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ラッパーAwichに”愛”について聞く 女性として、一児の母として貫く生き方とは?

リアルサウンド

20/2/28(金) 18:00

 YENTOWNに加入後、Chaki Zuluのトータルプロデュースによるアルバム『8』(2017年)でHIPHOPシーン最注目の存在へと急浮上したAwichが1月11日にリリースした『孔雀』は、すでに“名盤”と呼ぶべき作品だ。「『8』が今までの私の人生を語ったアルバムだとしたら、今回は『人生そのものを語るのではなく、その人生のストーリーの中で私が得てきたレッスンとか理解みたいなものを散りばめた作品』」とAwichが語る本作には、今や彼女の代名詞とも言える“女神”というワードが何度も登場する。確かな音楽性とクリエイティビティ、そして彼女の生き方や思考がなぜ人を惹きつけるのか。今作を聴いて、どうしてももっとAwichがどういう人かを知りたいと思った。

 この時代に新たな女性像を提示し、HIPHOPを通して音楽シーンに一石を投じる存在ともいえるAwich。ラッパーであり一児の母であること、沖縄への思い、「愛」についてーーインタビューで真摯に語ってくれた彼女はまさに“女神”のようだった。聞き手はHIPHOPライターの渡辺志保。(編集部)

■困難を「なんくるないさ」の言葉で凌いできた沖縄の人たちの強さ

ーー新アルバム『孔雀』がリリースされてから、周りの反応はどうですか?

Awich:「最高傑作!」という声を多くもらっていて、バズりを実感しております。(プロデューサーの)Chaki Zuluと二人で、「バズってない?」って話してました(笑)。

ーー今回はこれまでよりもさらにコンセプチュアルな内容になっていると感じました。制作時は、Chakiさんと大まかなアイデアから組み立てていった感じでしょうか?

Awich:アルバムを作る前から、Chakiさんとは「コンセプトやストーリー性、そして起承転結があるものにしよう」と話をしていて。前作の『8』(2017年)が今までの私の人生を語ったアルバムだとしたら、今回は「人生そのものを語るのではなく、その人生のストーリーの中で私が得てきたレッスンとか理解みたいなものを散りばめた作品を作るのはどうか」というところから始めました。

ーー『孔雀』というアルバムタイトルにも意表を突かれたのですが、どのようにして決定したのでしょう?

Awich:私のアイデアです。昔、小学5、6年生のころに書いていた私のリリックブックみたいな本に、孔雀のロゴを作って書いていたんです。しかも、そこに「美しくも飛べない羽を引きずって」みたいなポエムも書いていた。それと、「洗脳」の制作中に〈下界に忍ぶ三体の菩薩が Neo babyloniaの街を歩く 丸く背を曲げ足取り深く 毒を持つ蛇を好む孔雀〉 ってリリックを書いたんです。もともとこの曲は、カオスな状態に洗脳された世界を言葉で紡いでいくというイメージで書いた曲で、韻を踏んでいてたまたま〈孔雀〉って言葉を思いついた。そのあと孔雀が引っかかっていて調べてみたら、神経系の毒を持つ虫や蛇を好んで食べるくらい獰猛で、それ故にいろんな宗教でも重宝されている存在らしいということが分かったんです。孔雀は、毒を持つ動物を食べても身体の中は変わらない構造になっているみたいで。

 その後、アルバムが出来上がってきて、タイトルを決めようとなった時に、英語のタイトルも色々書き出しながら、最後に『孔雀』って書いておいたんです。そしたら、Chakiさんが「これだ!」って。そうしたら、「洗脳」の〈毒を持つ蛇を好む孔雀〉のラインがさらに意味を帯びてきて。同時に、「最初に描こうとしていた世界は“毒”だったんだ」と閃いて、そこから「Poison」もできた。もともと、アルバムそのもののアウトラインはできていたんですけど、その中で、『孔雀』ってコンセプトを決めたら「じゃあ、こういう曲も必要だ」とか「そしたら、これも!」って、相乗効果で決まっていった部分もありました。

ーー序盤に「洗脳」や「Poison(feat.NENE)」、「Bloodshot (feat. JP THE WAVY)」といった、まさに混沌としたアクの強い曲が配置されていて、後半から「First Light」や「Pressure」のような、愛や解放をテーマにした曲が登場してくる。アルバムの最後にむけて、どんどんデトックスされていくようなイメージを感じました。

