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大橋ちっぽけ/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

幅広い音楽性が注目されている大橋ちっぽけが、失恋をテーマにした作品を経て、新作ミニアルバム『you』で描いた思いとは?

特集連載

第19回

自分にとっての理想のラブソングの要素をどんどん詰め込んでいきました

── まずは新作ミニアルバム『you』について。幅広いテイストの楽曲が収められていますが、何かテーマやコンセプトはあったんでしょうか?

大橋 今作はあまりテーマを設けていなかったんです。前々作(ミニアルバム『LOST BOY』)、前作(『DENIM SHIRT GIRL』)は自分の失恋体験という明確なコンセプトがあって。それを作り終わってからは、アルバムのテーマとかは意識せず、純粋にいいものをどんどん作っていこうと思ってたんですよね。その結果、この7曲が集まったという感じです。

── 枠を決めずに自由に作ったと。

大橋 はい。あと、僕自身もアルバム単位で音楽を聴くことが少なくなっていて。プレイリストや曲単体で聴くことが増えているし、自分の作る曲に関しても、自然とアルバムを意識しなくなっているのかもしれないです。

── 全体像を決めずに制作すると、タイトルを決めるのは大変なのでは?

大橋 あ、そうですね(笑)。今回はシンプルに『you』にしたんですが、決めるまでには結構考えました。収録する曲が揃ったときに、“いろんな対象に向けたラブソングが多いな”と思って。恋人や家族、自分自身へのラブソングもあるし、聴いてくれるリスナーのみなさんにも、愛しい人を思い浮かべてもらえたらうれしいなと思い、『you』がいいかなと。

── 失恋をテーマにした作品を作り上げたことで、いろいろな対象への愛を歌いたくなったのかも。収録曲についても聞かせてください。まずはJ-WAVE SONAR TRAXに選出された「常緑」。ストレートなラブソングですが、曲想を得たきっかけは?

大橋 サビの「端的に言うとね、君の全部が愛おしい」というフレーズが突然、パン! と浮かんできたんです。めちゃくちゃシンプルで、何のひねりもない歌詞なんだけど(笑)。自分の中にずっと残っていて、「このサビが活きる曲を作りたい」と思って。自分にとっての理想のラブソングの要素をどんどん詰め込んでいきました。

── 解放的なサウンドも気持ちいいですね。

大橋 ありがとうございます。もともとポップな音楽が好きなんですよ。特にこの曲は悲しみを完全にゼロにして、100%愛しかないラブソングなので、ハッピー感、多幸感を注ぎ込んだアレンジにしました。自分でデモ音源を作って、それをアレンジャーに渡して。「こういう音にしたい」と話しながら作っていきましたね。

── ここまで振り切ったポップチューンは、今までそんなになかったのでは?

大橋 そうかもしれないですね。デビューして最初の頃は、バラードやUKロック的な冷たいサウンドの曲がわりと多くて。リード曲も悲しげで無機質なものが中心だったんですけど、今回はキラキラしたポップソングに振り切りました。自分で納得できるポップチューンをミニアルバムの顔に持ってこれたのは良かったと思うし、好きな要素もしっかり詰め込めて。お気に入りの曲になりました。

── 「常緑」という題名については?

大橋 最初に思いついたときは、「どうなんだろうな?」と思ったんですよ、じつは。漢字二文字だし、ちょっと日本感が強すぎるのかなって(笑)。何て言うか、ラブソングを花にたとえた曲はすごく多いじゃないですか。それもすごく好きなんですけど、常緑樹の青々とした姿だったり、1年中、きれいな葉っぱを付け続ける力強さをイメージしたラブソングも素敵じゃないかなって。あと、音楽的にエバーグリーンなところを目指したかったんですよね。自分が思うエバーグリーンな要素も詰め込んでいるので、「常緑」にしました。

── エバーグリーンをそのまま漢字にすると、確かに「常緑」ですね! 2曲目の「23」も軽やかなポップナンバー。「23」は、大橋さんの今の年齢ですよね。

大橋 はい。23歳になったときに感じた不安だったり、世界が一気に広がったときに感じた自分の小ささ、無力感を曲にしたいなと。「まだやれるよ」という歌詞があるんですが、自分で自分の背中を押しているところもありますね。

── 23歳になって、心境の変化があった?

