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段田安則、“バランサー”としての高い演技力 『半沢直樹』シリーズの中でも一味違う悪役に

リアルサウンド

20/9/20(日) 6:00

 最終回まで残り2回となった日曜劇場『半沢直樹』(TBS系)。6年前に負けず劣らずの熱い展開を見せてくれている。“敵の敵は味方”とも言うべき形で犬猿の仲であった半沢(堺雅人)と大和田(香川照之)が利害の一致で協力関係にあるのもシーズン2後半戦の面白いところだろう。

 では、“悪役”として誰が半沢の前に立ちはだかっているか。現在のところラスボスは進政党幹事長・箕部啓治(柄本明)と思われるが、その箕部と繋がり東京中央銀行内で敵対関係にあるのが、段田安則演じる紀本平八だ。ライターの田幸和歌子氏は“悪役”として好演を続ける段田について次のように語る。

「段田さんはその姿を見ないことがないと言っていいほど、90年代~00年代は連続ドラマに出演され続けていました。遠藤憲一さんや松重豊さんが“バイプレイヤー”と呼ばれて記憶に新しいですが、バイプレーヤーの先輩として段田さんも凄まじい活躍をされていました。近年は1年に5作品の舞台に出演されていたり、舞台に軸を置いていたようですが、今回の『半沢直樹』もコロナ禍によって舞台が中止になったことで出演する時間ができたようなんです。もちろん、舞台の中止は残念なのですが、こうして連ドラで、しかも『半沢直樹』で段田さんを観ることができるのはうれしい限りです。今回、『半沢直樹』で改めて本当に演技が上手い方だなと感じています」

 癖が強すぎる『半沢直樹』の登場人物たちの中で、段田が演じる紀本は“普通の人”と思われた。しかし……。

「シーズン1から半沢の周囲には“頼れる上司”キャラが少なく、ほとんどが利己的な人物ばかりでした。なので、シーズン2で紀本さんが登場したときは、『やっと“普通の人”が登場した』と思ったんです。味方なのか敵なのか分からない雰囲気はありつつも、癖の強すぎる人たちの中でまともな話ができそうというか。もしかしたら半沢の助けになるのでは?と思っていたら、結局そんなことはなかったのですが(笑)。“濃厚”な俳優さんたちが多い中で、味わいに変化をもたせられる役者であり、それでいて味わってみると誰よりも強烈な味も持っている。作品の中でバランサーとしてのお芝居ができるのは、本当に演技力がある方だからです。

 段田さんの過去作を振り返ると、シリアスな作品からコメディまで本当に幅広いジャンルの作品に出演されています。その中でも段田さんの演技力が活かされるのは、『半沢直樹』の紀本もそうですが、“二面性がある役柄”だと思います。完全に振り切った悪役とも言えますが、1998年のドラマ『聖者の行進』(TBS系)では製作所の社長であり地元の名士という表の顔を持ちながら、裏では知的障害者たちに不当な労働を強いて、さらに女性にも暴行しているという最低な人間を演じていました。段田さんの演技が上手すぎることもあり、放送当時は事務所にクレームまで入ったそうです。NHK朝ドラ『ふたりっ子』では、愛する妻と娘がいたにも関わらず、憧れの歌手を追いかけて家を出てしまうというダメ親父・野田光一を演じました。光一の行動だけを見れば最低なのですが、段田さんが演じると愛すべきダメさと言いますか、非常に人間臭い魅力があったんです。近年では『64(ロクヨン)』(NHK総合)の演技も本当に素晴らしかったです」

 また、段田の良さは“大きな芝居”をしないところにあるが、『半沢直樹』ではまた違った一面を見ることができるのではないかと田幸氏は続ける。

「段田さんのお芝居は大きな動きをしていないのですが、よく通る声と些細な表情の変化で思わず目を奪われてしまいます。周りの共演者の芝居を立てながら、自分を出しすぎずに場をつなぐことができる。ただ、『半沢直樹』ではアップのシーンが続くこともあり、いつになく段田さんのお芝居も大きくなっているように感じます。回を重ねるごとにお芝居が大きくなっていっているので、このままどこまで大きくなるか楽しみにしているところです(笑)」

 『半沢直樹』では半沢と敵対した登場人物は必ず煮え湯を飲まされてきた。段田演じる紀本もそこに続くのか、はたまた違う形の結末を迎えるのか。

■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS

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