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立川直樹のエンタテインメント探偵

美術館「えき」KYOTO『篠山紀信写真展』、富士フイルムギャラリー『五十川満写真展』で味わった奇妙なトリップ感

隔週水曜

第24回

19/5/15(水)

四代目 坂田藤十郎(左)、十五代目 片岡仁左衛門(右) (舞台製作:松竹株式会社)

 史上初の10連休の間はテレビでよく出来たドキュメンタリーを何本を観ることができたし、最後の夜は“SONG TO SOUL”でレッド・ツェッペリンの『胸いっぱいの愛を』が取り上げられ、ジミー・ペイジやエンジニアのエディ・クレイマー、伝記作家リッチー・ヨークなどの証言からロックとブルースの関連について、なるほどそうだったのか……という事実をいくつも知り、人生まだまだ学ぶべきものがたくさんある、これだと歳はとらないなと改めて思ったが、平成最後の日に浅草公会堂で観た夢グループ主催『昭和歌謡歌合戦』は、春組と秋組合わせて24組の昭和の歌謡史を色彩った歌手たちが一堂に会し、代表曲を1曲ずつ歌っていくという超レトロな演し物で、観客も含めてウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』のような感じで完全に昭和に連れていかれてしまった。

 その前日に東近江のジャズ・フェスティバルで、プロデュースしているビッグ・バンド、MUSIC UNLIMITED ORCHESTRAのデビュー公演を成功させた後、美術館「えき」KYOTOで観た『KABUKI 藤十郎と仁左衛門 篠山紀信写真展』もトリップ感覚といえば、かなりのもの。会場内には一切のキャプションがないので来場者に渡されるリーフレットには巨匠の「京都にご縁のある、坂田藤十郎、片岡仁左衛門、両御一家の写真展を京都で開催出来ることは、まことに光栄で至極。こんな嬉しいことはございません。歌舞伎と写真の神が舞台上に降臨したような一瞬の連続。皆様目を凝らしてご覧くださいませ」(展覧会リーフレットより)という言葉が載っていたが、その言葉通り、“写真力”の凄味を実感させられた。

篠山紀信(写真:美術館「えき」KYOTO)

 写真展ではもうひとつ、4月1日から30日まで、丸の内・富士フイルムギャラリーで開催されていた五十川満写真展「舞面 〜石見神楽〜」も中々魅力的な写真が並んでいた。いくつかの仕事を一緒にしたこともある五十川君が2018年の秋に1ヶ月ほど島根県の石見地区に滞在して撮影した石見神楽。地元の人々の普段の姿と、舞面(まいめん)をつけ神となり舞う姿がかもし出す、これまた奇妙なトリップ感。このトリップ感は平静から令和に元号が変わる間、ずっと続いていたような気もするが、4月18日から21日まで沖縄で開催された『第11回沖縄国際映画祭 島ぜんぶでおーきな祭』の催物として、桜坂劇場で観た『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』やオーストラリア人監督ティム・コールが撮ったドキュメンタリー『スモールアイランド・ビッグソング 小島大歌』や、沖縄最古の映画館(70年の歴史だとか)首里劇場で観たマルクス・ブラザースの映画から伝わってくるバイブレーションは“映画”を超えるただならぬものであった。

巨匠トム・ストッパード作『良い子はみんなご褒美がもらえる』、勅使川原三郎ダンス公演『シナモン』

『良い子はみんなご褒美がもらえる』(撮影:阿部章仁)

 そしてこのただならなさは、TBS赤坂ACTシアターで観た『良い子はみんなご褒美がもらえる』と、両国シアターX(カイ)で観た勅使川原三郎ダンス公演『シナモン』にもつながっていく。日本でも多くのファンを持つ英国劇作家の巨匠トム・ストッパードが俳優とオーケストラのために書き下ろした異色作『良い子は…』は作曲が2月28日に亡くなった巨匠アンドレ・プレヴィンで、オーケストラがBGMや歌の伴奏を演奏する影の存在ではなく、舞台、劇中に登場するというかなり斬新な作品で、演出家のウィル・タケットは言葉と音と身体の持つ表現を見事に引き出していたが、表現ということでは常に刺激的な舞台を見せてくれる勅使川原三郎がブルーノ・シュルツ原作によるダンス作品『シナモン』で表出させた魔術的空間は全く他の追随を許さないものといえるかも知れない。

 現在の勅使川原三郎の最高のパートナーである佐東利穂子と演じた55分。それは“言葉の破片による動体彫刻”というサブタイトル通りのもので、音と光、言葉と身体の持つ表現はここまで可能なのかと思わせる素晴しいものだったのである。5月24日から6月1日までは荻窪のカラス・アパラタスで『青い記録』という公演もあるので、そこに行けば最高のトリップを体験できる。まだ観たことがないなら絶対に観る価値がある。

作品紹介

『夢 スター歌謡祭 春組対秋組 歌合戦』

日程:2019年4月30日
会場:台東区立浅草公会堂

『KABUKI 藤十郎と仁左衛門 篠山紀信写真展』

会期:2019年4月12日~5月6日
会場:美術館「えき」KYOTO

五十川満写真展「舞面 〜石見神楽〜」

会期:2019年4月1日~30日
会場:富士フイルムイメージングプラザ

『島ぜんぶでおーきな祭 第11回沖縄国際映画祭』

日程:2019年4月18日~21日
会場:波の上うみそら公園、国際通り周辺、桜坂劇場ほか

『良い子はみんなご褒美がもらえる』

日程:2019年4月20日~5月7日
会場:TBS赤坂ACTシアター
作:トム・ストッパード
作曲:アンドレ・プレヴィン
演出:ウィル・タケット
指揮:ヤニック・パジェ
出演:堤真一/橋本良亮(A.B.C-Z)/小手伸也/シム・ウンギョン/外山誠二/斉藤由貴/川合ロン/鈴木奈菜/田中美甫/中西彩加/中林舞/松尾望/宮河愛一郎

勅使川原三郎ダンス公演『シナモン』

日程:2019年5月2日~6日
会場:シアターX(カイ)
原作:ブルーノ・シュルツ
構成・振付・演出・照明・美術:勅使川原三郎
出演:勅使川原三郎/佐東利穂子/村山恵実子

アップデイトダンス No.62「青い記録」

日程:2019年5月24日~6月1日
会場:カラス・アパラタス/B2ホール
演出・照明・出演:勅使川原三郎

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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