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Novelbrightに聞く、ブレイクや偏見の目にも動じないバンドの核「上を目指すためにすべきことを常に考えている」

リアルサウンド

20/5/27(水) 16:00

 大阪を拠点に活動する5人組バンド、Novelbright。きっと名前だけでも知っている人は多いだろう。抜群の歌唱力と、2000年代から2010年代の日本のロック、ポップスのど真ん中を昇華したスケールの大きな楽曲が大きな反響を呼んでいる彼らだが、ブレイクのきっかけは
2019年。春から行っていた路上ライブの様子がSNSにアップされると、たちまち「めちゃくちゃ歌の上手い人がいる!」と話題となり、TwitterやTikTokを中心に巨大なバズを引き起こした。

 その後、路上ライブには観客が殺到し、iTunes総合チャートに2カ月連続で2作品が同時ラインクイン、Spotifyバイラルチャートでは8週連続1位を獲得。AWAの「2020年にくるアーティスト」ランキングで1位、『バズリズム』の「これがバズるぞ2020」でも1位、さらに『めざましテレビ』や『ZIP!』といった朝の情報番組でも紹介されるなど、一躍、バンドシーンのトップランカーの座に躍り出た。

 しかし、その華やかなムーブメントの裏には、この巨大なバズを真正面から受け止めることができるくらい強固な、ライブバンドとしての下地があった。この10年間は、「バンド音楽はもう厳しい」「音楽業界はもう厳しい」と言われた時代でもあった。2013年の結成以降、ロックバンドや音楽業界を取り巻く状況が変わっていく、その時代の荒波のなかで、メンバーチェンジを繰り返しながらもライブハウスを中心に地道な活動を続けてきたNovelbright。その決して簡単ではない道のりがあったからこそ、彼らはこの時代の変わり
目に、羽ばたくための翼を手に入れることができたのだろう。

 このインタビューでは、竹中雄大(Vo)と沖聡次郎(Gt)にバンドの歴史から新作
『WONDERLAND』にかけた想いまで、じっくりと語ってもらった。(天野史彬)

バンド結成の背景とそれぞれのルーツ

ーーそもそも、Novelbrightはどのような経緯で結成されたバンドなんですか?

雄大:僕が高校2年生のときに友達と趣味でやっていたONE OK ROCKのコピーバンドがあったんですけど、そのコピーバンドのライブがすごく楽しくて。まぁ、単純にチヤホヤされて勘違いしただけのような気もするんですけどね(笑)。同世代でバンド活動をしているコミュニティがあって、一緒にライブをすると、毎回、高校生ながらお客さんが2~300人くらい入っていたし、盛り上がっていたんですよ。それがすごく心地よくて、「これ、仕事にしたいわ」と思ったんです。高3になったときにそのコピーバンドは終わったんですけど、「この先もバンドで頑張っていきたい」という思いで、そのときのメンバーとNovelbrightを結成しました。なので、結成まで遡ると17歳の夏になりますね。

ーー雄大さんにとって、Novelbrightはオリジナル曲をやる初めてのバンドだったということですよね。

雄大:そうですね。もちろん、当時は今と比べるとブレブレでしたし、いざNovelbrightとして大阪に出てきてライブをしてみたら全然お客さんが入らなくて、「今までと全然ちゃうやん!」という感じにはなりましたけど(笑)。でも、「売れてやる」っていう闘争心、ハングリー精神は今と変わっていない気もします。あと、当時からしっかり自分の歌を押し出したいな、とは思っていましたね。ロックのサウンドでありつつも、自分の歌唱力をしっかりアピールできるような楽曲を作りたいというのは、当時から意識していました。

ーー雄大さんと聡次郎さん、それぞれの音楽的なルーツは、どういったものですか?

