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TWICE、BLACKPINK、BTS……K-POPブーム再燃に至った理由 日本における歴史を振り返る

リアルサウンド

19/9/4(水) 7:00

 日本と韓国の関係が急速に厳しくなっているのは、連日の報道でよくご存じだろう。元徴用工の問題にはじまり、ホワイト国(輸出優遇国)から韓国を除外する政令を日本が施行し、韓国はGSOMIA(ジーソミア/軍事情報包括保護協定)破棄を決定するなど、最近のニュースを見聞きすると「これから一体どうなっていくのだろう」と不安になってしまう。

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「日韓関係の悪化はK-POPに何らかの影響を与えるでしょうか?」

 これは先日受けた某新聞社の取材で出た質問だ。私は以下の通りに答えた。

「今のところ目立った影響はないと思います。K-POPのアーティストはどんどん日本に進出して成功を収めていますし、日本のK-POPファンも減ってはいません。大手の某CDショップの売り上げも常にK-POPが上位に入り、関連イベントやライブも増える一方です」

 両国をめぐる騒動は過去にいろいろとあったが、K-POPは数々の逆風に負けることなく日本での人気を勝ち取った。20年という長い年月をかけて定着したジャンルなので、そう簡単に勢いが衰えることはないと個人的には考えている。では、K-POPはどのようにして異国の地に根づいたのか。その道のりをたどってみたいと思う。

 韓国の大衆音楽のうち、10~20代の若者に支持されるロックやポップスをK-POPと呼ぶようになったのは90年代後半だ。とはいえ、当時の日本での人気はまだまだ低く、ごく少数のマニアが喜んで聴いている程度だった。しばらくして、女性3人組のS.E.S.(エス・イー・エス)や男性6人組のSHINHWA(シンファ/神話)など韓国のトップアイドルが日本へ進出。K-POPの支持層は拡大したものの、マイナーなジャンルであることは変わらずで、日本より格下という偏見も多かった。

 だがこうした状況は、2002年の日韓共催『FIFAワールドカップ』の開催で少し改善する。同大会のテーマソング「Let’s Get Together Now」は、日本からはCHEMISTRYとSoweluが、韓国からはリナ・パーク、Brown Eyesが参加。同曲のヒットは、日本の一般層に「韓国にもポップスを歌うシンガーがいる」ということを認識させてくれたのだ。

 「同じ頃に韓国出身のBoAが日本で大ブレイクを果たしているじゃないか」という指摘もあるだろう。しかし、彼女の場合はあくまでもJ-POPアーティストとして売り出していた。とにかく当時の日本は「韓国は演歌が主流」と思っていた人が多かった。そうしたイメージを薄めてくれた「Let’s Get Together Now」は、日本におけるK-POP史に刻むべき重要な曲と言えるほど、果たした役割はあまりにも大きい。

 そして2003年頃からペ・ヨンジュン主演の『冬のソナタ』を契機に韓流ドラマブームが巻き起こる。当然のごとく、ドラマのオリジナルサウンドトラック(OST)も注目を集めるようになり、主題歌・挿入歌を歌ったシンガーが次々と来日してイベントを行ったが、そのほとんどが韓国のヒットチャートの常連ではなかったため、残念ながら旬のK-POPの魅力を日本中に広めるきっかけにはならなかったように思う。

 大きな転機が訪れるのはそれから約7年後。2010年頃になると、動画配信サイトの普及によって国境の壁がなくなり、どの国の音楽でもすぐに聴ける環境が整った。韓国の最新ヒット曲もリアルタイムで知ることができるようになり、中でもビジュアル的に華やかなアイドルグループが注目の的に。その盛り上がりを受けて、韓国のトップアーティストが続々と日本デビューしていく。ついにK-POPブームが到来したのだ。

 ではサウンド的にはどうだろうか。日本人好みにしたから成功したのだろうか。確かに日本進出後にJ-POP風のシングルをリリースするK-POPアーティストは多くいた。だがほとんどの場合、本国での活動以上に成功してはいない。日本のリスナーを魅了し続けたのは、やはり韓国でリリースしたオリジナル曲だったのだ。

 実はK-POPというジャンルは昔から常に洋楽、特にアメリカのポップスのエッセンスを意識的に取り入れてきた。前述のS.E.S.やSHINHWAといったK-POP黎明期のアーティストたちもサウンドメイクやイメージ作りでお手本にしたのは、ボビー・ブラウンやTLC、ジャスティン・ティンバーレイクなど、主にアメリカのアーティストだったのである。以降も(一部例外はあるものの)その流れは基本的に変わってはいない。

 K-POPは日本人のようなビジュアルからくる親しみやすさに加え、洋楽的なサウンド&パフォーマンスのカッコ良さがある。自分たちと似ているようで異なる魅力。この“違い”を楽しめる層が、2010年を境に日本で増えはじめたことが大きな変化だったと思う。

 しかし、こうした人気ぶりも2012年夏に韓国の李明博大統領(当時)が竹島に上陸したあたりから落ち着きを見せはじめる。K-POP勢のメディア露出は減り、連日にぎわっていた日本各地のコリアンタウンも徐々にさびれていく。K-POPブームは終わった――。音楽関係者の誰もがそう感じた年であった。

 ところが、である。2017年に再びK-POPブームが巻き起こったのだ。火付け役はTWICE、BLACKPINK、BTSの3組。同ブームを支えるファンの大半は10代の男女である。この世代は物心ついたときからK-POPが身近にあり、そのきらびやかなパフォーマンスを見ながら育ってきた。キュートで健康的なイメージのTWICE、ガールクラッシュ(女性が憧れる女性)の代表格であるBLACKPINK、そしてK-POPの素晴らしさを世界中に広めたBTS。いずれも“親近感がわく海外のグループ”として日本で圧倒的な人気を獲得したのだ。

 また、2012年度から中学校でダンスが必修になったことも現在のK-POPブームが起きるきっかけになったと思われる。ダンスを習おうとしたとき、日本の音楽と似たテイストがあるK-POPは入りやすく、しかも体格的にお手本にしやすかったのは想像するに難くない。

 このように昨今のK-POPブームを支えているメインの世代は、自分たちとの“共通点”と“違い”をはっきりと理解して、そこに面白さを感じているようだ。政治・経済とエンターテインメントは切り離して考えるべきだ、ということも自然と身についているのかもしれない。韓流ドラマにはまった世代から、その娘、息子、孫たちへ。時代に左右されながらも生き残ったK-POPは、やはり他の音楽ジャンルにはない魅力があった。そのことを今の若者はストレートに認めて評価している。彼ら・彼女らを見ていると、日韓の関係が改善する日もそう遠くないような気がするのだ。(まつもとたくお)

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