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水野美紀に江口のりこも 確かな実力で光る40代のバイプレイヤー女優の活躍

リアルサウンド

20/6/5(金) 6:00

 観る者から支持されるドラマや映画には、大抵、主人公だけでなく、魅力的な脇のキャラクターが存在する。そんなキャラクターを生み出す名バイプレイヤーというと、人気ドラマ『バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』(テレビ東京系)まで作られた男優陣がまず浮かぶが、女優陣も負けてはいない。特に今、水野美紀、市川実日子、山口紗弥加、江口のりこと、40代のバイプレイヤー女優が光っている。

【写真】佐藤二朗に技を決める水野美紀

■怪演女優の称号に異論なし! 水野美紀

 新作ドラマを拝む機会の少なかった今クール、『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)、『浦安鉄筋家族』(テレビ東京系)と2本のドラマ(いずれも今は中断)への出演で存在感を見せつけ、“怪演女優”なる称号を得ている水野美紀(45)。浜崎あゆみの自伝的小説をドラマ化した、ドラマチックなエピソードの数々そのものもさることながら、大仰な演出&芝居で中毒者続出の同作だが、中でも水野が第2話で演じたニューヨーク在住のスパルタ・ボイストレーナーの天馬まゆみは大きな話題に。派手な羽根被りと衣装を身にまとい、ドラムを叩いて暴れまくる姿はあっぱれと言うしかなかった。他方、こちらも怪演俳優の佐藤二朗主演による『浦安鉄筋家族』では、佐藤との丁々発止の芝居合戦や、家族にプロレス技をかけまくる一家の母親を生き生きと演じて引き付けている。

 1987年に芸能活動をスタートさせた水野が頭角を現し始めたのは、『踊る大捜査線』シリーズ(フジテレビ系)での柏木雪乃役。守ってあげたくなるような清楚な婦人警官役で人気を博した。その後、『彼女たちの時代』『女子アナ。』(いずれもフジテレビ系)、『恋人はスナイパー』(テレビ朝日系)などでキャリアを培った水野は、2000年以降、舞台への活動にも力を入れ、2007年には演劇ユニット「プロペラ犬」を作家の楠野一郎とともに立ち上げた。このころには清楚系から脱却し、映画『ハード・リベンジ、ミリー』(2008年)、『さそり 蠍子-SASORI-』(2009年)などで本格派のアクション女優としての評価を高めていたが、水野はそこからさらに階段を駆け上がっていく。鬼才・園子温監督作『恋の罪』(2011年)ではフルヌードに挑戦し、一方で福田雄一監督のコメディ『俺はまだ本気出してないだけ』(2013年)へ参加するなど、幅を広げていった。

 怪演女優たる魅力爆発の近年では、ドラマ『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)で猛烈な嫉妬心で暴走する妻を演じ、『探偵が早すぎる』(読売テレビ・日本テレビ系)ではヒロインの母親代わりのひっつめ髪の家政婦を、『ミストレス~女たちの秘密~』(NHK総合)では次第に周囲が騒がしくなっていくシングルマザーにひと癖を加えた。大切なのは、怪演と言われようと、水野の演技は決して作品から浮くことがないこと。それも確かな演技力があってこそだ。どんな役柄であろうと、こちらをフィクションの世界から覚ますことなくがっちりと引き込む。変わらぬ美貌も大きな武器だ。

■その場の空気をナチュラルに循環させる市川実日子

 雑誌『Olive』(平凡出版株式会社、現マガジンハウス)のモデルとして活躍していた市川実日子(41)は、98年に同誌の専属を離れた後もさまざまな雑誌に登場し、ファッションモデルとして人気を得てきた。女優デビューは1998年。2001年には女流棋士を演じた大谷健太郎監督の『とらばいゆ』で新人賞を受賞。初主演映画となった魚喃キリコのコミックの映画化『blue』(2003年)で、モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を獲得して女優として注目されるようになる。そして市川のナチュラルな魅力を生かした荻上直子監督作『めがね』(2007年)、『レンタネコ』(2012年)で人気を加速させた。

 近年では大ヒット映画『シン・ゴジラ』(2016年)にて野生生物の専門家・尾頭ヒロミ役を演じて印象を残し、毎日映画コンクール助演女優賞に輝く。2018年には野木亜紀子脚本によるドラマ『アンナチュラル』(TBS系)で、臨床検査技師の東海林夕子を演じてこちらも支持を獲得。主演の石原さとみ演じる法医解剖医の三澄ミコトの良き同僚であり、いい距離感を保ちつつ、しっかりと絆のある女友達を自然に見せた。また法医学が舞台の作品にあって市川の放つうるさすぎないユーモアのセンスは、ドラマ全体を軽やかなものにしていた。そして昨年のドラマ『凪のお暇』(TBS系)では、黒木華演じるヒロインの凪が出会う、独特な空気をまとった坂本龍子を好演。怪しい勧誘を勧める出会いだったにも関わらず、ずっとそばにいて欲しい親友となる様を、視聴者にも納得させたのは、市川の醸し出す雰囲気があったからこそ。

