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EMPiRE、クオリティ高い楽曲にも対応できる実力派グループに WACK所属グループの特性を分析

リアルサウンド

20/8/8(土) 10:00

 EMPiREは『Project aW』と名付けられたWACKとavexの共同プロジェクトによって生まれたグループだ。結成前からavexからのメジャーデビューが決まっていたため、最初から恵まれていたエリート集団だと思われがちな部分がある。デビュー以前からBiSHのライブツアーにオープニングアクトとして同行し満員の大会場でライブをやる機会を持てたし、1stアルバム『THE EMPiRE STRiKES START!!』の収録曲「Black to the dreamlight」がテレビアニメ『ブラッククローバー』のエンディング曲に採用されたりと大きなタイアップも獲得した。それは他のWACKのグループではなかったことである。結果としてデビュー直後から人気は獲得していたし、デビュー直後の初ワンマンライブは1300人以上収容できるマイナビBLITZ赤坂を完売させ、デビュー2年以内で2000人以上収容できるZepp DiverCity(TOKYO)でのライブを成功させた(コロナ禍で中止となったものの、今年の春ツアー『EMPiRE SUPER FEELiNG GOOD TOUR』のZepp Tokyo公演も完売)。

 しかし人気を獲得した理由は恵まれた環境にいたことだけが理由ではない。それは理由のほんの一部分である。最も大きな理由はアイドルとしても音楽としても魅力的なグループだからだ。

 EMPiREの楽曲は他のWACK所属グループと同様に松隈ケンタが率いるSCRAMBLESがサウンドプロデュースしている。しかしBiSHやBiSのロックサウンドとは違う。GANG PARADEのような雑食な音楽性とも違う。バンドで例えるならばサカナクションやフレデリックのように、キャッチーなメロディを軸としてロックとダンスミュージックの融合を目指した楽曲が多いように思う。「EMPiRE is COMiNG」や「RiGHT NOW」などがそれに当てはまる。また他のグループよりもJ-POPの王道をなぞりつつ、壮大なアレンジで徹底的に作り込んだ完成度の高い楽曲も多い。「アカルイミライ」や「ピアス」がそうだ。

EMPiRE / アカルイミライ [OFFiCiAL ViDEO]

 松隈以外の作曲家も多くの楽曲を作っていることも珍しい。松隈作品が最も多いし、他のグループでも松隈以外の作曲作品もあるが、EMPiREは他のクリエイターが作曲する比率が高い。その中でもSCRAMBLESの数少ない女性クリエイターであるoniは特に多くの楽曲でEMPiREに多く関わっている。「ピアス」など人気曲のトラックデザインを務め、「I don’t cry anymore」や「FOR EXAMPLE??」などで数々の作曲も行っている。丁寧に音を重ねて繊細に表現するサウンドが魅力的なクリエイターでそれがEMPiREの方向性と相性が良いのだ。そして松隈の音楽性や魂を継承しつつも様々なクリエイターが参加しているため、聴けばWACKグループとわかる特徴を持ちつつも、他のグループとは違う魅力や個性が生まれている。

EMPiRE / ピアス [EMPiRE presents TWENTY FOUR HOUR PARTY PEOPLE @YOKOHAMA BAY HALL]

 メンバーの魅力についてもふれていきたい。ステージに並ぶ佇まいだけでも惹かれてしまう抜群のビジュアルを持つ反面、ライブでは他のWACKグループに負けない全力でエモーショナルなパフォーマンスをする。そのギャップも魅力的だ。特に〈お尻ペンペン〉という歌詞のフレーズが印象的な「Buttocks beat! beat!」では全力で叫び振り切ったパフォーマンスをライブで披露し盛り上げている様子は圧巻だ。クオリティの高い楽曲をしっかりと表現できるメンバーが揃っているからこそ、EMPiREの音楽は魅力的なのだ。

EMPiRE / Buttocks beat! beat! [THE EMPiRE STRiKES START!! at マイナビBLITZ赤坂]

 しかし最初からメンバーは高い能力を持っていたわけでもない。周囲からは恵まれていると思われがちな環境だからこその苦悩もあっただろうし、いきなりメジャーデビューしたからこそ厳しさを実感した部分もあるかと思う。結成間もなくでオープニングアクトとしてBiSHのツアーに同行したが、先輩で経験豊富なBiSHとの実力差は歴然で悔しい思いをしたかもしれない。またオリジナルメンバーのYUiNA EMPiREがBiSに完全移籍したり、YUKA EMPiREが学業専念のために脱退したりと波乱もあった。YUKA EMPiREはインタビューで「心の距離が離れて精神的に孤立してしまった」とも語っていた。

 外野からは順調に活動できているように見えていても、ちょっとしたきっかけで活動が止まってしまったり、メンバーの関係性が崩れてしまう状況の時期もあったと思う。MAHO EMPiRE、YU-Ki EMPiRE、MiDORiKO EMPiREが作詞した「Have it my way」では〈お利口ちゃんじゃ終わらないって〉と歌っていた通り、恵まれたエリートグループというイメージへの違和感を感じていたかもしれない。「SUCCESS STORY」では〈破壊なくしては/進歩はないのさ〉と歌っていたが、それもグループの現状を赤裸々に表現し、それでも前に進むためにも踠く様子を歌っていたとも受け取れる。

EMPiRE / Have it my way [OFFiCiAL ViDEO]

 しかし今のEMPiREは良い雰囲気で前向きに活動している。現在の6人体勢になって1年以上が立ち、メンバーの信頼関係も深まりグループとしてよりまとまってきたと感じる。今では「最初から恵まれていたグループ」という人はいないだろう。実力も努力も現在のポジションにふさわしいぐらいに進化したからだ。

 最新EP『SUPER COOL EP』を聴けば音楽的な進化だけでなく、グループがより前向きに活動できていることが実感できる。EP収録曲でMAYU EMPiREが作詞した「SUPER FEELiNG GOOD」では〈はじめるよ Good Time/期待していいよ/居心地いい場所/気づけば夢心地さ〉と歌っている。これは今のEMPiREだから生まれた歌詞で、今のEMPiREだからこそ説得力を持たせて歌える前向きな歌詞だ。だから今のEMPiREの歌を聴くと心が震えるのだ。今はコロナ禍で思うようにグループの活動できない部分があるかもしれない。しかし彼女たちにはきっとアカルイミライが待っているはずだし、これからより多くの人々に音楽を届けてくれるはずだ。それぐらいに惹きつけられる魅力をEMPiREは持っている。

EMPiRE / SUPER FEELiNG GOOD [EMPiRE’S GREAT PARTY EXCEPTiON -SUPER COOL EGP-]

■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。‬ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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