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『MIU404』を盛り上げるゲストたちの熱演 これからの活躍が期待される俳優の見本市的な側面も?

リアルサウンド

20/7/20(月) 6:00

 コロナ禍にあって新たに金曜ドラマの顔となった『MIU404』(TBS系)が前評判以上の話題をさらっている。それもそのはず、大ヒットドラマ『アンナチュラル』(TBS系)と同じく脚本家・野木亜紀子作品、制作陣も同じ座組だ。社会風刺的描写が随所に織り込まれ、ドキュメンタリー要素も非常に色濃いながら、エンタメ作品として見事成立している。『アンナチュラル』では死人の声なき声を、本作では犯罪者や道を踏み外してしまった者たちの本音を救い上げ、少数派の弱者の声を代弁している。

参考:『MIU404』に騙され続けている気がしてならない 死を恐れなかった星野源の真意とは?

 綾野剛×星野源のW主演に加えて、第3話での菅田将暉の登場が(またその登場シーンが一瞬で、第4話では一切出演がなかったことも)大きな話題を呼んでいるが、毎話ごとのゲスト出演者にも目が離せない。

 特にこの第3話は、高校の陸上部が舞台になっていただけあって、今後さらなる活躍が注目される若手キャストたちの配役が目白押しとなった。元陸上部員で、期待のエースだっただけに理不尽な廃部に追い込まれたことに憤りを覚える成川を演じたのは鈴鹿央士。彼のデビューのきっかけは何と広瀬すずの後押し。通学していた高校で映画『先生!、、、好きになってもいいですか?』のロケが行われ、たまたまエキストラとして参加したところ彼女の目に留まったのだと言うから驚きだ。大学入学を機に上京した彼は、その後NHK連続テレビ小説『なつぞら』で恩人・広瀬すずとも共演を果たしている。また、見事オーディションで勝ち取った天才ピアニスト役で初出演した映画『蜜蜂と遠雷』にて一躍有名になった、まさにシンデレラボーイである。

 成川と同じチームメイトの元陸上部員・勝俣役を演じたのは前田旺志郎。幼少期には兄弟漫才「まえだまえだ」の弟、ボケ担当としてお茶の間に親しまれていた彼が、いつのまにやら声変わりもして、マネージャーだった真木カホリ(山田杏奈)に恋心を寄せる高校生役を演じているのだから、時の流れの速さを感じずにはいられない。鈴鹿の持つ硬派さ、隠し切れない優等生ぶりが、大人の都合によって自分たちの青春の舞台を奪われてしまった青年たちのやり場のない無念さを際立たせ、また前田の素朴さと無邪気さが、持て余したエネルギーの発散のためにゲーム感覚で行われるイタズラ通報の裏にある悲痛さ、少年らの見過ごされてきてしまった切実なSOSサインを印象付けるのだ。山田杏奈は前田旺志と同じく19歳。昨年2019年はヒロイン役を務めた映画『5億円のじんせい』『小さな恋のうた』の上映が相次ぐ注目若手女優だ。『小さな恋のうた』で轟かせた透き通った美声も記憶に新しい。極め付けに彼女をさらう犯人役にはシンガーソングライターの岡崎体育と意外性がありつつも絶妙と言うしかない配役っぷりを見せた。

 『アンナチュラル』でも第7話「殺人遊戯」に神尾楓樹と望月歩が出演し、いじめによる自殺というセンセーショナルな題材とともに注目を集めた(この2人はその後『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)でも同じクラスメイトとして出演している)。

 さらに第3話でこの事件の対応に追われるのが『アンナチュラル』と同じく西武蔵野署の毛利刑事(大倉孝二)とその部下・向島(吉田ウーロン太)。こんな粋な仕掛けによって2作品が繋がっていたことに興奮したファンも多かったのではないだろうか。野木作品と言えば、1話完結型ながら本題の部分は作中を通してずっと進行しており、その伏線回収が見ものだが、これだけの要素を60分に詰め込めるのは流石としか言いようがない。

 第2話でゲスト出演し反響の大きかった松下洸平。NHK連続テレビ小説『スカーレット』にて、主演を務めた戸田恵梨香の夫役として抜擢されたが、本作では“ハチさん”のような真面目で優しい好青年をベースにしながらも、ラストに狂気性を覗かせる逃走犯役を演じた。逃走中、人質にした田辺夫妻との間に不思議な共依存関係が芽生え、互いに叶えられなかったことを補い合う存在になる。ここで彼から滲み出る善良さ、真面目すぎるがゆえの切迫した思いや押し殺してきた自身の想いがストーリーの要になってくるわけだが、そのお人好しっぷりと言ったら職場でも無遅刻無欠席、父親にもぞんざいに扱われるばかりでなく、人質にとったはずの夫婦からも一縷の望み、いわば自分たちの勝手なエゴを押し付けられてしまう程だ。「善良な罪人」という矛盾を演じ切った松下に称賛の声が上がっていた。

 これまでの作品とは少し違う役どころで配置されていたのは、第4話で1億円横領犯・青池を演じた美村里江にも言える。これまで強烈な主人公キャラの隣にいて振り回される側の役回りが多く、本作での青池も搾取される側に常にいる弱者だったが、そこからの脱却を図ろうと大胆に画策する。

 そしてこの青池の事件と深い関わりがあり、桔梗(麻生久美子)の息子の世話役の羽野麦役に黒川智花、特派員REC役の渡邊圭祐など、これから本作でどのような役割を担っていくのかまだまだ未知数で気になる存在が控えている。

 題材もあたかもこれからの日本がぶち当たる社会課題を半歩先に示唆しているかのような作品だが、同じくゲスト出演者についても今後ますます活躍が期待されるキャストの見本市のような、お披露目会的な側面もある野木作品で、彼らの魅力がどう調理されるのか興味は尽きない。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。

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