レイニーデイ・イン・ニューヨーク
20/7/2(木)
レイニーデイ・イン・ニューヨーク (C)2019 Gravier Productions, Inc./Photography by Jessica Miglio (C)2019 Gravier Productions, Inc.
映画はこれまで数々の奇跡を描いてきた。
ウディ・アレンという監督もまた奇跡を描いてきた監督である。
たとえば、『マンハッタン』でガーシュインの『ラプソディ・イン・ブルー』が流れる瞬間。
あるいは、映画を見つめるという行為そのものが奇跡なのだと知らせてくれる『カイロの紫のバラ』。
映画は奇跡と共にあった。
だが、21世紀を迎え、いつしかわたしたちは、映画という名の奇跡を忘れかけていたのかもしれない。
いま、ここに、いささかの郷愁とも無縁のまま、最新の奇跡が舞い降りる。
つべこべ言わず駆けつけてほしい。
ここでは、映画作家の罪も、世界の罪も、わたしたちの罪も、すべてを洗い流す雨が降る。
ざんざん降りの雨ではない。
そぼ降る雨によって、すべてが洗い流される。
ニューヨーク、ニューヨーク、ニューヨーク。
呪文のようにそう呟けば、縦型スクロールの雨が、恋人たちの味方をして、奇跡を運んでくる。
いま、必要なのは、こんなちいさな幸せなのだ。
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