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大森南朋演じる柚木は大門未知子に通ずる? 『サイン』テレ朝医療ものに新たなスパイス

リアルサウンド

19/8/29(木) 8:00

 現在放送中の『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』(テレビ朝日系)は、2011年に韓国でヒットしたドラマをリメイクした法医学サスペンスで、自身の信じる真実と正義を守ろうと権力に立ち向かう天才的な法医学者・柚木貴志を大森南朋が演じている。民放夏ドラマの初回視聴率ランキングでトップの14.3%をマーク、その後はやや落ちたものの、10%前後をキープしている。

参考:『サイン』飯豊まりえが明かす、初の医師役への思い 「並外れた精神力がないとできない」

 テレビ朝日の医療ドラマといえば、今年10月から第6シリーズの放映が決まっている米倉涼子主演の人気ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』があるが、米倉演じる大門未知子と大森演じる柚希貴志、いずれも医者として天才的であったり、不遜な態度をとったり、反権威を貫いて自分の道を突き進んだりする姿は類似している。言いたいことがなかなか大きな声で正直に言えない閉塞感のある現代社会において、彼らのそうした自分に正直な生き様に共感する視聴者も多いだろう。

 また、現在放送中のテレ朝ドラマ『科捜研の女』も、タイトルに引っ張られてつい「科学」の方にばかり意識が行ってしまうが、沢口靖子演じる主人公の榊マリコは法医学研究員で、法医学ドラマの側面もある。マリコが捜査一課の土門(内藤剛志)たちと協力として事件を解決していく様子は、『サイン』で柚木が捜査一課の和泉千聖(松雪泰子)や千聖の部下・高橋紀理人(高杉真宙)らと連携を取り合う姿とも重なる。

 基本的に1話完結型で毎回事件が起こりそれを解決していく形を取りながらも、物語全体に一つ核となる大きな事件が横たわっており、そちらの謎解きも少しずつ同時進行していくという構成や、ドラマ全体が重いトーンで進んでいく雰囲気は、他局ではあるが昨年1~3月に放送されギャラクシー賞に輝くなど高い評価を得た、石原さとみ主演の法医学ミステリードラマ『アンナチュラル』(TBS系)との共通点も感じられる。

 『サイン』がいずれのドラマとも異なる点は、まず一つに敵対するキャラクターの造形を挙げたい。例えば『ドクターX』では、敵キャラの「悪」の面が強調され、それを未知子が“成敗”するという明快な勧善懲悪ドラマであるところが人気の理由の一つだろう。しかし『サイン』では、敵キャラとして法医学者の伊達明義(仲村トオル)が登場するが、彼が権力にこだわり、時には倫理に反する行動も厭わない理由は、柚木の師であり育ての親でもある兵藤邦昭(西田敏行)が設立に尽力し、伊達にとっても悲願だった「日本法医学研究院」を守るためであり、伊達は自分の行動が法医学の未来を守るためだと信じている。「悪」一辺倒ではない伊達の存在が、時に柚木の心理に揺さぶりをかけ、物語がどう展開するかわからないスリリングさを生んでいる。

 それからもう一つ、新人法医学者の中園景(飯豊まりえ)の存在も特徴的だ。最初こそ柚木と反発し合っていたが、徐々に信頼が生まれ、今ではすっかり相棒として行動を共にするようになっている。男女バディ物は、どうしても恋愛要素が盛り込まれる傾向が多くみられるが、今のところ柚木と景の間にその気配はない。そうした余計な要素がないおかげで、物語がテンポよくスピード感を持って展開しているともいえよう。

 脚本家にも注目したい。脚本スタッフとしてクレジットされているのは、羽原大介と香坂隆史の二人で、羽原はこれまでも様々な脚本を手掛けてきたが、中でも印象に残っているのが、2012年に放送された西島秀俊・香川照之W主演のドラマ『ダブルフェイス』(TBS・WOWOW共同制作)だ。この作品は、2002年公開の香港映画『インファナル・アフェア』をモチーフにしており、原作映画へのオマージュを感じさせる作りで「東京ドラマアウォード2013」単発ドラマ部門のグランプリに輝くなど評判を呼んだ。

 『サイン』の原作である韓国ドラマは全20話で、日本の通常の連続ドラマに比べてボリュームがある。原作から様々な要素やエピソードを削り、コンパクトでありながら物語の重厚さを損なわずにまとめ上げられたストーリー構成は、羽原の手腕に因るところが大きい。また、香坂はこれまで先述の『ドクターX』や『刑事7人』『緊急取調室』など、テレビ朝日の人気ドラマでその手腕を発揮している。テレ朝ドラマらしい骨太な安定感はまさにお手の物だろう。こうした強力な脚本陣だからこそ、テレ朝ドラマの王道パターンを踏襲しながらも、法医学ドラマとしてこれまでにない魅力を持った作品になっているのではないだろうか。

 第7話では、第1話で謎を多く残したままとなっていた、国民的人気歌手・北見永士(横山涼)の死亡事件が再び動き出す。北見の死に不審を抱いていた柚木は今度こそ真相を明らかにしようとするのだが、果たしてどのような展開が待ち受けているのか。これからますますこのドラマから目が離せなくなりそうだ。

■久田絢子
フリーライター。新聞ライター兼編集(舞台担当)→俳優マネージャー→劇場広報→能楽関連お手伝い、と舞台業界を渡り歩き現在に至る。ウェブ「エンタメ特化型情報メディアSPICE」等で舞台・音楽などのエンタメ関連記事を中心に執筆中。

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