雄大:最初に言ったように高校生の頃にはコピバンをやるくらい、バンドといえばONE OK ROCKが好きだったんですけど、初めてどっぷりハマるくらいに大好きになったアーティストは、ゆずさんでした。中学生の頃からずっと聴いていて、ファンクラブにも入っていたんですよ。すごく好きなんで、レギュラーラジオも毎週聞いていたし、ファンクラブのコンテンツも全部見るし、インタビューも漁って読むしっていう感じで。そもそも、ゆずの「夏色」が弾きたくて、アコギも始めたんです。今でも自分が書く歌詞やメロディには、ゆずの影響はすごく出ているなと思いますね。

ーー雄大さんにとって、ゆずはどんなところが魅力だったのでしょう?

雄大:もちろん、音楽が自分の感覚に刺さってきたのは一番なんですけど、それに加えてゆずって、ふたりの仲のよさがすごく伝わってくるんですよね。ラジオも聞いていてもすごく楽しそうだし。そこはONE OK ROCKも同様なんですけど、仲のよさが伝わってくるグループって、見ていて幸せな気持ちになれるじゃないですか。音楽性に加えて、人間性に惹かれたところも大きいと思いますね。

ーー聡次郎さんはどうですか?

聡次郎:僕は小中学生の頃、ちょっと内気な性格で、あまり学校に行けなくて。その頃、ちょうどYouTubeが流行り始めた時期だったんですけど、動画でたまたま流れてきたJanne Da Arcのライブ映像を見たとき、すごく惹かれるものがあったんですよね。ステージとお客さんの一体感が映像からも伝わってきて、「いつか、こういうステージに立ちたいな」と思いました。それが、自分が音楽に目覚めたきっかけでしたね。中でも、僕はギターに惹かれて。それで高校生になったとき、「挑戦してみよう」と思ってギターを買いました。

ーー何故、惹かれたのはギターだったのだと思いますか?

聡次郎:やっぱり、ギターソロの華やかさ、目立っている感じがかっこよかったんだと思います。素人から見ても「難しいことをしているんだな」ってわかるじゃないですか。同じ人間だけど、もはや人間離れしているような人たちに惹かれたし、煌びやかなギタリストたちが自分にとってはヒーローでした。それで、高校生の頃に軽音部に入ってギターを弾いていたんですけど、進路選択の時期に差し掛かったときに、「ずっとギターを弾いていたいな」って決めました。ただ、僕は雄大とは違って、バンドも組んでもいなかったし、バンドで有名になりたいという気持ちも、当時はなくて。どちらかというとソロであったり、スタジオミュージシャンという形であったり、手に職をつけて音楽を届ける仕事をしたいなと思っていましたね。

ーー好きなギタリストというと、どんな人が思い浮かびますか?

聡次郎:Janne Da Arcのギターのyouさんはもちろんですけど、段々と自分が好きになった人に影響を与えた人たちのことも調べるようになって。そう考えると、僕が今までで一番ギターで影響を受けたのは、スティーブ・ヴァイですね。彼以外にも1980年代に活躍したギターヒーローたちには特に影響を受けているし、今でも憧れ続けています。

「雄大は音楽に対してピュアなんです」

ーー聡次郎さんはアルバムのなかでインスト曲などの作曲を担当していますけど、ギタリストに留まらない音楽家然としたところもまた、スティーブ・ヴァイのような多面的な人に通じるものがあるように感じます。Novelbrightは、曲によって、作曲は雄大さんと聡次郎さんの共作であったり、雄大さんと海斗さんの共作である場合もありますが、曲作りはどのように行っていますか?