 また昨年は映画でも『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』『よこがお』の2本で高い評価を得た。切れ長の瞳にファッションモデルらしいスタイルは、近寄りがたい印象を抱かせる可能性があるが、市川はクールさを保ちつつもその壁を取っ払うことができる。現在は、松重豊が家政婦の猫村さん役で主演を務めることが話題となった連続ミニドラマ『きょうの猫村さん』(テレビ東京)に、猫村さんの同僚家政婦の山田さん役で出演。作品の中で他のキャラクターと溶け合いながら自らの存在感を残せるのは、市川のナチュラルでいて平凡ではない他にない個性があるからだ。

■キリリとした瞳の強さで観る者の心を射る山口紗弥加

 キリリとした瞳が印象的な山口紗弥加(40)も多くの作品で存在感を示してきた。1994年にテレビCMと、ドラマ『若者のすべて』(フジテレビ系)でデビューを果たし、その後も『おいしい関係』(フジテレビ系)、『闇のパープル・アイ』(テレビ朝日系)、『可愛いだけじゃダメかしら?』(テレビ朝日系)など多くのドラマへ出演してきた山口。1998年には歌手デビューし、バラエティ番組でも活躍するなど、アイドル女優としてのイメージが強い時期もあったが、それも山口の器用さゆえだろう。方向性に迷い、一時は芸能界を辞めようと思っていたと公言している山口だが、初舞台となった野田秀樹の『オイル』(2003年)を皮切りに、蜷川英雄、いのうえひでのりらの演出作品で経験を積み、女優としてのやりがいに目覚めていった。

 近年では、強すぎた責任感に押しつぶされる経験を経てさらに大きくなる新生児科医を、強さのなかに繊細さを内在させて演じた『コウノドリ』シリーズ(TBS系)の新井恵美役や、同じ医療ものでも、淡々としつつユーモアを感じさせ、奥に秘めた女性としての悩みに共感を集めた『ラジエーションハウス』(フジテレビ系)の黒羽たまき役でも印象を残した。意外なことにドラマ初主演は18年の復讐物語『ブラックスキャンダル』(読売テレビ・日本テレビ系)。昨年の主演ドラマ『絶対正義』(東海テレビ・フジテレビ系)でも鋭い眼光で圧倒し、主演作における輝きにも惹きつけられるが、バイプレイヤーとして欠かせない女優である。現在は菅田将暉、小松奈々主演の映画『糸』が公開待機中。

■どこか浮世離れした空気に独特のユーモアが滲む江口のりこ

 4月に40歳を迎えた江口のりこも独特の個性でポジションを築いている。2000年に劇団東京乾電池に入団。一般への認知が広まったのはオダギリジョー主演、麻生久美子共演によりコアなファンを獲得したドラマ『時効警察』シリーズ(テレビ朝日系)でのサネイエさん役だ。三木聡を中心に、岩松了、園子温、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、福田雄一、大九明子、今泉力哉など個性の光る脚本家、演出家が生み出す世界観のなかで、ふせえり演じる又来さんとの絶妙なコンビ感で人気を博した。

 近年はドラマ『コウノドリ』シリーズ(TBS系)で、医師とは異なる立場で患者に寄り添うメディカルソーシャルワーカーの向井祥子役で作品を支え、石原さとみ主演の『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)では、一見ただの堅物に映る校閲部の藤岩さんに愛らしさを加えた。また昨年放送され高い支持を得た多部未華子主演作『これは経費で落ちません!』(NHK総合)でも、クセの強い帰国子女、麻吹美華を、回数が進むごとに物語に欠かせない愛すべき登場人物へと成長させていった。

 映画でも4時間を超える異色作『いぬむこいり』でのファンキーな武器商人、ロングヒットとなった『愛がなんだ』(2019年)での最低男のマモル(成田凌)をも軽くあしらう年上の女性、『羊とオオカミの恋と殺人』(2019年)での謎に満ちた死体処理人など、その個性を十分に生かしている。ちなみに映像デビューからまだ数年の2004年に主演を務めたタナダユキ監督作『月とチェリー』でも、江口らしいクールさと、知らぬ間に相手を引き付ける愛らしさがすでに十二分に出ていた。また、NHKワンセグ2にて放送され、シーズン3まで続いたミニドラマ『野田ともうします。』の主人公・野田も、どこか浮世離れしたような江口の魅力を楽しめる。新作としてはスタートが待ち遠しいドラマ『半沢直樹』(TBS系)の新シーズンに参戦。亀梨和也主演の映画『事故物件 怖い間取り』が8月公開予定。

 ほかにも池谷のぶえ(49)、堀内敬子(49)、平岩紙(40)らがいる40代のバイプレイヤー女優たち。確かな演技力と個性を発揮しながら、作品世界を支え押し上げて輝く彼女たちの活躍から、今後も目が離せない。

(望月ふみ)

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