Awich:そう。最終的にその方向性に向かっていきたかったんです。でも、途中で毒に飲まれそうになったり、「できるかどうか分からない」って気持ちにもなったりした。やっぱり色んな作業の中でコンセプト通りに進まないこともあったんですが、制作を進めていくと「これだと辻褄が合うんじゃない」みたいな瞬間がいくつもあって。それってシンクロニシティだと思っていて、結局、いい風に収まるというか、全てがアライン(一列に揃う)する。

ーー『8』をリリースしてからさらにブレイクし、今作に至るまでの間には結構ご自身の環境にも変化があったんじゃないかと思うんですが、『孔雀』の制作にあたってプレッシャーはありましたか?

Awich:ありました。でも、絶対に『8』を越してやろうっていう意気込みもありました。『8』よりすんなり行かない部分もあったけど、『8』でも『孔雀』でも制作中に感じたのは、結局どのやり方でも絶対にうまくいくってこと。今回で、完全に自信がつきました。ガイダンス(導き)があるんですよね。それがある時はすんなり着いていくし、ない時は辛抱強く待つみたいな。

ーーアルバムの最後、「DEIGO (feat. OZworld)」から「Arigato」の流れにAwichさんの新たな自信や強さを感じたんです。同時に、地元・沖縄への強い愛情も感じました。『8』でも、沖縄についてはたくさんフィーチャーしていたけど、前作で表現したかった沖縄と、今作で表現したかった沖縄はAwichさんの中で異なるんじゃないかな? とも思いました。

Awich:そうですね。そういう意味では、(2019年に行った)唾奇とのカップリングツアーにインスパイアされたのかもしれません。唾奇の声や言葉って、沖縄の男を代表するところがあるんです。無防備な生きる力に溢れてるというか、純真すぎて危うい、死にそうなんだけどめっちゃ生きる力がある、みたいな。そういうのに、すごく胸が締め付けられる感じがするんです。沖縄の今までの歴史では、一夜にして今まで全て信じてきたことがガラリと変わるような出来事が繰り返し起きてきた。沖縄の人たちって、そういうのを全部受け入れてきた人たちの子孫だから、その変化を受け入れる強さもあるし、あっけらかんとした明るさも持っているんですよね。だから、唾奇の声を聞くたびに、沖縄の男たちの本質みたいな、島の男たちの強さを感じてしまう。

ーー沖縄といえば、昨年、首里城の火災が起こった際にも、いち早くInstagramを通じてご自身のメッセージを発している様子が印象的でした。

Awich:首里城の火事の時、一番最初に話をしたのがレオクマ(OZworld)なんですよ。レオクマから電話が来て、ずっと喋ってたんですけど、その会話自体はめっちゃ明るくて、他の人が聞いたらちょっと不謹慎だと思うくらい。でも、それは島の人たちに共通している強さでもあると思う。落ち込むのはわかるけど、「使えるものはなんでも使って、やるしかないっしょ!」と思えるのが、沖縄人の強さだと思います。

ーー「DEIGO」はもともと、ライブ会場で唾奇さんと一緒に披露していた曲ですよね。それが、アルバムではコラボ相手がOZworldさんになっていてびっくりしました。しかも「Interlude 4」で種明かし的な会話も収録されているという。

Awich:そうそう。だから、唾奇が「DEIGO」を歌わないことさえも、「じゃあこれでウケ狙うしかないっしょ」ってインタールードを作って切り替えました。「どんな状況でもどうにでもなる」っていうのは、周りからしてみたらフワフワした生き方に見られるかもしれないけど、困難を「なんくるないさ」の言葉で凌いできた沖縄の人たちの強さがあると思うんです。だからこそ、笑えて歌えて、音楽が好きで、パーティーや宴会が好き……という、そういう自分たちの生き方に繋がっているんじゃないかな。

■「彼女がめちゃくちゃかっこいいと思う」ーー娘のYomi Jahについて

ーーAwichさんは11歳の娘さん(Yomi Jah)を持つ母親、という面も知られていると思いますが、娘さんはお母さんであるAwichさんの作品をどのように受け止めていますか?

Awich:超好きですね。『孔雀』を作ってる途中にも聴かせてました。あの子が選ぶフェイバリットソングは「洗脳」と「NWO」で、めっちゃダークなんですよ。「洗脳」は〈後頭部を圧迫〉ってラインが好きみたいで。私は「それ、ママじゃなくてDOGMAのリリックだよ(DUTCH MONTANA, Dogma & Junkman「Daijoubu」)」って言うんですけどね(笑)。

ーー日本のヒップホップの世界で、一児の母でありアーティストでもあるAwichさんのような存在ってなかなか多くはないと思うんですが、母親であることはアーティストとしての自分に影響を与えていると思いますか?

