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LOVE PSYCHEDELICOが語る、20年の歩みと求めるサウンド 「いいときも悪いときも、常に音楽と共にある」

リアルサウンド

20/4/27(月) 20:00

 LOVE PSYCHEDELICOが今年、デビュー20周年のアニバーサリーイヤーを迎えた。

 3月25日に4枚組シングル集『Complete Singles 2000-2019』、昨年行われた初のアコースティックツアーを収録した映像作品『Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2019 at EX THEATER ROPPONGI』(DVD/Blu-ray)を発表。さらに4月15日には、2018年の配信シングル「Sally」以来、約1年4カ月ぶりとなる新曲「Swingin’」を配信リリースするなど、これまでの軌跡と“新しいLOVE PSYCHEDELICO”を体感できる作品を次々と発信している。

 リアルサウンドでは、KUMI、NAOKIにインタビューを行い、20周年を迎えた心境、希求するサウンドの変遷、ルーツミュージックに対するスタンス、そして、新曲「Swingin’」の制作などについて語ってもらった。(森朋之)

・「音楽人生、幸せだな」と思えている(KUMI)

ーーまずは20周年を迎えた心境を教えてもらえますか?

KUMI:あまり過去を振り返らないんですよね。それよりも、いまが大事。いまがとても楽しくて、「音楽人生、幸せだな」と思えているということは、素敵な20年だったんだろうなと。

ーーストレスのない音楽活動が続いている?

KUMI:日々のストレスは良くも悪くも、多少はあると思うけれど、生活と音楽が自然に重なっていて、それはとてもいいことだなって。どこかのタイミングでそうなったわけではなくて、徐々にだと思いますけどね。このスタジオ(Golden Grapefruit Recording Studio/LOVE PSYCHEDELICOのプライベートスタジオ)を作ったこともそうだし、(2008年頃)LAにしばらく滞在したことで開けたところもあっただろうと思います。

NAOKI:うん。そりゃ時期によって、いろんなことがあったよ。でもそういう日々の浮き沈みに左右されることなく、音楽との付き合い方はどんどん自然になってきたよね。いつも身の回りに音楽があるし、歳を重ねるとそれがなくならないことも分かってきて。若い頃は「音楽をやらなきゃ」とがんばっていたけど、それがなくなって、「いいときも悪いときも、常に音楽と共にある」という。

ーー決して順風満帆な時期ばかりではなかったと思うし、大きく変化していく音楽シーンのなかで、LOVE PSYCHEDELICOの価値観を貫いてこられたのは、どうしてだと思いますか?

KUMI:音楽に導かれたんじゃないかな。仲間との出会いにも恵まれて、自分の意思というよりも、「ラッキーだったな」と思います(笑)。

ーーでは、二人が求める音についてはどうでしょうか? 

KUMI:それは変化し続けていますね、もちろん。ただ、自分が思う“いい音”というのはずっと変わっていないかなと思います。それは感覚的なことで、“グッと来る”とか“魅力的に感じる”とかそういうことなんですけど。

ーーやはり60年代~70年代の音が根本にある?

KUMI:はい、それはあると思います。その時代の音楽がLOVE PSYCHEDELICOのルーツになっているし、それが変わることはないと思うので。

NAOKI:60年代、70年代の音がいいというのは、自分たちの好みの話だけじゃない気がするけどね。その時代の機材がいまだに重宝されているのも、そういうことだと思うし。たとえば昨今の90年代リバイバルにしても、もとを辿れば、(90年代の音楽自体が)70年代から来ているわけで。すべてのポップミュージックの基礎は50年代から70年代にあって、そのあとはずっとリバイバルが続いているように感じることもあるよね。もちろん自分たちもそうで、特に自分達はThe Beatlesに代表される60年代のイギリスの音楽から、70年代のアメリカ西海岸の音楽の繁栄の流れがずっと好きだったりします。

KUMI:音楽シーンがいちばん盛り上がった時期だよね。スーパースターばかりでしょ、その時代は。

NAOKI:しかもさ、今とはだいぶ時間の感覚が違うよね。たとえばエリック・クラプトンは、CREAMを解散して、すぐにBlind Faithを結成したんだけど、それも1年ちょっとで解散して、数年後にはソロになって。あっという間にいろんなことが起きて、しかも名盤がどんどん生まれてるっていう。

KUMI:そうだね。

NAOKI:プログレにしても、60年代終わりから始まって、10年後にはほとんどのバンドが解散してるでしょ。ディスコミュージックも、“空前のブーム”と言われたのは78、9年あたりだけで、すぐになくなってるし。時の流れ方が今と全然違う気がする。

ーー60年代から70年代にかけて様々な実験が繰り返されて、ポップミュージックがものすごいスピ—ドで成熟して。そう考えると、80年代はやはり特殊な時代だったんでしょうね。あの時代は「60年代、70年代はダサい」という風潮だったので。

NAOKI:そうかもね。ストーンズ(The Rolling Stones)もそうだけど、60年代からやっていたバンドって、80年代とは相性が良くなかったかもしれないね。

ーーThe Beatlesやポール・マッカートニーも、なぜか評価が低くて。

NAOKI:当時新しく登場したシンセサウンドがカッコいい時代だったからね。90年代に入って、レニー・クラビッツなんかが登場したことで、「やっぱりギターっていいよね」「生の音がいちばんだよね」と言うところに戻ってきたんじゃない?

