Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

「死んだら推しに戒名をつけて欲しい…」 中高年向けアイドルレクチャー本の実用性を読み解く

リアルサウンド

16/3/17(木) 14:00

書評界のトップが52歳でアイドルにドハマリ

 大森望は、1961年、高知県生まれの書評家・SF翻訳家・SFアンソロジストだ。著書、共著に『21世紀SF1000』、『新編 SF翻訳講座』、『文学賞メッタ斬り!』シリーズなどがある。また、訳書としてはマデリン・アシュビー 『vN』、コニー・ウィリス『航路』『混沌【カオス】ホテル』など、多数。2014年には責任編集を担当した『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』で、第34回日本SF大賞特別賞と第45回星雲賞自由部門を受賞した。

 さらに、2015年10月に放送された『ニッポン戦後サブカルチャー史II 第2回 SF編』(NHK Eテレ)にパネラーとして出演。『本の雑誌 2013年3月号』では大森望特集が掲載され、異例の売り上げを記録したという。つまり、日本の書評界を代表し、SF好きの間では知らないものはいない存在なのだ。

 そんな大森が、今から2年前の52歳の頃、アイドルにハマった。

モー娘。、℃-ute、スマイレージ…清く正しい“ハロプロDD”化

 大森のアイドルへの傾倒が始まったのは、2010年の『AKB48総選挙』からだという。それまではキャンディーズ、ピンクレデイー、小泉今日子、おニャン子クラブ、モーニング娘。…と関心はあったが、あくまで一般的なレベルであり、アイドルファンと呼べるほどには情熱を持てず、AKB48以降はももいろクローバーZの配信番組やMVを観賞するなど、在宅活動を緩く続けていたそうだ。そんななか、2013年9月に乃木坂46の「制服のマネキン」「君の名は希望」などのMVをネットで観たことで、アイドル熱に火がつくことに。乃木坂のライブ会場へと足を運んだ後は、モーニング娘。℃-ute、スマイレージ(現在はアンジュルムに改名)と、“ハロプロDD”(ハロー!プロジェクトのアイドルなら誰でも大好き)化。今は足繁くライブ現場に通うほど、“清く正しいハロオタ”に変貌している。

 このように大森がすんなりとアイドルにハマれたのは、SFというオタクにも支持されているシーンに常に身を置いていたため、ということが、理由としては大きいだろう。さらにもうひとつ、世代的な感覚も挙げられるのではないだろうか。ハロプロやAKBを思春期に経験している若い世代ほどではないにせよ、最もオタク差別が激しかった90年代に青春期を過ごしておらず、既に大人だった大森にとっては、アイドルカルチャーはフラットな目線で見れるものだったのかもしれない。

入門書として極めて実用的 主観的ではなく“外向き”の本

 同書の序章にはこう書かれている。

「歌舞伎やクラシック音楽やテニスに入門するように、アイドルに入門してもいいんじゃないか。まずは何から観ればいいのか、ライブのチケットはどこで買うのか。コンサートには何を持っていくべきか。会場で守るべき作法があるのか。……などなど、本書では、中高年(30代~60代のおじさん、おばさん)がアイドルにハマり、アイドルの現場に足を踏み入れるためのごくごく初歩的かつ実用的なガイドとともに、2015年のアイドル現場を日記風に紹介していきます」

 また同書の構成としては、レクチャー&コラムとレポート(ほとんどがハロ現場)が交互に挟まり、最後にアイドルオタクとして知られるタワーレコード代表取締役の嶺脇育夫社長との対談で締める、という形となっている。

 全体的に「あくまで自身はアイドルオタクとしては新参者」という視点が貫かれており、主張が激しくなく、文体がライトであるせいもあって、とても読みやすい。かつ、入門書としての基本を押さえているため、極めて実用的だ。アイドルカルチャーが定着化した現状を考えると、同書は今後より重宝されて行くものになりそうだ。

 また、アイドル評論本としては、そのように一般層向きに書いてある点に、高い価値を感じる。アイドルファン内に向けて主観的にだけ書くと、読み物として面白くあったとしても、後には残りにくい。アイドルシーンの拡大とより深い定着を願う筆者としては、こうした「外向き」の本の方が、本という形にして残す意味を、より強く感じるのだ。

