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ブシロード 木谷高明が語る、『バンドリ!』プロジェクトの軌跡と未来 「何十年も続く作品にしたい」

リアルサウンド

18/11/6(火) 10:00

 2015年からスタートした、ガールズバンドを題材にしたメディアミックスプロジェクト・『BanG Dream!(以下:バンドリ!)』。本作の最も大きな特徴は、物語の主軸となるバンド・Poppin’Party(以下:ポピパ)のキャラクターを演じる声優自身が、実際に全ての楽曲・全てのパートを本気でクオリティ高く演奏すること。ポピパだけでもすでに11枚のシングルをリリースし、幾度となくリアルライブを成功させている。

参考:『バンドリ!』Poppin’Partyが迎えた“新たな季節” 『ガールズコード』と2018年の飛躍を紐解く

 そんな同作は、2017年1月にTVアニメ化。その放送中の3月にはスマートフォン向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!(以下:ガルパ)』がリリースされ、同年8月にはポピパが、日本のガールズバンドとして結成から史上最短での日本武道館公演を開催。さらに2018年には、ガルパ発の第二のリアルバンドであるRoseliaがフジテレビ系音楽特番『2018 FNSうたの夏まつり』に出演を果たした。今回はそのバンドリ!を企画し、現在もプロジェクトの統括として携わる、株式会社ブシロード・木谷高明氏にインタビューを行った。2019年にTVアニメ2期・3期の放送も決定している今だからこそ話せる『バンドリ!』プロジェクトのこれまでとこれからについて、熱く大ボリュームで語ってもらった。(須永謙二)

■トップランナーが見るエンタメ業界の現況と、その中での戦い方

――木谷さんは90年代から今に至るまで、アニメを含む言ってしまえばオタク文化と密接にビジネスをやってこられた方だと思うのですが、時代が進むなかでそういった文化が好きな人の数も増えたように思います。

木谷高明(以下、木谷):そうですね。ただ、昨今エンタメは供給が多いですよね。もうアイドルは完全に飽和しちゃってると思いますし、アニメもさすがに2年後には減るんじゃないでしょうか。そういう時勢のなかで『バンドリ!』としてすごく力を入れてるのは、YouTubeの『バンドリ!ちゃんねる☆』。そこにフルで楽曲を上げて、あわせて宣伝をいっぱい乗っけてるんです。音楽を使ってコンテンツ全部の宣伝をする、という形に宣伝手法は変わったんですけど、それは今の世の中の情報量が右肩上がりで増えていっているからなんですよ。

――と、いいますと?

木谷:例えばスポーツ新聞の場合は、昔と比べて新聞の売り上げが落ちる中、Yahoo!ニュースなどへの転載の手数料で売り上げをあげているんです。中には、1日中テレビを見て書き起こしの記事を書いている人が複数人いるらしいなどという話もあるんですよ。ということは、ひとつの話題がまた別の複数のニュースに分かれていく。メディアとSNSにより、世の中の情報量は加速度的に増しています。そんななかでプロモーションの仕方が従来と同じでは、勝てるわけがないですよね。圧倒的なわかりやすさと圧倒的な伝達力、そして圧倒的な魅力。この3つがないとダメです。とは言え、従来と変わらないプロモーションをしている作品もよく目にします。だから面白いアニメが多いのに、何の評判にもならずに終わることが意外と多いと思うんですよ。もう少し試行錯誤できることがあるにも関わらず、「売り上げの半分は中国で回収できるからいいや」みたいな理由で、そのままにしておくのはもったいないなって思うんですよね。

――その点、今回メインでお話をお伺いする『バンドリ!』は非常に露出が多くて。カフェ展開(『バンドリ! ガールズバンドパーティ!カフェ 2018』)や富士急ハイランドとのコラボ(『バンドリ! ガールズバンドパーティ! in 富士急ハイランド』)をはじめ、パ・リーグ6球団とのコラボゲームもやられていましたね。

木谷:そうですね。『バンドリ!』は、分野を問わず積極的にコラボを行う姿勢です。マニアから一般向けまで、全部やろうということで。

――その『バンドリ!』を含め、木谷さんは斬新な企画を数多く立ち上げられていますが、プロジェクト自体を思いつくのはどういったときなのでしょう?