Awich:うーん……。影響があるとは思います。でも、「私って普通のお母さんって感じじゃないけど、いいんですか?」とも思うし。こんな感じだから、まるであの子の方が親みたいな感じになってる時もある。「子どもがいる」っていうか、「私にはトヨミ(娘)がいる」って感じですね。あの子自身が、めっちゃスペシャルだから。私から、娘に恋バナもよくするし。「あいつ、全然連絡くれないくせに~……」みたいな。そしたら、冷静に意見を言ってくれる。あの子、本当にGOAT(Greatest Of All ATimeの略で、「史上最高」の意味)なんですよ。

ーー11歳にして、全て分かってる感じがさすがですね。

Awich:本当に半端ないんです。2018年に、ダブルEPの『Beat』と『Heart』をリリースした時、Instagramのインスタライブで曲解説をやってたんですけど、視聴者の中にヘイターがいたんですよ。夜10時くらいだったから、「こんなうっせえ母ちゃん、嫌だ」とか「子どもが寝られなくてかわいそう」みたいなコメントもあって。ちょうどトヨミも寝そうな時間で、その時彼女もわざとギャグで「マミー、うるさい」とか言っていたんです。だから私も「トヨミ、そんなして言うな。だからヘイターたちも何か言うやし、何だば?」て言ってたら、逆にトヨミが「何? どうかした?」って。私が「こんなお母さん嫌だ、って(インスタライブで)言われてるよ」って伝えたとたん、トヨミが起きてきて私のiPhoneを持って画面に向かって「My mom is working, Okay(ママは働いてるんだよ、分かった)? 人の家庭に口出しすんな! じゃあね、バーイ!」って言ったんですよ。そしたらコメントも「トヨミ、やばい!」って。それで、シングルマザーの子や、これからお母さんになる子からめっちゃ称賛のDMが来たんです。今回、「Gangsta」の歌詞にも〈ベラベラ喋んなよ We gon be pulling up, ToyomiがTell you口出しするな〉って入れたんです。あの子が本当に言ってたことだから。

ーーちなみに、娘さん自身もラップや音楽活動に興味を示しているような感じはありますか?

Awich:ラップはあまり興味なさそうなんですが、ステージが好きなんですよね。あと、絵を描くことがとっても好き。これ(携帯の画面を見せながら)は宜野湾市の大会で優秀賞に選ばれたんです。あの子が描く絵や考え方って、めっちゃダークで。5歳くらいの時にハートをいっぱい描いていて、そのなかに覚えたての平仮名で「世界の終わりが知りたい」って書いてたんです。「これ何?」って聞いたら「知りたくない?せかいのおわり!」って笑顔で言われたんです。まー確かにと思いました。彼女は小さい時に父親を殺されてるし、その事件の時私は包み隠さず事実を伝えて、彼女はそれを受け入れた。だから死というコンセプトは身近にあるんです。それと同時に生きる喜びも人一倍わかってる。だからダークなことも明るく気兼ねなく表現出来るんです。私はそんな彼女がめちゃくちゃかっこいいと思う。これからも誰かに決められた善とか悪の方向に左右されず心の声を聞いていて欲しい。