ーー確かに。話を強引につなげると(笑)、日本でその役割を担ったのが、LOVE PSYCHEDELICOだと言えるんじゃないでしょうか。70年代の音楽の雰囲気をはっきりと打ち出しながら、ビートは打ち込みというスタイルは、それまでの日本にはなかったので。

NAOKI:意図してやっていたわけじゃないんだけどね。1stアルバム『THE GREATEST HITS』(2001年)に入っている曲は、もともと学生時代にデモ音源として作っていただけで、「ルーツミュージックの味わいを大切しながら、現代のビートで……」みたいなことを狙ったわけではないから。

KUMI:曲を作るときには意識していなかったし、確信犯的に作っていたわけではないけれど、(レニー・クラビッツなどと)同じことをやろうとしていたのかもしれないね。自分たちのルーツは60年代、70年代にあるけれども、それを再現したかったわけではないし、自分たちが音楽を作る時代のムードやリズムが自然とミックスされたというのかな。

NAOKI:うん、音楽はまさに“ムードとリズム”がすべてだよね。アレンジについて「こうあるべき」とか話し合ったことはないけど、二人で作ると当たり前のようにそうなるというか。新曲の「Swingin’」もそうで。70年代の音を狙って、この曲を作ったとしたら、演奏もミックスも、ぜんぜん違うものになってたと思うよ(笑)。

ーーそうですね(笑)。70年代の音楽のテイストは全編から感じますが、やはり現代のポップソングなので。

NAOKI:現代的という意味ではこの曲って、ぜんぜんギターソングじゃないんだよね。キャッチーなリフもないし、ギターが目立ってない。それは今の音楽のマナーが自然に反映されていると思うんだよ、無意識にね。それもさっきの話と同じで、「今はギターを入れないのが主流だから」みたいな話をしたわけではなくて、2020年に作ったら自然とこういう曲が生まれたというか。

・「Swingin’」が出来たとき「まだまだいけるな」と思った(NAOKI)

ーー「Swingin’」は、ドラマ(テレビ東京系ドラマBiz『行列の女神~らーめん才遊記~』)のオープニングテーマですが、制作はいつ頃だったんですか?

KUMI:去年の春くらいから曲の構想があって、夏あたりから取り掛かり始めました。ツアー(『Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2019』)で一時中断したんですけど、今年に入ってからまた制作を再開した頃に、タイアップのお話をいただきました。

ーー曲を作り始めたときの“構想”は、どんなものだったんですか?

KUMI:ちょっと力が抜けているというか、リラックスしていて、軽やかで。

NAOKI:曲を聴いてもらえればわかると思うけど、めちゃくちゃキャッチーというわけではないんだよね。自然に身体が揺れる感じだったり、ちょっとしたユーモアだったり、いろんなアイデアが詰まっていて。すごく満足しているし、この曲が出来たときは、「まだまだいけるな」と思ったよ(笑)。

ーー確かにホッとするような気分になる曲ですよね。社会の緊張感が強いから、余計にそう感じるのかもしれないけど。

KUMI:ホッとする余裕を感じてもらえたら嬉しいですね。

ーー「Swingin’」のドラムは、OKAMOTO’Sのオカモトレイジさん。どういう経緯で彼が叩くことになったんですか?

NAOKI:何度かOKAMOTO’Sの曲をプロデュースさせてもらったことがあって。いちばん最近だと、「Dancing Boy」(アルバム『BOY』収録)という曲を一緒に制作したんだけど、そのときからKUMIに「レイジくんのドラム、いいんだよ」という話をしていて。じつは「Sally」でもスネアのロールドラムをエンディングで叩いてもらってるんだけど、1曲フルで参加してもらったのは今回が初めてで。「Swingin’」はビートが大事な曲だから、レイジくんに叩いてもらって良かったよ。

KUMI:うん、すごく良かったね。こちらから細かく「こうしてほしい」と依頼したわけではないんだけれど、「この曲はこういう雰囲気だろう」と彼なりに解釈してくれて。なんていうか、“日常感”が大事な曲なんですよね、この曲は。レイジ君の叩いてくれたドラムを聴いたときにも改めてそう感じたし、彼も「夕日が見えましたね」と言っていて。「やっぱりそういうことを意識して演奏してくれたんだな」と思いました。