大橋 そうですね。今年の3月まで大学生だったので、周りの友達も就職したり、大学に残ったり、いろいろな変化が訪れて。僕は19歳のときから本格的に活動をはじめて、そのまま今に至っているので、(23歳のタイミングで)ガラッと変わったわけではないんですが、考えさせられることが増えたんですよね。

── 「もう学生じゃない。社会人なんだ」という?

大橋 それもありました。「え、俺、もう社会人?」ってゾッとしちゃって(笑)。地元の友達とも悩みを話し合ったりしたし、「23」にはそういうリアルな要素も入ってます。さっき言ったように自分のために書いたところもあるし、誰かの背中を押したり、「がんばろう」と伝える曲ではないんですけど、聴いてくれたリスナーから「勇気づけられました」というコメントをいただけて。曲として世に出した意義があったなと思ってます。

曲として形にすることで、初めて自分の思いを世に出せるところもある

── 「By Your Side」の<どうして僕たちは 思い通りに 想いを口にできないんだろう?>、「沈黙の少年」の<本当の僕のこと/だれも知らないのは僕のせいだよな>、「Hard to Tell」の<うまく言えないままだなあ>など、“思いを伝えられない”という状態を歌った曲も印象的でした。

大橋 テーマを決めて作ったわけではないんですが、近いことを歌っている曲が自然と集まったというか。思っていることを上手く言えない、本当に自分を出せないということが、僕の悩みなんだなって、自分で聴いていてハッとしました。単純に言葉にするのが下手だったり、思い切って伝える勇気がなかったり、(周囲からの)自分のイメージに自分で寄せに行くこともあって。そんな状態に嫌気がさしたり、疲れることもあるし、そういうもどかしさが楽曲になっているのかもしれないです。

── 楽曲を作って、世に送り出すという行為自体も、コミュニケーションの手段だと思いますけどね。

大橋 そうですね。親や友達にも言えない、スタッフにも伝えられないことを歌詞にすることもあるし、曲として形にすることで、初めて自分の思いを世に出せるところもあるので。そういう意味では、ひとつステップアップできたのかもしれないですね、この作品で。

── 色彩豊かなサウンドメイクも素晴らしいと思います。たとえば「ペトリコール」には雨音が入っていて、楽曲で歌われている情景が映像的に伝わってきて。

大橋 「ペトリコール」の雨音は、デモの段階から自分で入れてたんです。この曲はジメジメした湿気が感じられるようなサウンドにしたくて。アレンジャーの方とも話して、ちょっとクドいくらいリバーブをかけてるんですけど、異空間にいるような感じになりましたね。「誰も知らない」は弾き語りをもとにしているんですけど、それは突然自分に訪れた“ハンバートハンバード”ブームの影響なんですよ(笑)。フォーキーな雰囲気だったり、日本語をしっかり伝える音楽ってやっぱり素敵だなと思って。

── その時期の音楽的モードも反映されているんですね。

大橋 “今”自分が好きな音を詰め込みました。このミニアルバムを聴いてくれた人が「こういう音、好き」って言ってくれたら、「エヘヘ」って照れるんじゃなくて、「だよね、俺も好き」って共有できるというか。そう思える音楽を世に出せたのはすごくよかったし、自信にもなっていると思います。

── 本当に音楽性が幅広いですよね。

大橋 もともとインターネットにハマったことがきっかけで音楽を聴くようになったタイプなので、自然と雑食になったんですよね。ジャンルを意識しないで、ネットを通していろんな曲を聴いて。今はサブスクもあるし、聴く音楽の幅はさらに広がっていると思います。自分で作る曲も今作に限らず、ひとつの作品群のなかでいろんなことをやっているし、それはずっと変わらないですね。これからも純粋に好きなものに手を出して、曲を作っていきたいと思ってます。

── 音楽のルーツとしては、どのあたりが入り口だったんですか?

大橋 インターネットを使うようになったのが小学5年生のときで、その頃に流行っていたボカロ曲が最初だった気がします。ハチさん(米津玄師)も人気だったし、あと、古川本舗さんも大好きで。中1からは、好きな曲のカバー動画を投稿してましたね。僕が始めたのは2010年くらいですけど、ちょうど“歌ってみた”というジャンルが流行り始めて。そのときに自分の歌を聴いてもらえる感覚を得られたし、それが今の活動にもつながっていると思います。僕の動画がバズったことはないですが(笑)。

── バズらなくても、リスナーからのリアクションはあったのでは?

