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朝ドラ『エール』佐久本宝「とっくに家族じゃねぇんだよ!」 裕一に突き刺さる浩二の言葉

リアルサウンド

20/6/11(木) 12:00

 裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)を迎え入れる故郷・福島の温かさ。その一方で、半年前に閉められた喜多一、人手にわたった川俣銀行と厳しい現実も浮き彫りになっている。徐々に暗雲が立ち込める中、発覚するのが三郎(唐沢寿明)の胃癌。『エール』(NHK総合)第54話では、三郎、まさ(菊池桃子)、浩二(佐久本宝)それぞれの思いがあらわになる。

参考:唐沢寿明、『エール』三郎役を語る 「『みんながいたから幸せだった』と心から思えた」

 絶対安静、酒は厳禁。かかりつけの医者にそう言われている三郎。だが、裕一ら親族に告げられる病状は、手術も難しいほどに手の施しようがなく、立って歩いているのが不思議なくらい。「覚悟はしておいてください」と厳しい言葉が、家族に突きつけられる。

 嫌な顔一つせず、常に夫を立ててきたまさ。三郎の死期が近いことを知り、まさは初めて弱さを見せる。川俣の養子問題で苦労をかけた過去、早くに病に気付けなかった後悔。あのときこうしていればと自分を責め、まさは口を押さえむせび泣く。その思いを受け止め、なだめるのが音というのも、昔の2人の関係性からすれば考えられないこと。母として、妻として、それほどまでに心を許せるようになっているというのが分かる。音は裕一に「お義父さんの前では一生懸命、振る舞っとるけど、ずっとつらかったんだと思う」と、まさの本心を伝える。

 何かできることはないかと心配し、せめてもの足しにと実家への滞在費をまさに渡そうとする裕一だが、浩二がその援助を頑なに拒む。弟の口から明らかになるのは、喜多一が閉店する中、三郎のために金を工面し、福島で一番いい先生に診察してもらったが、それでも駄目だったという事実。福島に残された身として、必死に父親を看病してきた浩二にしてみれば、裕一は「よくヘラヘラと帰ってこれたな」というセリフそのままなのかもしれない。「兄さんはな、もうとっくに家族じゃねぇんだよ!」。浩二の非情な言葉が裕一を突き刺す。

 そんな冷え切った居間にふらっと入ってくる三郎。家族の心配をよそに、三郎は裕一を飲みに誘うのだ。「大事な話があんだよ!」と押し切り、家を出る2人。それを見つめる浩二の表情からは、なぜ兄さんなのかという、猜疑心が溢れている。

 三郎が向かったのは、近くのお寺。賽銭箱に小銭を投げ込み、手を合わせた三郎は、ゆっくりと話し始める。「裕一……俺はもう駄目だ。みんな必死にごまかしてってけど、それぐれえ分かる」。動揺を隠せない裕一に、三郎は「おめぇに承諾してもらいてえことがあんだ」と真っ直ぐな眼差しで話を持ちかける。

 福島編は明日の第55話で一旦の幕を閉じ、第12週からはオムニバス形式の物語がスタートする。三郎が久しぶりに聴きたいと話していたハーモニカは、幼少期から裕一をいつも支えてくれた。優しいハーモニカの音色は、三郎に届くのか。(渡辺彰浩)

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