木谷:いろいろですね。散歩してるときもだし、今こうやって話してるときにも思いつくかもしれない。だから“どんなとき”っていうのはないんです。でも、肩に降りてくるような感じはしますね。もしくは、ヒントだけはあるんだけどまだパーツが集まりきらずにずーっと引っ張ってるものもある。で、ふとしたときに「ようやくパーツが埋まった」みたいになるものがあるんですけど……最近一個思いついたとある企画は、まさにそうでしたね。まだ発表はできませんが、いろいろと施策は考えています。

――では続いて、『バンドリ!』というプロジェクトを立ち上げたきっかけをお伺いできますか?

木谷:当社で『スクフェス(※ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル)』というアプリを運営するなかで、音楽キャラクターコンテンツというものへの可能性をすごく感じたんです。それでずっと漠然と「何か他にないかな?」と考えていたのですが、具体的なプロジェクトを思いつくまでには至っていなかったんですね。そんな中、2014年に『アイドルマスター ミリオンライブ!』にも出演している愛美さんが、さいたまスーパーアリーナで行われたアイマスの合同ライブ(『THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!2014』)でギターを弾いたら、会場がどよめいた……ってスタッフが報告してきたんです。僕はその理由って、ふたつあると思うんですよ。

――ふたつですか?

木谷:そう。ひとつは「ここまでキャラに合わせてくれたんだ!」というファンの感謝。で、もうひとつは「あ、声優なのにギター弾けるんだ」という驚きです。それでそのスタッフが「愛美にガールズバンドをやらせたいんです!」と提案してきたので、「やるんだったらコンテンツにしなきゃ意味がないだろ!」と……それが、ガールズバンドでキャラクターコンテンツを作るスタートでしたね。それで「やっぱり実際に弾けないと、『けいおん!』や『涼宮ハルヒの憂鬱』は超えられない」と思ったので、楽器を弾ける声優さんを探すことから始めて……だから、ポピパのキャラクターデザインってなんとなく本人たちに似てるでしょう? あれは、先に声優が決まってたからなんです。それで並行して世界観やキャラクターの設定を中村 航先生にお願いして作っていただき、2015年2月号の『月刊ブシロード』で漫画を始めて、4月にライブをやるのも最初から決めていました。

――その頃には、弾ける声優さんが集まっていた。

木谷:そうですね。伊藤(彩沙)さんだけは、全く経験がなかったんですけど。で、西本(りみ)さんは、前の年のミルキィホームズフェザーズのオーディションに参加していて、ファイナリストだったんですね。それで僕としては見所のある方だなと思っていたんです。それで、いざキャストを集める際に「そういえばあの子、ベース弾けたはずだな」と思って僕が西本さんに電話したんですよ。「実はこういう企画があるんだけど、やる気ある?」って。

――直接木谷さんから。

木谷:はい。それで「興味あります!」って言ってくれたので、直接話をして合宿から参加していただくことになったんですけど……ただ、去年の東京ゲームショウで彼女から「実はオーディションのときに持ってたのは、ベースじゃなくてギターでした!」と言われまして(笑)。ただ、実際いろんな楽器を経験していたようで、ベースも未経験というわけではなかったんですね。

――なるほど。じゃあ音楽的なセンスもあるし、それだけ木谷さんの印象にも残っていたということですね。

木谷:そうそう。もちろん声優としても成功できると感じていました。

■『バンドリ!』成功の要因

――お客さん側からは、ライブごとにメンバーがだんだん集まっていくように見えていたと思います。

木谷:それは、漫画に合わせての展開ですね。ただ、アニメも形は違えど徐々にメンバーが集まっていくのは同じ形で……僕、ああいうの好きなんですよね。昔のスポ根漫画とか男の友情を描いたような漫画ってだんだん仲間が増えていくんですけど、そういう成長ストーリーがすごく好きなんです。それに『バンドリ!』って、余計な捻りもあんまり入ってないから、すごくわかりやすいと思うんですよ。メンバーを揃えるところから始まって、次に「ライブハウスでライブしたい!」という目標ができる。それが実現したら「もっとでかいところでやりたい!」「仲間と一緒に演奏したい!」……と、わりかし目的とか動機がはっきりしてるんです。そこに友情・絆みたいな要素が加わるのも、割と昔ながらの王道の作品っぽいですよね。