雄大:曲は基本的に、まず聡ちゃん(聡次郎)と海斗くんがボーカルメロディの入っていないトラックを作ってくれるんです。そこに、僕がメロディと歌詞を付けて、みんなでアレンジするっていう形ですね。

聡次郎:僕らは、雄大の声が乗る前のトラックの段階で、ピアノやシンセ、ストリングスなんかまで入れ込んで、そのままミックスまで持っていけるくらいのクオリティまで作り込むんです。そこに雄大の歌が乗せたあとで、「ここはいらないな」という部分を削っていく、いわば「引き算」のアレンジの仕方をしているんですよね。いつも、雄大に聴いてもらう段階では「牛丼トッピング全部乗せ」みたいな状態なんですけど(笑)、そのうえで雄大に歌ってもらうと、よりコッテコテのものができ上がる。なので、そこから削ぎ落としていくんです。きっと、僕らの作曲方法はかなり変わっているんじゃないかと思うんですけど(笑)。

ーーそうですよね(笑)。

雄大:自分たちには、このやり方があっているなと思いますね。普通のギターのコードだけを渡されてメロディを付けるのと、音源がある程度完成された状態のものにメロディを付けるのでは、僕のテンションも変わってくるんです。やっぱり、ある程度完成されたもののほうがテンションは上がるし、聡ちゃんも海斗くんもそれをわかってくれているので、やりやすいですね。

ーーせっかくなので、雄大さんと聡次郎さんが、それぞれお互いを音楽家としてどのように見ているのか、知りたいですね。

聡次郎:これは全然悪い意味じゃなく、雄大は音楽に対してピュアなんですよね。僕は音楽に対して理論やセオリーを踏まえて制作するタイプなんですけど、雄大はそうではなくて、自分が気持ちいいと思うメロディや心にストレートに響く歌詞を真っ直ぐに書くことができるボーカリストで。その、淀んでいないピュアな感じが魅力だなと思う。

雄大:……(恥ずかしそうに笑う)。

ーーでは、雄大さんから見た聡次郎さんは?

雄大:もう本当に、聡ちゃんが言ったことの反対というか。聡ちゃんの言うように、僕は感覚だけで思うがままに音楽をやってきたんですけど、聡ちゃんは本当に勉強熱心なんですよね。理論も頭に入れているし、僕なんかじゃ触れないソフトも勉強して触れるし、音楽に対して本当に真面目な姿勢の人だと思います。曲作りも、緻密に考えながらやっているので、本当に尊敬します。

ーーお互いが補い合っている関係性なんですね。

雄大:そうですね。それに、聡ちゃんと海斗くんも、また違うタイプなんですよ。海斗くんはきっと僕に近くて、感覚で音楽を作るタイプなんです。そうやって全然タイプの違う人間が作るからこそ、タイプの違う曲たちが生まれてくる。そこもNovelbrightのいいところなのかなと思います。

「出会った頃の印象は絵に描いたようなロックキッズ」

2017年4月 ライブ模様

ーーNovelbrightは2013年に結成されていますが、去年、ベースの圭吾さんの発信で、SNSを通して路上ライブの模様が拡散されたことをきっかけに認知を広げました。ここまで6年の月日がありますけど、この6年間は、どんな期間だったと思いますか?

雄大:路上ライブが拡散されるまでは、地道に全国のライブハウスを駆け巡っていて、いまみたいに「SNSを活用しよう」みたいな考え方はほとんどなかったんですよね。先輩バンドたちが歩んできたように、全国のライブハウスでイベントを組んで対バンのお客さんをとっていくとか、YouTubeにMVを上げるっていうことを繰り返していく。その地道な努力がいつか実る日が来るだろうと思い描いていて。でも、もちろんすぐにドカンと広まることもなく、10人だったお客さんが12人になって、15人になって、20人なりっていう感じでした。だから……ずっと地下にいて、2019年の下半期にやっと地上に出ることができたっていう感覚はあります。

聡次郎:圭吾以外のメンバーは古風というか、地道に活動しながら、芽吹くときを待つっていうスタンスで信じてやってきていたんですよね。だからこそ、SNSを通して動画が拡散されるっていうのは本当に今の時代ならではで、驚きました。時代によって、バンド活動の在り方やプロモーションの仕方も変えていくべきものなんやなぁとも実感したし。