「死んだら戒名をつけて欲しい」「推しメンの名前で弔電が届く」

 とはいえ、筆者が最も記憶に残ったのは、第5章の62歳のハロオタ・Zom氏のインタビューだ。アイドルオタクの高齢化について考える流れで、彼はファンクラブに「(自分が)死んだら戒名つけてほしいな」「“揺りかごから墓場まで”を考えるべきやと思うねん」「あらかじめ推しメンの名前を登録しとくと、死んだとき、その推しメンの名前で弔電が届くとかな」と、死後までをオタ活動に捧げるようなアイディアを提案している。サイン、握手、チェキ、バスツアー、ハグなど、様々なアイドル商法、接触サービスが日々インディーズシーンを中心に考案、実践されており、その様相はもはやエクストリームスポーツさながらだ。このクレバー過ぎるアイディアが万が一アイドル側に受け入れられたとしら…、シーンにパラダイムシフトが巻き起こるのは間違いないだろう。

■イベント情報
『ブクドル・ユニオン 第6回 「50代からのアイドル入門」発売記念 ライブ&トークイベント』
日時:2016年3月17日(木) 19:00~(開場:18:45)
出演
<ライブ>
寺嶋由芙
<トーク>
寺嶋由芙、浦えりか、大森望(著者)、岡島紳士(MC)
※当日は特典会も予定しております。
会場:dues新宿
新宿区新宿3-28-4新宿三峰ビル4F
Tel. 03-6380-6141
http://dues-shinjuku.diskunion.net/

<参加方法>
BIBLIOPHLIC & bookunion 新宿にてイベント参加チケットを販売。
A. 『50代からのアイドル入門』+イベントチケットつきセット
 3,500円(税抜) ※500円お得
B. チケットのみ2,500円(税抜)
※会場のdues新宿ではチケットの販売は行いません。
※イベントご入場時に別途1ドリンク代金頂戴致します。(500円)

■詳細はこちら。
http://diskunion.net/book/ct/news/article/1/57753

岡島紳士のアイドル最新マッピング

第21回 校庭カメラガールツヴァイ
校庭カメラガール運営に訊く、グループのコンセプトと野望「WARPやNINJA TUNEみたいになりたい」

第20回 アイドルの私服スナップ誌『idp magazine』
アイドルのストリートスナップが持つリアリティとは? 岡島紳士が『idp magazine』から考察

第19回 姫乃たま『潜行 ~地下アイドルの人に言えない生活』
地下アイドルとファン、“承認欲求”の行方は? 岡島紳士が姫乃たま初の単著を読む

第18回 ショートカット推進委員会写真集『0410』
武田玲奈、堀越千史、今井マイ……ネクストブレイク女子を発掘する、ショートカット推進委員会のビジョンとは?

第17回:Maison book girl
プロデューサー・サクライケンタが語る、Maison book girlの音楽的仕掛け 「アイドルポップスとして成り立つギリギリをやりたい」

第16回:ミリオンドール
現場派VS在宅派! アイドルオタクを最もリアルに描いた『ミリオンドール』の魅力に迫る

第15回:2015年グループアイドル注目ポイント
ももクロ、AKB48、BABYMETALらの動員はどうなる? 2015年、注目グループアイドルの展望

第14回:2014年グループアイドルシーン振り返り
BABYMETAL、でんぱ組.inc、乃木坂46、モーニング娘。… 2014年グループアイドルシーン振り返り

第13回:動員力
ももクロ、モー娘。から、リリスク、ベルハーまで…動員力から考察するアイドル界の現在

第12回:吉木りさ
『怒られたい』で話題の吉木りさ 天性のグラドルが持つ音楽活動の可能性とは?

第11回:lyrical school
ユルさとアツさで独自の進化 清純派ヒップホップアイドルグループlyrical schoolはブレイクするか?

第10回:橋本甜歌
tofubeats楽曲でデビュー 子役・ギャルモデルを経た橋本甜歌は「真のアイドル」を目指す?

第9回:篠崎愛
高い歌唱力を誇るカリスマグラドル 篠崎愛のソロ歌手活動を夢想する

第8回:いずこねこ
笑顔でネガティブな気持ちを歌うアイドル いずこねこの「終わらせ方」を読む

第7回:東京パフォーマンスドール
初代から受け継ぐ、東京パフォーマンスドールの先進性とは? 楽曲とライブから読み解く

第6回:道重さゆみ
卒業発表の道重さゆみに見る、アイドルがブレイクに至る”物語”の重要性

第5回:緑川百々子
ネットカルチャーのニューアイコン 緑川百々子はアイドルのボーダレス化を象徴する

第4回:さくら学院
BABYMETAL、松井愛莉、武藤彩未…ブレイクアイドルの登竜門「さくら学院」に迫る

第3回:せのしすたぁ
SMAPに影響されたリアルGMT!? 福井県のロコドル せのしすたぁ登場

第2回:BABYMETAL
BABYMETALが“接触なし”で快進撃  Perfumeに続くアミューズ系アイドルの行方

第1回:倉持由香
TMR西川貴教も賛同! グラドル自画撮り部部長・倉持由香が「グラドル界」を革新する

アプリで読む