ーー非日常を演出するのではなく、日常のなかに自然と存在している曲というか。

KUMI:はい。曲のテイスト的には、もっとムーディーな雰囲気の方向にももっていけると思うんですけど、そうはならなかったですね。

NAOKI:楽曲に向き合ってくれるところも良かったよね、レイジくんは。

KUMI:プレイヤーとして「俺はこうやる!」ということではなくて、この曲にとって、どういうドラムが必要かを考えてくれて。

NAOKI:そこは通じ合える部分だったね。

ーーミュージシャンのエゴを出すのではなく、楽曲にとって何が必要かが大事。お二人も一貫して、そういうスタンスですよね。

NAOKI:完全にそう。

KUMI:そういうエゴはないね。

NAOKI:いいのか悪いのかわからないけど(笑)。

KUMI:それは私もわからないけど(笑)、それがないほうが好きだし、心地がいいなって思う。

ーー思い切り自我やエゴを押し出すタイプのシンガーもいますけどね。

KUMI:そういう魅力ももちろんあるけども、私は(ボーカルを)楽器の一部、サウンドの一部として捉えていて。どういう声色で、どれくらいのテンションで歌おうか、考えて歌いますね。

NAOKI:「Swingin’」のときは、1回レコーディングで歌って、その翌日にもう1回聴き直して、唄のテンションを確認したんだよね。結局その日、KUMIは一部分だけ歌い直したんだけど、そうやって曲に合わせて歌のテンションを正確にチューニングできるのはすごいなって、改めて思った。ホントにちょっとしたニュアンスなんだけど、歌い直したものを聴いてみると「なるほど」って。それを生身の身体でやってるんだから、やっぱりすごいよ。

ーーギターに関してはどうですか?

NAOKI:さっきも言ったように、もともと「Swingin’」は、ギターがメインの曲じゃないからね。この曲に限らずなんだけど、自分はギターソロもぜんぜんカッコいいと思わなくて。聴く分には好きだし、VAN HALENやランディ・ローズも大好きなんだけど、自分は90年代の音楽の影響が強いからか、「2番が終わったらギターソロ」みたいなお約束がどうもイヤで(笑)。間奏のパートが必要なときに、ギターソロではないアイデアでいかに聴かせるか? というのは、デビューの頃からずっと気を付けてますね。そんなこと言ってるわりに、ライブのギターソロはけっこう長いけど(笑)。

KUMI:ハハハ(笑)。

NAOKI:特に「Swingin’」はギターのサウンドとかではなくて、身体が揺れる感じが重要だから。ロックのマナーを持ち込んだダンスミュージックというか。スライドギターが入ってるけど、それもロックファンに「デュアン・オールマンみたいだね」と言われるようなものではなくて、ハワイの空が思い浮かぶような、ユーモアのある雰囲気にしたかったんだよね。

ーーライブ映像作品『Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2019 at EX THEATER ROPPONGI』についても聞かせてください。サウンドの質の高さに驚かされましたが、このツアーのためにオリジナルのスピーカーを制作したそうですね。

KUMI:はい、メインのスピーカーを設計してもらいました。

NAOKI:このスタジオでも使ってる“ムジーク”(musikelectroic geithain)というドイツ製のスピーカーを日本に紹介した方なんですけど。メンテナンスに来てくれる度に仲良くなって、「こんな音でライブをやってみたいよね」って言ってたら……。

KUMI:「作れます」って。

ーーライブ会場での音響はどうだったんですか?

KUMI:自分たちはライブの音を客席で聴くことは出来ないんだけど(笑)、サウンドチェックの音も素晴らしかったし、レコードの音源を会場でかけても、とてもいい音でした。どの場所にいても、自分の目の前で演奏しているように聴こえるんですよ。いままでのコンサートとは、まったく違う体験をしてもらえたんじゃないかな。

NAOKI:ハイレゾ対応のミキサーじゃないと、スピーカーのスペックを活かしきれないくらいのクオリティらしいよ。

KUMI:まだまだ可能性があるということだよね。演奏する側にとっては、緊張感があるけども。というのも、ちょっとした演奏ミス、声のかすれも赤裸々に伝わるので。でも、なるべくいい音で届けたいですね。

NAOKI:それはぜひ、ライブ映像作品でも感じてほしいです。

ーー普段のリスニングもそうですけど、ある程度いい音じゃないと、曲の良さが伝わらないこともありますからね。

KUMI:はい、そうだと思います。(リスニングの環境によって)楽しみが半減することもあるし、豊かな音で聴くという選択肢があるといいですよね。

NAOKI:”いい音”の捉え方も、以前とは変わってきてるかもね。このスタジオを作った頃は、「いい音にしなくちゃ」と思っていたし、細心の注意を払ってレコーディングしていて。いまはいい音を耳や肌で感じることができるようになって、気を付けなくても、“聴けばわかる”という感じになっていて。以前よりもリラックスして録音できるようになったのも、いいことだと思う。

KUMI:“TWO OF US”ツアーで制作したスピーカーは、今年のバンドツアーへも持って行こうと思っています。それもとても楽しみです。

ーー20周年ツアー『LOVE PSYCHEDELICO 20th Anniversary Tour 2020』ですね。

KUMI:はい、今後の状況を見つつ、ですね。

NAOKI:うん。今はライブが思うようになかなかできない状況だけど、またみんなが音楽を楽しめるようになったときには、すぐにでも音を鳴らせるように僕らはスタンバイしているので。それしかないからね、我々音楽家ができることは。
(森朋之)

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