雄大:そうやね。去年一気に広まったタイミングは本当に驚いたし、同時に、「俺たちのやり方はこれなんや」っていうものを見つけることができた感じもあって、自分たちの活動方針に自信がついた瞬間でもありました。もちろん、「バンドがSNSやTikTokを使うのか?」とか「ロックじゃない」とか偏見を持たれる部分もあると思うんですけど、正直、「売れたもん勝ち」やと思うし、ライブハウスを駆け巡っていた頃も、今も、僕自身の気持ち自体はなにも変わっていないんです。「バンドで上を目指すためになにをすべきなのか」っていうことをずっと考えている。もちろん、その時々の流行や、それに対してのスタンスは変わっていきますけど、根柢で考えることはずっと変わっていない気がしますね。

2018年12月 ライブ模様

ーー聡次郎さんは2017年にNovelbrightに加入されていますが、加入当時、Novelbrightはどのように見えていましたか?

聡次郎:出会いの話になるんですけど、加入する前、僕はスタジオでアルバイトをしていて、Novelbrightは、そのスタジオを使ってくれていたバンドだったんです。出会った頃の印象は、もう絵に描いたようなロックキッズというか。「ONE OK ROCKが好きなんやろうなぁ」っていうイメージでしたね(笑)。

雄大:ははは(笑)。

聡次郎:年齢にしてはライブハウスにたくさん出ているし、ツアーも回っているし、すごく活発なバンドやなとも思っていました。音楽的な部分でいうと、やっぱり雄大の声が特徴的で。スタジオ店内で曲を流していたときも、「歌に芯があるなぁ」とその頃から思っていましたね。言い方に語弊があるかもしれないですけど、「ボーカルだけ飛びぬけて目立つバンドだな」とも思っていました(笑)。当時は音楽性をラウドっぽいものに振り切っていたので、それもよさではあったんですけど、「もっと老若男女に届くような音楽性にしたらどうなるんやろう?」とも思っていて。

「なにがなんでも“Novelbright”で売れたい」と思っていた

2019年7月 路上ライブの模様

ーースタジオ店員だった聡次郎さんは、どういった経緯で加入することになったのですか?

聡次郎:Novelbrightが2016年に1度活動休止をして、雄大と前のベースが新しいメンバーを募っていたときに、今のメンバーである海斗とねぎが入ったんです。そのメンバーで再出発する、という話を僕もスタジオ店員として聞いていたんですけど、全員がスタジオに揃ったときに、「聡次郎も一緒にスタジオに入ってみん?」みたいな感じになったんですよね……なんとなく。

ーーなんとなく、なんですか。

聡次郎:なんとなく、です(笑)。ほんとうに軽い気持ちで誘ってくれたんだと思うんですけど、いざ一緒に音を出したら、すごく安心感があったというか、初めて音を合わせていたのに、「もう3~4年一緒にやっていたっけ?」っていうくらいのフィーリングの合い方だったんですよね。

ーー雄大さんには、聡次郎さんと一緒にバンドをやるビジョンがあったわけですよね?

雄大:いや、それが……今のメンバーである海斗くんにしても、ねぎにしても、圭吾にしても、一人ひとりに誘った経緯が深くあるんです。でも、総ちゃんに関しては、ビックリするくらい深い経緯がないんですよ(笑)。気がついたらメンバーだった、くらいの感じで。

聡次郎:ははははは(笑)。

ーーそうなんですか(笑)。

雄大:一応、聡ちゃんは海斗くんと地元が一緒というのは聞いていたし、ギタリストであることも知っていたので、「1回、一緒に音出してみようか」と誘ったんですけど、それは本当に軽いノリだったんですよね。でも、いざ音を出したら「なんだか、すごくいいなぁ」となって。そのスタジオ終わりに居酒屋に行ったんですけど、そのときに「聡ちゃんも入るよね?」「うん、入る~」みたいな感じになっていたんですよね(笑)。

聡次郎:ほんと、そんなノリやったなぁ(笑)。

2019年9月 路上ライブの模様

ーーなるほど(笑)。結果として今、雄大さんは唯一、結成時からのオリジナルメンバーとなりますが、解散やソロ転向などの選択肢を選ばず、メンバーが変わりながらも「Novelbright」の看板を掲げ続けることができたのは、何故だったのでしょうか?