ーーどこまでも、娘さん個人のクリエイティビティを尊重している、と。

Awich:たとえば、トヨミの父親のことや、彼女に黒人の血が通っていることに関しても、昔は私がすごく気を使ってたんですよ。肌色って色の名前がついたクレヨンがあったら、「こんなの使わないでください。娘の肌とこのクレヨンの色、同じですか?」って幼稚園の先生に抗議しに行っていたくらい。でもある日、娘が7歳の時に、1カ月くらいかけてめっちゃ大きい絵を描かせたんです。レストランを使って、そこで毎週ライブペイントをさせてたの。“私の街”みたいなテーマで、そこには私も含め、いろんな人がいる。で、私はトヨミが絵を描くときに「色んな人の肌の色があるから、ちゃんと肌の色を分けて描いてよ」って言ってたんです。でも、いつまで経ってもみんなの肌の色を同じに描くんですよ。「(色を)分けて描きなよって言ってるじゃん」って言ったら「でもマミーたち、ほぼ一緒だもん」って言われて。彼女は絵の中で自分だけめっちゃ黒く描いてるんです。私は娘が「自分は他の人と違うんだ」って感じないようにと思って色を使い分けろって言ってたつもりなんですけど、そしたらトヨミが「マミーたち、別に(肌の色)変わんないよ。トヨミだけだよ、黒いの」って、めっちゃ自信満々に言うんですよ。自分の肌の色の違いをちっとも負に感じていなくて。絵の中でも、自分だけ黒くて真ん中にいて、車の中にいるんですけど、そこからの排気ガスに「HAPPY」って描いてあるんです。私も、「それはそうだわ! お前が一番美しいわ」って。同時に「この子って、考えていることは結構ダークだけど、自分の中でそれを消化する時に明るい気持ちでアウトプットしてるんだ」と思って。その感性がスペシャルだと思うので、とにかく大切にしたいんです。だから、彼女が絵を描くたびに「本当に素晴らしい、これはお前の財産だから」って毎回言ってるんです。

■自身を受容できる強さの源は「全てを買い取る気持ちでいること」

ーー今回のアルバムには、一人の女としての強さが強調されているようにも思いました。特に、「Interlude 2(Good Man)」では、付き合っている相手に啖呵を切る様子が印象的で。一方で、彼氏に対してあそこまで真っ向からぶちまけられない女性も少なくないんじゃないかなって思うんです。ファンから恋愛相談をされることはありますか?

Awich:恋愛相談、めっちゃ来ます。しかも、長文でいっぱいもらいますね。でも、私が言えるのはただ一つで、「愛しかない」ってことなんですよ。「Interlude 2」って実は私も間違ったことを言ってるんです。男も女も、どっちも正しいけど、どちらも間違ってる。そんな状況を表したかったんです。実際に自分の彼氏から「俺は口下手だし、向き合うのも苦手で、勝手に消えるかもしれない。だけど、マジでお前のこと愛してる。それだけじゃダメなの? 他の男がお前のこと傷つけてきたのも分かる。でも、実際、俺はここにいるじゃん。それは評価しないの?」って言われたことがあって。インタールードの中での私の態度は、強い女性からしてみたら「その通り!」って感じに聴こえるかもしれないけど、それって、自分を強いと思ってる女がやりがちなこと。「私はもう傷つかないわ」みたいな態度を取りがちだし、それに、ただ強く言えばいいとは思わない。でも、そうすることで双方の強さと弱さを表現したいと思って。

ーー「愛しかない」とのことですが、恋愛中は特にその感覚にいたるのが難しいというか、感覚では分かるけど、具体的にどういうことなの? と思ってしまうような……。

Awich:だから、みんなの悩みにも答えられないんですよね。「その1、何とかしなさい、その2、何とかしなさい……」っていうルールがないんですよ。でも、愛というものの正体が何って考えていくと、愛は無限だし、普通の引き算じゃないんですよ。自分があげるごとに、愛が減っていく訳じゃないんです。逆に、あげればあげるほど増えていくもの。「First Light」でも、〈与えるほどに増えていくものだからdon’t be afraid〉って言ってるんですけど。自分も相手も、どちらもただ愛すだけ。それに、自分を愛することが、相手を愛することにつながるとも思ってます。

ーー『8』に収録されていた「Crime」、そして『孔雀』の「4:44」や「Lose Control」などにも顕著だと思うのですが、Awichさんが描く恋愛やセンシュアスな表現って、綺麗すぎない生々しさがあるなと感じていて。そこが素敵なところでもあるんですけど、「洗脳」みたいなカオティックなリリックを書くのとは反対に、こうした男女関係について書く時に気を付けていることなどはありますか?

Awich:マジで(恋愛に)くらってる時って、「愛が全て」と分かっているけど、「 私のことを愛してくれないともうダメ」と思ってしまう時もある。たとえば、連絡が来なくて、「本当に私のこと愛してるの?」って疑心暗鬼になってしまうこととか。そんな時に 自分を俯瞰して見ることができれば、ああ言うリリックが書けるんです。一時の感情に同化しちゃうと、実際に世界の終わりだと思っちゃうから、何も描写できないんですよ。「私が感じているこの痛みってどういうこと? これってエゴ? この人、私を独り占めしようとしてる?」みたいに、その感情の性質を追うようにしてるんです。そこに繋がると、(歌詞が)書ける。

ーーそのテクニックって、若いだけじゃ修得できないような気もします。豊富な経験があってこそ、というか。

Awich:私、一生恋愛してます。それに、ただ愛を与えたいだけなんです。

ーーそうなると、エゴとかジェラスな感情の定義もまた異なってきますよね。

Awich:でも、そういう感情って幸せの有限を認めてしまってるから、そうなるんですよ。「別の人がきたら私の幸せがなくなる」って感情は、愛や幸せの無限性を認めないことになる。

ーーその考え方って、これまでに色んな恋愛を経てきたからこそ得たもの?

