻子は、そこで彼から全米を目指す大会や受験が終わるまで待っていることを告げられる。「何かを手に入れるために何かを捨てる」、このテーマに直面し、悩む前に忘れてはいけないのは、部活や恋愛はもちろんのこと、青春時代のすべてのことが“1人ではできない”ということなのではないだろうか。クライマックスに向けた3年生編の輝かしい第1歩を踏んだこの第7話は、なかなか深く考えさせられるエピソードであった。(久保田和馬)

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