雄大:ひとつ思っていたのは、やっぱり、Novelbrightって僕にとっては初めて組んだバンドなんですよ。初めて組んだバンドで売れたら、カッコいいじゃないですか(笑)。

ーーはい(笑)。

雄大:それに、Novelbrightというバンド名もかなり気に入っているし、このバンドで作ってきた曲もたくさんあって。もしバンドを変えてしまったら、その曲たちをもう演奏しなくなってしまうと思うんですよ。それもイヤだったんですよね。例えば『SKYWALK』に入っていた「Walking with you」とか、新作の『WONDERLAND』に入っている「Photo Album」という曲なんかは、10代の頃に作った曲なんです。そういう曲たちに対する思い入れもあるので、「なにがなんでもNovelbrightで売れたい」と思っていましたね。

ーーなるほど。

雄大:ただ、音楽を辞めようと思ったことはないんですけど、1回だけ、今のメンバーが入る前の活動休止中に、Novelbrightを解散して別の形で音楽活動を始めようかなと思ったことはあったんです。でも、当時のメンバーが「いや、Novelbrightで活動していこうよ」と言ってくれて。「たしかに、そうやな」と思いました。結果、Novelbrightとして続けてきて本当によかったと思いますね。

ーー5月27日に1stフルアルバム『WONDERLAND』がリリースされますが、今、新型コロナウイルスの影響で、世界中が、先の見えない混沌とした状況のなかにありますよね。今日もリモートで取材させていただいていますし、こうした状況下で自分たちの新しい作品がリリースされることに関しては、どのような気持ちですか?

雄大:そうですね……イベントやツアーもなくなってしまったんですけど、まず、作品が届けられることにホッとしているという感じです。音楽さえも届けることができなくなってしまったら、僕らの存在意義はないと思うので。やっぱり音楽を届ける仕事だし、音楽さえ届けることができなくなってしまったら、僕らはどうしたらいいのかわからない。ライブもできなくて歯がゆい思いをすることもあるけど、今はサブスクも発達しているし、自分たちが作った音楽を届けることができるのは、本当によかったなと思います。

「みんなと僕ら」で歩んできた道のりを歌にした「時を刻む詩」

ーーNovelbrightは『バーチャルライブTOUR』と称して、バンドでのライブ配信やメンバー個人での配信、リモート演奏なども行っていますね。「今、どうすべきか?」ということは、やはりメンバー間でも話し合われたりしていますか?

雄大:めちゃくちゃ話し合っていますね。今年、各所で「2020年期待の~」みたいな形で紹介していただいていたし、本当に「今年、これから」というタイミングで、予定していた大きなフェスや、大会場でのワンマンツアーができなくなって、正直めちゃくちゃ悔しい思いはあって。でも、大変なのはみんな同じなので、「こういう状況だからこそ、俺らはこんなことができるぞ」ということが見せることができればと思って、今も、いろいろ計画を練っています。

ーー現状、どのような手応えを感じていますか?

雄大:「広がり」よりも「深さ」が出てきているというか。『バーチャルライブTOUR』をすることによって、去年のように人を増やしていくということではなくて、今までNovelbrightを応援してきてくれた皆さんと、より深くつながるきっかけになっているのかなと思いますね。今、応援してくれる人たちを寂しがらせることなく、深い関係でいることができているのかなと思う。

聡次郎:そうやね。自宅からの配信でやることによって、今まで以上に僕らのパーソナルな部分を知ってもらえるようになるし、それに、SNSやコメントを通して、お客さんからの意見――それはいい意見も悪い意見も、リアルで見ることができているんです。今まで僕ら自身には見えなかったことが、このタイミングだからこそ見えてきている。なので、『バーチャルライブTOUR』はやってよかったなと思っていますね。お客さんと新しいアイデアを共有することもできるし、応援してくれている人たちとバンドを大きくしていけるという一帯感にもつながっていると思います。

ーーでは、アルバム『WONDERLAND』についても伺いたいのですが、本作を作るに当たって、事前にどのようなことを考えられていましたか?

