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吉岡里帆が語る、自身のキャリアと今後の展望 「“強い大人像”を出せるようになりたい」

リアルサウンド

20/11/22(日) 10:00

 仲野太賀主演映画『泣く子はいねぇが』が11月20日より公開中だ。『万引き家族』の是枝裕和監督が企画として参加した、佐藤快磨監督の劇場デビュー作となる本作は、親になることからも、大人になることからも逃げてしまった主人公・後藤たすくが、過去の過ちと向き合い、青年から大人へ成長する姿を描いた物語。

 仲野演じる主人公・たすくの妻・ことねを演じたのは吉岡里帆。自身初となる母親役で、これまでのイメージとは異なる表情を見せた本作に、彼女はどのような思いで臨んだのか。自身のキャリアとこれからについても語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

「“俯瞰で人生を見る視点”が大事だった」

――オファーの際、佐藤快磨監督から手紙が送られたそうですね。

吉岡里帆(以下、吉岡):そうなんです。私は当時、大きな舞台のお仕事を抱えていて、スケジュール的にも映画との両立が難しいんじゃないかなと思ってたんです。でも、監督がわざわざお手紙を書いてくださったこと、そして私に出てほしいという愛情もすごく感じたので、純粋にうれしくて。監督がここまで熱量を持っている作品に出なかったら、私自身が絶対に後悔するなと思ったので、出演することに決めました。

ーー作品の内容についてはどのような印象を抱きましたか?

吉岡:子どもが1年をいい子に過ごすための戒めとしての行事というイメージしかなかった「ナマハゲ」が、今作では父親からの子どもへのプレゼントのような、父性の象徴とも言えるかたちで捉えられていたのが印象的です。「父親は何をもって父親と言うか」ということがこの映画のテーマだと思いました。私は母親役で、母としての仕事を全うしたり、女としての意志を貫くような役割でしたが、仲野太賀さん演じるたすくは、父親になりたいのになれないという葛藤を抱きながら、なんとか父親になっていこうとする。そんな“子どもの親になる”という強い思いや覚悟を、ナマハゲ文化とリンクさせて描いていく構成がすごくおもしろいなと思いました。私自身も子供の頃に父親に怒られた記憶だったり、父親から教えてもらったことを思い出しながら脚本を読んでいました。佐藤監督の商業デビュー作ということで、いましか描けない世界観だと思います。

――ことねを演じるにあたって、役作りの面で何か行ったことはありましたか?

吉岡:今回は、何か特殊な職業に就いていたり、強いキャラクター性があるような役ではなく、“いち母親像”だったので、お母さんになった同年代の人たちに話を聞いたり、育児日記をつけている人のブログや、そういう漫画を描かれている方の作品を読んだりして、お母さんになりたての人たちの大変さや苦労の裏話からいろいろ吸収しました。自分自身がまだ出産経験がなく、リアルなところがわからなかったので、いろいろ話を聞いたり読んだりして、学ぼうと。その中でも印象的だったのは、「子どもが産まれた瞬間、とにかく子どもだけがキラキラして見える」ということでした。それは、たすくのことが見えなくなっていることねの気持ちとも通じるところがあると思ったので、その感情はずっと大事にするようにしていました。

ーー吉岡さん演じることねの夫・たすく役で主演を務めた仲野太賀さんとは、ドラマ『ゆとりですがなにか』シリーズ(日本テレビ系)以来の共演になりますよね。

吉岡:『ゆとりですがなにか』の後も私のラジオにゲストで来てくれたりはあったんですけど、作品での共演はそれ以来です。ただ今回は夫婦役で、しかも私の役はたすくとのシーンがほとんどだったので、たすくとの向き合い方が大事な役だったんです。『ゆとりですがなにか』では共演シーンがほとんどありませんでしたし、作品のテイストも全然違うので、現場ではほぼはじめましての感覚で撮影に臨んでいました。

――仲野太賀さんとは事前にすり合わせなどを行ったりもしたんでしょうか?

吉岡:撮影に入る前に、太賀くんと佐藤監督とプロデューサーさんと一緒に話す機会がありました。たすくとことねの背景は映画の中では描かれていないので、2人の間にどんな過去があったのかも、太賀くんと2人で話をしたりしました。

ーーたすくとことねの間にはどういう背景があるとお2人は考えていたんですか?

吉岡:たすくとことねは、よくいるようなカップルなんじゃないかなと。付き合う前はなんとなく仲良くいられたんだけど、突然子どもができて、できちゃった結婚をして、いざ子どもが産まれたら若い2人はまだ受け止め切れなくて……ということを考えていました。実際に映画を観ていただいた方にリアリティを感じていただきたいなと思っていたんです。母親は、子どもがお腹にいる間に少しずつ親になっていく時間があるんだけど、父親にはそういうチャンスがないとか、そういう話もしました。もう「母親になるぞ」という覚悟が決まっていることねと、どう接したらいいかいまいち掴みきれていないたすくの“アンバランス”さを表現できたらいいなと。監督からは「とにかく、たすくに対しての情みたいなものはあまり出さないでほしい」と言われていたので、“突き放す愛情”と捉えて演じていました。一度愛した旦那さんに対して、突き放すことが最後の愛情というか。なので、すごく厳しい感じになっています(笑)。