大橋 そうですね。夜に動画をアップして、次の日の朝、学校に行く前にチェックすると7個くらい賛否両論のコメントが付いていて(笑)。自分の歌を聴いてもらえて、反応が返ってくること自体、すごく面白かったです。ただ、僕はそのままボカロにいかなくて、弾き語りの音楽とかJ-POPを聴くようになったんですよね。その後は洋楽にも興味を持ち始めて。

あまり意識しすぎず、やりたいことだけをやれる環境を作っていきたいので

── 洋楽はどんなアーティストが好きですか?

大橋 いろいろ聴くんですけど、きっかけになったのはThe 1975ですね。曲ごとに「こんな表情もあるんだ?」という驚きがあるんです。自分の活動においても、いい意味で裏切っていきたいと思っているし、そこはすごくリスペクトとしているポイントですね。あと、どメジャーなジャスティン・ビーバーとかも好きです。「あんな存在になりたい」という憧れも、まだ持っているので(笑)。

── ポップスター願望、大事だと思います! 今後の制作においては、どんなビジョンがあるんですか?

大橋 正直、ぜんぜん決めてないんですよ(笑)。これから生きていくなかで、「こういう音が好きだな」ということも出てくるだろうし、そのとき好きなことをやっていけたらいいなと。

── “決めない”というのが大事なのかも。

大橋 そうですね。心を揺さぶるような出来事が起きて、「次のアルバムはこのテーマで作ろう」ということになるかもしれないし、あまり意識しすぎず、やりたいことだけをやれる環境を作っていきたいので。

── めちゃくちゃ期待してます。ちなみに大橋さん、デビュー当初は眼鏡をかけてましたけど、今はコンタクトですか。

大橋 はい(笑)。コンタクトをつけるとシャキッとするというか、“よそゆきの大橋くん”みたいになるんですよ。眼鏡は“おうち時間”という感じなので、コンタクトがスイッチになってるのかもしれないです。

Text:森朋之 Photo:吉田圭子

リリース情報

ニュー・ミニアルバム『you』
発売中
レーベル:日本コロムビア
品番:COCP-41565
定価:2,530円(税込)

<収録曲>
01. 常緑
02. 23
03. By Your Side
04. だれも知らない
05. 沈黙の少年
06. ペトリコール
07. Hard to Tell

ライブ情報

shimokitazawa DaisyBar presents ”WONDER FUNCLUB”
2021年11月8日(月)18:00開場、18:30開演
会場:下北沢DaisyBar
出演:大橋ちっぽけ/黒子首/まるちび(O.A)
料金:前売3,000円/当日3,000円
※入場時ドリンク代が必要
詳細は公式サイトで確認ください。 ⇒https://chippoke.themedia.jp/posts/21449223?categoryIds=1187832

大橋ちっぽけワンマンライブ「(don’t) look at me」
≪東京公演≫
2021年12月3日(金)18:30開場、19:00開演
会場:TSUTAYA O-nest
料金:前売3,000円/当日3,500円
※入場時ドリンク代が必要

≪大阪公演≫
2021年12月11日(土)17:30開場、18:00開演
会場:LIVE SQUARE 2nd LINE
料金:前売3,000円/当日3,500円
※東京、大阪ともにチケットは10月30日(土)10:00〜 一般発売開始!
詳細は公式サイトで確認ください。⇒https://chippoke.themedia.jp/

プロフィール

大橋ちっぽけ
1998年愛媛県松山市出身。UKロック、オルタナティブユージックなどに影響を受け、動画サイトに歌唱投稿を開始する。その後2017年4月に上京。2018年3月に開催された『J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE ~YOUNGBLOOD~』のオープニングアクトに抜擢され、1万人を超える観客がその歌声に心を奪われた。 以降、数々のライブやイベントに出演を重ねる中でアコースティックギタープレイにも注目が集まっていく。2019年3月にメジャーデビューアルバム『ポピュラーの在り処』をリリース、2020年4月には自身の失恋体験をコンセプトにしたミニアルバム『LOST BOY』を、2020年9月には、『LOST BOY』と対をなすミニアルバム『DENIM SHIRT GIRL』を発売するなど、精力的に作品をリリースし活動の幅を広げている。2021年10月13日(水)にはミニアルバム『you』をリリースした。

関連リンク

公式サイト : https://chippoke.themedia.jp/
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番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW

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