雄大:前に作品をリリースしたのが去年の9月なんですけど、きっとそれ以降に路上ライブやSNSを通して僕らのことを知ってくれた人たちが多いと思うんです。なので、今まで以上に作品に対する期待は上がっていると思う。そういう状況のなかで、「Novelbrightは今、こういうことができるんだぜ」って、いろんな手札が出せるアルバムにしたいなと思っていました。僕らは欲張りなんで、「邦楽ロックのリスナーに刺さってほしい」とか、そういう限定的な作り方はしないんですよね。ロックバンドが好きなリスナーにも届いてほしいし、お茶の間にも届いてほしい。学生さんにも、親世代の人たちにも、本当に、老若男女に届いてほしいんです。そういうことは、曲目を考えるときにも考えていましたね。

ーー先ほども少し話に出ましたけど、4曲目の「Photo album」は2014年の自主制作アルバムにすでに収録されている曲なんですよね。この曲が改めて収録された理由は?

雄大:この曲は18歳の頃に作った曲なんですけど、本当に思い入れが強い曲で。当時、こういうバラードを書いたことがなかったんですよ。もっと力強く前向きな歌が多かったなかで、恋愛をモチーフにした曲自体、初めてで。こっぱずかしさもありつつ、自分で言うのもなんですけど、「ピュアな気持ちで書いたなぁ」と今になって思います(笑)。前に収録されたのはライブ会場限定盤だったので、今回、初めて全国流通盤にこの曲は収録されるんですけど、ライブでやっていることもあって、嬉しいことに、今、僕らを応援してくれている人たちにもすごく愛されている曲になっていて。今回初めて音源で聴くっていう人もたくさんいると思うし、僕としても「やっと収録できる」という感じで嬉しいです。

ーー本作に「Photo album」が収録されていること自体が象徴的ですが、Novelbrightは「過去」を捨てないですよね。単純に未来への想いを語るのではなく、あくまでも「過去を背負ったうえで未来を語る」というスタンスがある。それが、雄大さんの作詞にも強い説得力を与えているように思います。例えば「君色ノート」もそうですし、「夜空に舞う鷹のように」や「時を刻む詩」も、そういう曲に聴こえました。

雄大:そうですね。自分の曲は過去が原動力になることが多いと思います。やっぱり、険しい道のりを歩んできたし、悔しいこともあったけど、それが今の自分たちを作っているんだと思うので。例えば、「夜空に舞う鷹のように」も再録の曲なんですけど、3年前くらいにめちゃくちゃ悔しい出来事があって、本当に辛い気持ちになっていった時期があったんです。そのときに、「誰もが見向きもしてくれなくても、絶対這い上がってやろう」という気持ちで作った曲だったんですよね。

ーーそういう曲も、このアルバムには必要だったということですよね。

雄大:そうですね、それに「時を刻む詩」は、ここまでの歩みのなかで、ファンの方たちが僕らを押し上げてくれたんだっていうことを歌いたくて。僕らはテレビも出たことなかったし、フェスも出たことなかったし、タイアップもやったことがなかった。周りに押し上げてくれる大人がいたわけでもなく、自力で頑張ってきたところに、みんながSNSで広めてくれたバンドなんです。「みんなと僕ら」で歩んできた道のりを歌にしたくて、作った曲です。

バンドに必要不可欠なのもの=メンバー同士のコミュニケーション

2020年2月 ライブの模様

ーーあと、「ENVY」はサウンドも歌詞も刺々しくて印象的でしたね。この曲ではSNS批判というか、SNSの情報や同調圧力に流されていく人たちに対する警笛のように聴こえました。Novelbrightがこのモチーフを歌うことに、すごく意味があるなと。

