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昭和のある家族の栄枯盛衰を描くTRASHMASTERS『堕ち潮』

ぴあ

TRASHMASTERS『堕ち潮』チラシ

いまの日本に横たわる社会問題を背景に、人々の葛藤、人間同士のぶつかり合いを描いてきたTRASHMASTERS。昨年はカジノ建設をめぐる家族の衝突を題材にした『対岸の絢爛』上演のほか、ダムに沈んだ村を舞台にした2017年初演の作品『埋没』の四国ツアーを行い、モデルとなった村でリーディング公演を開催するなど、コロナ禍にあっても精力的に演劇を創作し続けている。

劇団創設20周年を迎える今年、上演する新作は「堕ち潮」。1980年代の九州、度重なる台風による水害に苦しむ町が舞台。家を奪い、人の命を奪い、インフラを損なわせる水害だが、建設業を営む一家にとっては、マイナスばかりではない。渡辺哲演じる一家の父親は、さらなる利益と名誉を求めて市議会選への出馬を目論む。

タイトルの「堕ち潮」は、大分の海沿いで育った主宰の中津留章仁による造語だという。潮は満ちれば、やがて必ず引く。その潮が満ちも引きもせず停滞するという、実際にはありえない状態を表したもの。悪いことがあっても、耐えればいつかまた良いことがある。そんなふうにして日本社会は成長を続けてきた。けれども悪い状態のまま、潮が満ちない日もやがて来る……。

がむしゃらに利益を追求する人々の栄枯盛衰。自然災害に翻弄される地域住民。どれも、おそらく日本のどこにでもあった、そして今もどこかに残っている光景だ。私たちが見て見ぬふりをしている、あるいはどこか遠くの自分には関係のない出来事として捉えているその現実を、今作はある一家の濃密な会話を積み上げて、じっくりと描き出す大作になりそうだ。

なお、当アプリの連載「めくるめく演劇チラシの世界」では主宰・中津留章仁と中井美穂の対談を掲載中。ぜひご一読を。

文:釣木文恵

TRASHMASTERS『堕ち潮』
作・演出:中津留章仁
出演:川崎初夏 / 星野卓誠 / 倉貫匡弘 / 森下庸之 / 長谷川景 / 藤堂海 / ひわだこういち / みやなおこ / 清水直子 / 石井麗子 / 安藤瞳 / 阪本篤 / 小平伸一郎 / 伊藤壮太郎 / 渡辺哲

2021年2月4日(木)~2月14日(日)
会場:東京 座・高円寺1

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