フランスでまさに今裁かれている、神父による信者の少年たちへの性的暴行事件。本作は、かつてその被害者だった男たちが時を経て立ち上がり、裁判の場でその神父、彼を放任した教会の姿勢について追及するさまを描く。境遇も性格も異なる三人の男性がこの活動の担い手となるが、少年の時に受けた心の傷がいかに彼らの人生を狂わせ、それが大過去ではなく“現在”の問題であるかを、フランソワ・オゾン監督が静かながら峻烈な怒りとともに描いてゆく。かつてその痛みを理解せず、事なかれで見逃した親の世代への批判も厳しい。粛々とした展開ながら、このタブーをめぐる人物たちの感情をそれぞれ見つめるうちに、2時間18分の長尺もあっという間であった。