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『リモートで殺される』は画面上の恐怖をえぐり出す 『あな番』にも共通するテーマ性

リアルサウンド

20/7/27(月) 20:47

 画面の向こうにいるのは、あなたのよく知っている人? それとも……。

 『あなたの番です』(日本テレビ系)の秋元康が企画・原案を手がけ、映画『リング』、『スマホを落としただけなのに』の中田秀夫が監督を務めたリアルタイムミステリー『リモートで殺される』(日本テレビ系)が、7月26日に放送された。

参考:『リモートで殺される』は『あなたの番です』に続く? 中田秀夫×秋元康のタッグが生む恐怖を予想

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出自粛によって、ウェブ会議システムを利用したリモートワークが広がっている。「リモート飲み会」が流行するなど、従来とは異なるコミュニケーションのあり方を模索する中で、各局もリモート環境下で制作されたドラマ作品を放送。そのような時勢に送り出された『リモートで殺される』は、オンラインのやり取りから生じる「闇」の部分をえぐり出す作品となった。

 本作の前提として共有したいのは、すべてがリモートで作られているのではないということだ。リモートで会話するパソコンやスマホの画面以外は、通常撮影によるショットで、言うなれば従来方式とリモートのいいとこ取りである。

 登場するのは、高校の同級生6人。野島絵里(本田翼)、野村優作(新田真剣佑)、藤原太(柄本時生)、井上透(早乙女太一)、北川淳二(前野朋哉)、そして松園佳代子(前田敦子)は、それぞれ自室あるいは勤務先のマンガ喫茶からリモートで再会する。ストーリー上は、もう一人、古郡一馬も登場するが、劇中で火事によって死んだとされる。

 物語は一馬の不審な行動と、7年前に高校の屋上から飛び降りた田村由美子(齋藤飛鳥)の死の理由をめぐって展開。話していくうちに、由美子は他殺ではないかという疑念や、由美子が飛び降りたとき、一馬がスマホで不審者を撮影していたこと、6人(と一馬)がケミカル系ドラッグを服用していたことが明かされる。遅れて駆け付けた透は、一馬が元カノである絵里のことを気にしていたと話すが、絵里はその発言に疑問を抱く。

 ひさしぶりに出会った同級生がリモートで顔を合わせることで感じる、微妙な違和感。互いの身に起きたことを知らないため、コミュニケーションに齟齬が生じ、そうこうするうちに1人目の殺人が起きる。画面に血を流した佳代子が映し出され、様子を見に行った淳二は連絡が取れなくなる。そして、太と優作の家にも怪しい人影が……。

 犯人は由美子を知る人物で、一馬を通じて、由美子を殺した人間を知っている。となると、必然的に候補は絞られてくるのだが、リモートで視野が狭まり、通信が途絶えることを逆手に取って、犯人は巧妙に姿を隠す。リモートで会話している間、話し手は自分の背後に気付かず、ウェブカメラに映らない場所で、犯行が着実に進んでいく。飼い猫の奇妙な鳴き声や、返り血でウェブカメラが赤く染まるショットなど、リモートを生かした演出と、最小限のBGMに効果音で恐怖をあおる仕掛けが絶妙だった。

 無人のリモート画面ほど怖いものはない。リモートでつながっているつもりでも、それは目に見える事実でしかなく、その過程で多くのものが欠落している。パズルの断片のような分割画面は、バラバラになった真実にもたとえられるだろう。見えないことの落とし穴と見えていることの恐怖というテーマは、顔の見える隣人が命を奪い合う『あなたの番です』にも通じるものだ。本編は真犯人が明らかになったところで終わるが、余韻を楽しみたい人はHuluで『殺人の裏側編』もご覧いただきたい。

 リモートの画面に映し出されるのは、自分以外の参加者だ。『リモートで殺される』で映ったのは6人だが、厳密に言うなら、そこには1人欠けている。それは、最後まで顔を明かさなかった一馬かもしれないし、画面の前のあなたかもしれない。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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