雄大:20歳の僕が作る歌だろうが、22歳の僕が作る歌だろうが、24歳の僕が作る歌だろうが、そのときに抱いている感情を歌にすることが大切なんだと思っていて。そういう意味で、「ENVY」は24歳の、今の僕が直面していることを歌っている曲だなと思います。SNSを通して知ってくれる人が増えて嬉しい反面、便利な時代だからこそ、情報を鵜のみにする人が多いなと思うんですよね。誰かから聞いただけのことを真実だと受け止めてしまったり、SNSや動画で見たことがすべてだと思ってしまう人もいる。でも、実際に自分の目で確かめてみたら、それは信じていた情報と全く違うものだった、ということもあると思うんです。

ーーそうですよね。

雄大:そこは、僕も最近すごく気をつけているところで。それに、さっきも少し言いましたけど、Novelbrightは路上ライブやSNSで広まったぶん、それをよく思わない人たちだっているんです。路上ライブの動画を見ただけの人のなかには、「こいつらはただのアイドルバンドだ」っていう人もいる。たしかに、昔ながらの邦楽ロックの考え方を持っている人たちからしたら僕らはイレギュラーな存在なのかもしれないけど、そう思っている人たちに対して、「直接、ライブを観に来てみろ!」って思うんですよね。「情報に惑わされていないで、直接、自分の目で良し悪しをたしかめに来い!」って。そういう思いを込めて「ENVY」は書きました。

ーーめちゃくちゃ尖っている曲ですよね。でも、このタイミングでこの曲を世に出すことができるのは、めちゃくちゃかっこいいなと思います。

雄大:ありがとうございます(笑)。

ーー最後に、おふたりそれぞれに聞きたいのですが、Novelbrightにとって「必要不可欠なもの」があるとすれば、それはなんだと思いますか?

聡次郎:僕は、メンタルな部分が大事なバンドだと思います。僕らがなぜ、音楽をやっているかといえば、それは聴いてくれる人を喜ばせたいからなんですよね。それが原動力であるべきで、商業主義に走ってしまっては元も子もない。お金儲けのために音楽を作るっていうのは、本当に悲しくて、しょうもないことだと思うんです。なので、Novelbrightに必要不可欠なのは「届ける想い」であり、「心」の部分を大事にしていきたいですね。

ーーでは、雄大さんは?

雄大:難しい質問ですね。「Novelbrightにとって必要不可欠なのもの」か……。強いていうなら、メンバー同士の深いコミュニケーションですね。

ーーその心は?

雄大:最初に言ったように、僕がゆずやONE OK ROCKを好きだったのは、音楽性はもちろんですけど、メンバーの仲がよくて、見ていて朗らかな気持ちになれるからだったんですよね。「この人たちは、すごく楽しく音楽をやっているんだな」と思わせてくれる人たちが好きだなと思うんです。もちろん、その裏にはいろんな不安や葛藤があると思うけど、「みんなで楽しく音楽をやる」という根底の部分を忘れていない。そういう存在に憧れてきたからこそ、Novelbrightもずっとそういうバンドであれたらいいなと思うんです。特に、僕らは5人ともお金がない状況のなかで、路上ライブで全国を駆け巡ったバンドですからね。これからどれだけバンドが大きくなっても、メンバーで話し合って何事も決めていくということは、大切に守り続けていきたいなと思います。

Novelbright 1stアルバム『WONDERLAND』全曲解説プレイリスト
Novelbright『WONDERLAND』

■リリース情報
『WONDERLAND』
2020年5月27日リリース
¥2,800 (税込)
1. ランナーズハイ
2. Believers
3. 君色ノート
4. Photo album
5. おはようワールド
6. ENVY
7. 夜空に舞う鷹のように
8. 夢花火
9. スタートライン
10. candle
11. Prologue ~Before the dawn~
12. 時を刻む詩
各店舗別の特典詳細はこちらのページまで

Noelbright公式サイト

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