 『ラブライブ!』もそういう部分はあるんですけど、スクールアイドルというものが現実にはないから、リアリティのある目標を設定するのが難しいんです。でもバンドだと、今言ったようなリアルな段階を踏んでいける。そこがいいところかなと思いますね。それに、アニメの後半に(戸山)香澄の声が出なくなるっていうのも、実際最初の頃にあったことなんですよ。弾くことを気にして力みがあったりして、愛美さんの声が出なくなっちゃったんです。

――ちょうど声帯のあたりが詰まるような感じになって。

木谷:そう。で、「声が出ない」となるとそれが気になっちゃって、悪い連鎖に入っちゃう。そういう実際にあったことを、ある意味題材のようにしながら描いてもいます。

――そんななかで、木谷さんがブレイクの兆しを感じたタイミングってありますか?

木谷:うーん……順を追ってお話しますと、まずアニメの前評判がすごく高かったんですよ。でも、1話放送後の反応を見て、正直「ヤバい」と思ったんです。「このクオリティでダメなのか」と。第3話の「きらきら星」のくだりとかも、すごい揶揄をされましたし……それでプロモーションをゲームに全振りするように切り替えて、『ガルパ』の事前登録にはものすごく力を入れたんです。

 その一方で、ライブは安定していたんですよね。2017年2月5日の3rdライブ(『3rd☆LIVE Sparklin’ PARTY 2017!』)も成功しましたし、日本武道館の先行申込券をBlu-rayの1巻につけるとなったらガーッと売り上げも伸びたんですよ。で、『ガルパ』をリリースして一気にガーン! と行けたので……だから「なんでこれ、アニメがああだったのにヒットしたの?」って不思議に思ってる人が多いと思うんですけど、僕はゲームの出来の良さと、やっぱり実演ライブのおかげだと思います。できそうにないことを実現できたから。あと、3rdライブにサプライズでRoseliaが出てきたのもよかったですね。お客さんはきっと、そこで歌うとは思ってなかったでしょうから。

――前年のゲームショウでお披露目はされていましたけど、ライブ展開について話してはいませんでしたからね。

木谷:そう。歌う気配を全く見せてなかったんです。あと曲も、「BLACK SHOUT」もいいし、「魂のルフラン」でスタートしたっていうのもよかったと思うんですよね。しかもRoseliaって、今ではメンバーが入れ替わってるからリアルにバンドとしてのドラマがついてるじゃないですか?

――今井リサ役/ベース担当の遠藤ゆりかさんが6月に卒業して、引き継ぐ形で中島由貴さんが加入されましたね。また、9月に行われたファンミーティングでは白金燐子役/キーボード担当の明坂聡美さんが卒業して、現在は白金燐子役のオーディション中。なので体制も現在は、5人から4人体制に変化しています。

木谷:なので、「次は4人でやります!」とライブの開催を宣言していて、その先行申込券を月刊ブシロードにつけているんですけど、その反響もとてつもなくて……きっと、ファンはドラマが観たいんでしょうね。ポピパも日本武道館までの道のりがひとつドラマになっていたと思うんですけど、逆にポピパはアニメがあるからこそあまりそのイメージの枠をはみ出せないんですよ。でも来年は、ポピパにも新たなドラマが生まれる予感がしています。

――アニメの2期・3期もありますから。

木谷:はい。1期はオーソドックスに作りましたが、2期は最初から飛ばしますよ。1話からもう、すごいです。

――2期はCGになるんですよね。

木谷:ええ。12月12日にイオンシネマ板橋で「BanG Dream! 2nd Season」制作発表会を開催しますが、そこでもいろいろとサプライズを仕掛ける予定です。あと、2018年10月からイオンシネマで『BanG Dream! ガルパ☆ピコ』のメンバーが上映前に流れるマナー映像に出ているんですよ。現在はPastel*Palettesバージョンです。期間ごとにバンドを交代しながら、1年間続く予定になっています。さっきのコラボゲームの話じゃないですけど、これからは一般化もしていきたいですし、女子層のファンもさらに増やしたいですね

■木谷氏が感じる、女子向け作品を手がける難しさとは?

