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横山健が語る、これからのレーベル運営術「そもそもレコード会社なんてのは隙間産業なんだ」

リアルサウンド

13/10/29(火) 18:50

20131016-yokoyama-01.jpgPIZZA OF DEATH RECORDSの代表取締役社長も務める横山健

 90年代、Hi-STANDARDのギター・ボーカルとしてパンクブームを牽引した横山健。現在はBBQ CHICKENSやソロ名義のKen Yokoyamaとして活動をするだけではなく、PIZZA OF DEATH RECORDSの代表取締役社長として、若手バンドの発掘・育成にも力を入れている。今やインディーズ界のトップランナーとなった彼は、混迷する昨今の音楽シーンについてはどのように捉えているのだろうか。ロングインタビューの前編では、CDが売れない現状と、その中でのレコード会社が担う役割まで、ざっくばらんに語ってもらった。聞き手は、3年前にもレーベル運営について横山健に取材した経験を持つ、音楽ライターの石井恵梨子氏。(編集部)

――以前、音楽業界が危機的状況だ、我々はこの先がない斜陽の産業にいるんじゃないか、という話をしたのが2010年の夏でした。

横山:もう3年前なんだ。当時はほんと「このままCDが売れないと、我々の生業はどうなる!」とか思ってたけど。でも今、相変わらずいろいろ考えてはいるけど……意外とどうでもよくなっちゃったかなぁ(爆笑)。

――わはははは。

横山:今は「そもそもレコード会社なんてのは隙間産業じゃないか」って思うようになった。たとえばミュージシャンに音楽を制作する力があって、それをアルバムにする力、自分たちに流通させる力があれば、レコード会社っていらなくなるよね。音楽関係の仕事はそれだけじゃなくて、流通とか音楽出版とか雑誌とか、ほんといろいろあるけども。お客さんがニーズとして「これはいらない」って判断するんだったら、もうそれは淘汰されてしかるべきなんじゃないかな。これがポジティヴなのかネガティヴなのかわかんないけど、もう甘んじて受け入れてる。俺ひとりが考えても世の中の流れには抗えないぞ、と。

――悲しいけど、CDメディアがもう不要だという現実は明らかですよね。その中で足掻くミュージシャンのことは応援したいけど、これが今後さらに盛り上がって将来的に売れていくものではないと、誰もが気づいている。

横山:そう。ミュージシャンは「アルバムっていうのはアートワークがあって、パッケージされてナンボだから、それを手に取ってほしい」って言うし、その欲求はもちろん僕の中にもある。真っ先に僕が言い始めたんじゃないか、っていうぐらいの気持ちもあったんだけど。でも、そこらへんを情緒的に訴えかけてくのも……もう飽きて(爆笑)。

――飽きましたか!

横山:求められてないんだったら、もうしょうがない。そうやって肚が据わったのがここ3年くらいか。ビザオブデスとして日々新しいバンドを探すし、いろんなバンドと話もするけど、もう自分もCDをバンドのブランディングのためのツールとしか考えてないことに気づくの。本当は一番大切なものなんだけれど、今、現に大切にされてないから。そこを認識しなきゃいけない。バンドと話すときも「CD売れないから、まず」って話す自分がいるのね。「ピザオブデスから出したって、2000枚が2500枚になることはあるだろうけど、2000枚が5000枚にはならないから」って。

20131016-yokoyama-02.jpg音楽業界の現状は厳しいが、決してネガティブな心境ではないという

――あぁ、数字としてそこまでシビアですか。

横山:そう。でもその代わり、バンドを長く続けるための方策を一緒に考えることはできる。だからレコード会社っていうよりも、そのサポートをする仕事になってきてるかな、最近は。この先も職業ミュージシャンってどんどん減ってくと思う。そしたらみんなアルバイトしながら音楽をやっていかなきゃいけないし、さすがに自分ひとりじゃ手が回んないことも多くなるわけで。レコード会社はそのお助け会社なんだって自覚しなきゃならないんじゃないのかな、特にインディーズは。

――レーベルの経営状況はどうですか。CD売上が占めていた利益はどれくらい変わってきたのか。

横山:ピザオブデスはハイ・スタンダードのDVDが売れたから、正直、景気悪い気はしてなくて。ただね、もしそれがなかったらって考えると……けっこう怖いよ。好調なのは、なぜかKen YokoyamaとBBQ chickensだけ(笑)。それも最盛期の1/5、1/10ぐらいの数字だから。

――つまりハイスタという特効薬なしに、今、CD売上で黒は出せない状況?

横山:いや、黒は出してる。なぜかというと制作費を抑えてるから。もうそっちを締め付けるしかなくて。スタジオの値段なんかもシビアだから俺も「スタジオで新しい音出そうと思うな。家でやれ」って言ってるし。

――制作費を削ると、納得いくまでクオリティを追求できなくなる。あるいは、ダウンロード音源だと作り手が望む音質で聴いてもらえなくなると指摘する意見もありますよね。そのあたりは?

横山:それは確かにそうだけど、でも、しょうがないじゃないかとも思う。音質を追求したいなら、それこそ何年もかけてレコーディングする方法もあるけども、実際キックバックがないわけ。それは人が来ないところにでっかい商業都市を作るのと一緒。俺だって自分のレコーディングもなるべく最短で済ます。音質なんかわかりゃしねぇだろって思うもん。

――ほんとに? すごく乱暴な意見にも聞こえますが。

横山:そうかもしれない。まぁ好きな音や欲しい音は自分でハッキリ知っているっていうのもあるけど。でも僕はただのミュージシャンじゃないから。自分でレコード会社も経営して、若い奴らにいろいろ教えていかなきゃいけない立場でもあるから。やっぱりドライな状況を突きつけられてて、ドライにならざるを得ない。新人に対して「腐らずに頑張ってれば売れるから」なんて無責任なことは絶対言えないでしょ。だったら現実を認めて、バンドの名前を少しでも大きくする手伝いをしてあげるしかない。そしたらライブもやりやすくなるし、グッズだって売れやすくなるし。
後編:「90年代みたいな夢はもう辿れない」横山健のシビアなシーン分析と、レーベルが目指すもの
(取材・文=石井恵梨子/写真=石川真魚)

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