――それは思いました(笑)。仲野太賀さんの追い詰められていくような演技も相まって、どんどんかわいそうに見えてきたり……。

吉岡:とにかくたすくが一生懸命なんですよね。しかも、太賀さんが演じるたすくが本当に憎めなくて。それは太賀さんから滲み出る温かさや優しさみたいなことなんだと思うんです。でも、憎めない人をしっかり憎むのには、結構パワーがいるというか、許してあげたくもなってしまうので、旦那さんであるたすくに対しての愛情よりも、「自分は子どもを育てていくんだ」「子どもを無事に成長させてあげたい」という気持ちに重きを置くようにしていました。そう考えると、心がどんどん冷静になっていったので、そういう“俯瞰で人生を見る視点”が大事だったように思います。

「これからはもう少し“強い大人像”を出せるようになりたい」

ーー吉岡さんご自身はたすくみたいな男性をどう思いますか?

吉岡:まさに“大人になりきれない大人”だなと思います。最初に台本を読んだとき、たすくが犯したたった一度のミスに対して、「周りの人たちはこんなに厳しいのか!」って思ったんです。妻であることねはもちろん、地元の人たちや親戚のみんなが、ここまでたすくを追い込むのかと、ちょっと気の毒になっちゃうぐらいで(笑)。でもそれは、映画では描かれていないたすくの過去の積み重ねがきっとあるわけで、そういう扱いをされる存在になってしまったんだなと。でも、そういう“青臭さ”は私自身は嫌いになれないですし、たすくの魅力でもあるのかなと思いました。

ーーちなみに吉岡さんはたすくのように“取り返しのつかないようなミス”をした経験はありますか?

吉岡:なんだろう……でも、たすくみたいな重いのはないですね(笑)。後悔というか、「あのときもしこうしていたら……」と考えることがあるのは、学生時代のことで。私は芸能のお仕事を本格的にやる前は、書道に携わる仕事に就きたいなと思っていたんです。大学の頃は書道部に所属していて、年に何回か展覧会に作品を出品したりもしていたんですけど、当時は大学と芸能のお仕事を並行してやっていたので、展覧会に出品できなかった時期も何回かあって。その後何年か経ってから、書道部のみんなが作品を出品していた展覧会の作品集を友達がくれたんです。それを見たときに、「私はやりきれなかったな」と思ったんですよね。みんなの作品の完成度がすごく高くて、「私はここまでの作品を残せなかったのか……」と。

――人生の選択の場面で、そっちの道もあったかもしれないと。

吉岡:そうですね。どちらかを選択しないといけないタイミングだったので、仕方ないことではあるんですけど、そういうことをしみじみと感じる時期もありました。

ーー実際に選んだ役者としての道は着実に歩まれている印象です。

吉岡:自分の仕事だったり、人生のことを10年単位で考えるんです。まだデビューして10年も経っていませんが、いわゆる下積み時代から、「こういう仕事をしてみたい」とか「こういう作品に携わってみたい」と思っていたことが、いまの7年目でやっと形になってきているというか、植えた種が芽を出し始めているのを実感してうれしく思います。

ーーデビューしてまだ10年経っていないとは思えないような活躍ぶりですよね。

吉岡:いえいえ。本当に1個1個だなと思います。長い目で見て、ちょっとずつちょっとずつと思っているタイプなので(笑)。

ーーそういう意味では今回の『泣く子はいねぇが』は形になってきた作品の一つということですよね。

吉岡:『泣く子はいねぇが』はまさにそうで、同年代の俳優、同年代の監督と一緒に、海外の映画祭に出品できる力のある、日本の文化を伝えられるような映画に出たいなと、5年くらい前からずっと思っていたので、私にとっても念願の作品になりました。2020年は本当に念願が形になっていくことを実感している年で。今回の映画のテーマも“大人になりきれない大人”ですけど、私自身もいまが分岐点というか、青春の時期を過ぎて、大人になっていく絶妙な年齢で、この年代にしかやれない役って山ほどあるなと思うんです。これまでは弱い役やかわいらしい女性像など、いろいろやらせていただきましたが、これからはもう少し“強い大人像”を出せるようになりたいです。学園ものはもうやれないかもしれないけれど、今回のような母親像にもマッチできる年齢だと思うので、30歳に向けていろいろな作品に携われたらと思います。あと、デビュー前から舞台をやりたい気持ちが強かったんですが、今年から力を入れてやらせていただいていて。舞台は精神面を含め自分自身も強くなるので、そこで培ったものをいろんな役に投影できたらいいなと思っています。

■公開情報
『泣く子はいねぇが』
全国公開中
監督・脚本・編集:佐藤快磨
出演:仲野太賀、吉岡里帆、寛一郎、山中崇、余貴美子、柳葉敏郎
企画:是枝裕和
配給:バンダイナムコアーツ/スターサンズ
制作プロダクション:AOI Pro.
製作幹事:バンダイナムコアーツ
(c)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

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