Awich:そうかもしれない。恋愛に関しても、成功やキャリアに関してもそうですね。「この人が成功したら私は成功できない」みたいな気持ちが段々なくなってくるんです。

ーー普通、なかなかそこまでの境地に至ることも難しそうな……。

Awich:でも、それって恐怖をちょっとだけ越したところにあると思うんですよね。たとえば、友達が宝くじに当たったとして、「何でお前が!」って妬むとする。それって、宝くじでしか幸せになれないことやお金でしか豊かさが得られないってことを、自分で認めてしまったことになる。逆に「ヤバイなお前、やったじゃん」って思うことができれば、幸せになれる要素はいくらでもアバンダンス(豊富)に溢れているって認めること。人のことを妬まずに「素晴らしい」と言えることって、そういうことかなと思うんです。

ーーちなみに、Awichさんはリスナーからも「強い女性」と思われていると思うし、実際にそれを体現している女性アーティストだとも思うのですが、そういうイメージに対して「そのとおり!」と思うのか、もしくはそこに対するプレッシャーを感じるのか、どちらでしょうか。

Awich:どちらもありますね。「別に私、強くないよ」って言いたい気持ちもあるし、泣き虫で弱いところもある。「愛が全て」と思っていても、めっちゃ愚痴りたくなる時もある。でも、どんな時でも心のどこかで大丈夫だって信じているんです。これが人生の豊かさだし、こうやって落ちるところがないと、逆に生きてる意味がないじゃんって。自分のことを、どこが強いのか強いて言うなら、弱さを持っている部分もいいって思えているところだと思います。

ーー自分自身を全て受容できる強さ、ですね。

Awich:だから、強くならないといけない時は、とことん強くなります。でもずっと強くいるわけじゃない。バランスが一番ですよね。

ーーそこまで自分を受け止められるコツってありますか?

Awich:全部買取! 全てを買い取る気持ちでいることです。私への反対意見があっても全部買い取って、自分がオーナーになるんです。そうなると、私の手元に残るものがマイナスな感情であろうがラブであろうが、どこが勝っても全て私の儲けになるから。

ーーAwichさんのライブを観ると、実際に女の子たちを鼓舞するようなメッセージを発していたり、それを受けた女性のファンが涙を流していたり、という光景を目の当たりにするんです。それって、とても稀有なことのような気がして。特に、女性リスナーたちにもっとメッセージを届けたい、という気持ちはありますか?

Awich;もちろんあります。今まで女の子の方が男の子よりも不自由してきたっていうこともあるから、その分、女の子にはもっと自由にいてほしいし 、自分を愛することを知ってほしいなって思いますね。今まで抑えられて虐げられていたからこそ、ちょっとアクセルを掛けてあげたい。でもだからと言って、バランスが崩れて「男はいらねえ!」って感じの意味ではないです。ライブ会場では女の子たちを盛り上げた後に、絶対に男の子たちにも「来てくれてありがとう。こんな私をかっこいいと思ってくれてるお前らの方がかっこいいからな」って言うんです。だって自分のマンフッド(男らしさ)に自信がない奴は、絶対に女のことをかっこいいと言えないし、認めることができないですからね。

ーー今、まさに全国のクラブを廻るツアーが開催中ですが、いかがですか。

Awich:クラブはやっぱり楽しむ場所だから、そこでブチ上げるのは余裕なんです。でも、私のライブでは、そこに感動とかエモーショナルさも感じて帰ってもらいたいんです。それは挑戦でもあるけど、今まで大きなライブハウスや地方のクラブでもたくさんライブをしてきて「どんな会場でも感動は起こせる」って証明してるから、みんなもそれを感じ取ってくれると思う。ライブを観に来てくれたり応援してくれたりする人たちの反応に、人間の美しさが表れていると思いますね。(渡辺志保)

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