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安室奈美恵、三浦大知……Nao’ymtがR&Bの土壌に起こした革命とJ-POPシーンにおける功績

リアルサウンド

19/10/12(土) 8:00

 Spotifyがこのほど、日本の作詞家・作曲家・プロデューサーの作品を紹介するプレイリストシリーズ「Works」を始動させた。今回プレイリストが作成された16名は、秋元康、亀田誠治、中田ヤスタカなど、いずれも国内の音楽シーンを彩ってきた名匠ばかり。中でもトピックとして挙げられるのが、安室奈美恵や三浦大知といったエンターテイナーたちがこぞって信頼を置く稀代のクリエイター、Nao’ymt(ナオ・ワイエムティ)の選出だ。何を隠そう、2000年中期以降のJ-POP、とりわけ和製R&Bの土壌に革命を起こしてきたカリスマなのだが、どこかミステリアスな人となりも相まって、未だその実態を把握しきっていない人も多いではないだろうか。そこで本稿では、Nao’ymtが打ち立ててきた目覚ましい功績と偉大なるプロダクトの数々に、筆者なりの目線から迫ってみたい。

(関連:AI、安室奈美恵への想いと頑張る人へのメッセージが詰まった「Baby You Can Cry」を語る

 Nao’ymtを語る上で真っ先にフォーカスを当てておきたいのが、2018年に惜しまれつつ引退した安室奈美恵との関係性だ。1998年にボーカルグループ・Jineを結成したNao’ymtは、2000年より作家活動もスタート。その後、安室がR&B界のキーパーソンとして再評価される契機となったアルバム『Queen of Hip-Pop』に参加すると、無名ながら5曲(シークレットトラックを含めると6曲)の制作に抜擢され、好調なセールスと比例するかのように彼の名は一躍して注目を浴びることに。メロディやトラックのメイキング、果ては作詞までオールラウンドにこなすNao’ymtだが、収録曲の「Ups & Downs」では、彼が歌うデモ音源を聴いた安室たっての希望で両者のデュエットまで実現。こうしたエピソードからも、安室が早い段階からNao’ymtの多才な一面に惚れ込んでいたことが読み取れる。

 以後、セルフプロデュース力を極めていく安室と、手を替え品を替え未知なる領域を解放していくNao’ymtは、互いを高め合うかのように次々と名曲を発表。とりわけ、AIが自身の楽曲にサンプリングしたことでも話題を呼んだばかりの「Baby Don’t Cry」は、安室の燦然たる歴史を象徴する金字塔として今なお支持する声が絶えない。Nao’ymtが同曲で提示した飾らないチアアップ、そして晴天を思わせる透明感あるサウンドトーンは安室のポジティブな歌姫像を強め、のちの「Get Myself Back」「Contrail」などの人生賛歌へも一層の説得力を伴って継承されていった。

 一方、「僕はNaoさんのために生きている」と宣言するほど、Nao’ymtが有するクリエイティビティにいちファンとして執心するのが三浦大知。2008年発売のシングル曲「Inside Your Head」で初顔合わせをしたのを皮切りに、これまでNao’ymtが大知に提供した楽曲数は30を超える(2019年10月現在)。トリッキーなダブステップをJ-POPでいち早く取り入れた「Black Hole」(3rdアルバム『D.M.』収録)、熱っぽいロックサウンドで荒さを表現した「Get Up」(シングル『Anchor』カップリング)、当時のトレンドだったディスコブギーをダークに解釈した17thシングル曲「Unlock」など、メロウ&セクシーの枠組みにとらわれない時代性豊かなバリエーションでもって、大知に内在するポテンシャルを幾度となく開花させてきた。先述のリスペクト溢れる大知の発言も、Nao’ymtのDNAが自らの発展を後押ししてくれたという確かな実感があってのものだろう。

 しかしながら当の大知の方も、Nao’ymtの圧倒的ですらある個性派プロダクトの機微を一切歪曲することなく、やはりミリレベルの繊細な精度で鮮やかにパフォーマンスしてのけてきたのだから、彼もまたNao’ymtほどのプロフェッショナルに敵う特別な表現者であるということ。特にここ数年、両者の渾然一体ぶりは上々で、2018年に満を持して送り出された完全Nao’ymtプロデュースによるアルバム『球体』では、その幽遠な内容も手伝って、すっかり神業の域に到達した彼らの頼もしいコンビネーションを満喫することが出来る。

 このようにNao’ymtのユニークな作風は、ここ日本のR&Bシーンを牽引するトップランナーたちに広く愛され、その裾野にまで多大な影響を与えている。上記の二人のほかにも、Crystal Kay、J Soul Brothers、露崎春女、DEEPなど、彼の不可思議な手腕を受けて覚醒したアーティストは数知れず。そもそもNao’ymtは、裏方である以前に確かなスキルと表現力を合わせ持ったボーカリスト。マイクを執る人間の作法やアティテュードは、実のところ誰よりも心得ているに違いない。

 先述の通り、Nao’ymtがJineなるボーカルグループを結成したのは1998年のこと。メンバーは中高の同級生だったJun、そしてのちに合流したEijiの計3名。BoyzⅡMenやJodeciなどに代表されるアカデミックな先人たちの流儀を踏襲し、2000年に初めてアルバムをリリースしてからというもの、折に触れて卓越したR&Bで音楽ファンを圧倒してきた。Nao’ymt自身のボーカルは声量でゴリ押すようなタイプではなく、ハスキーな声質を生かした柔らかい節回しが特徴なのだが、ここぞというタイミングで繰り出される咆哮さながらのフェイクなど、エモーショナルな振り切りがとにかく巧い。Jun、Eijiとの息の合ったコンビネーションが前提としてあるため、尚のこと胸を打ってやまないのだ。

 そして、2013年末からはソロシンガーとして、自身の本名を冠した「矢的直明」プロジェクトの作品を一年がかりでシリーズ化。自らを取り巻く生の感触と記憶を楽曲にして歌う、という原始的かつパーソナルなコンセプトで、こちらもJineの活動同様、Nao’ymtのクリエイターとしての人格が色濃く投影された貴重なライフワークである。押韻を重視したリリック、侘び・寂びを伝える和風情の音使い……Nao’ymtお得意の手法に一度でも心を射抜かれた経験があるなら、これらの活動も注意深く追ってみることをお薦めする(彼の芸術的思想や穏やかな人柄が垣間見えるInstagramも必見!)。

 作り手と歌い手ーー強烈な個性からしばしば誤解されがちだが、Nao’ymtほどどちらの立場も尊重出来るフレキシブルなクリエイターはいないと確信している。時にメロウに、時にポップに振れるその非凡なセンスを、今回めでたく誕生した専用プレイリストも駆使しながらぜひ嗜んでみてほしい。気高く奥深い“Nao’ymt沼”にどっぷり浸かる人が増えゆくことを、筆者としても切に願っている。(白原ケンイチ)

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