――感触的には、まだ女子はそんなに多くないと感じられている。

木谷:ガルパカフェを開いた時はお客さんの6割が女子のときもあったので、女子ファン自体は多いんですよ。でもライブとなるとハードルが高く感じる方もいるみたいなので、今後は『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の舞台みたいに『バンドリ!』でも女子限定の公演日を作りたいんです。5月にはArgonavisという男性バンドも発表したんですけど、改めて女子向けって難しいな、と。

――それは、どのような部分が?

木谷:今って、ほとんどのアプリゲームはガチャで絵を買ってるんですよね。だから「男性が男のキャラの絵を買うの?」っていう問題にぶち当たるんですよ。女性ユーザーの中には、男性以上にかわいい女の子が好きな方も多いため、同性キャラの絵も買う傾向があるんです。なのでかわいい女の子が登場するコンテンツを作るときは、変に男に媚びてる感じを出さなければ女子ファンは必ずできるし、弊社の作品も女性ファンがついているんですよ。それに、僕が男に媚びてる作品がちょっと。「空から女の子が降ってくるなんて、あるはずないだろ! 自分で努力して勝ち取れよ!」みたいな気持ちになっちゃうんです(笑)。

――先ほど、長所としておっしゃっていた「リアルな段階を踏める」という言葉の根底にも、そういう想いがあるのかもしれませんね。

木谷:そうですね。最近ではそこから先に進んで、「もう男性キャラを出すのはやめたほうがいいんじゃないのか?」と思っていて。というのは、今って映画もどんどん短くなってきていて、わかりやすく描かなければいけなくなってきています。そうなると、恋愛モノ以外で何かと並行して恋愛を描こうとすると、本筋をちゃんと描けなくなってしまうんですよ。『タイタニック』みたいに恋愛と歴史物語を両方同じぐらいの比重で描こうとするとメインテーマがぼやけてしまうので、もしそうするならば長尺の作品にせざるを得なくなる。だから12~13話だけの間では、あんまりいろんな要素を入れて描けないんですよね。

――だからこそ『バンドリ!』のアニメ1期では、王道でやっていったし。

木谷:そう。「仲間を集めてチャレンジする」っていう。で、そのなかでちょっと挫折もあって……だから2期・3期は、もっと男性キャラが出てこないかもしれません。

――先ほどブレイクを牽引した要因のひとつに挙げられた『ガルパ』ですが、PR以外に内容面での成功の理由はどういったところにあると思われますか?

木谷:ガルパのコンセプトはCraft Eggさんに考えていただいていて、楽曲に関しては上松(範康)先生を中心にElements Gardenさんにおまかせしているので、そのチームワークがうまくいってるんだと思います。あとは、今までのコンテンツと違ってカバーも入れた、ということが大きいのかもしれません。

――たしかに。その方針は、最初から決まっていたんですか?

木谷:はい。いちばん最初の2015年4月のライブのときに、スタッフが「オリジナル曲が少なすぎて、ライブができません!」って報告してきたんです。だから僕が「何言ってるんだ? バンドなんだからカバーをやればいいじゃないか」と言って。そしたらそれがファンにウケたんですよ。それで、ライブが終わったときにCraft Eggさんから「ゲームにカバー曲を入れていいですか?」と提案があって、「ぜひ。僕は大賛成です」と進めたのがきっかけです。でも、実はこれって、弊社の『ヴァイス・シュヴァルツ』というカードゲームと同じスタイルで。少し勢いが落ちてきても、人気のタイトルが出ると盛り返す。この10年、過去作品を登場させることで再び注目が集まる状況を体感していたからこそ、カバーは大賛成でした。あともうひとつの理由は、人口ですね。

――人口ですか?

木谷:去年生まれた子どもは94万人と言われています。でも団塊ジュニアの世代は、毎年200万人以上生まれていました。『新世紀エヴァンゲリオン』の「残酷な天使のテーゼ」がカラオケでよく歌われているのは、団塊ジュニアの層にも刺さったからだと思うんですよ。その頃の年齢で覚えた歌は忘れないですからね。もちろんいちばん人口が多いのは団塊の世代なんですけど、そこはもう70歳以上になっているので、その次の世代としていちばん大きい団塊ジュニアの層に刺すのは大事なことなんです。だからきっと、これからカバーの時代がくる可能性もあると思いますよ。

■「RAISE A SUILENは女性版ONE OK ROCKを目指している」

――ライブのほうのお話に戻ってしまうのですが、ポピパもだいぶライブも重ねてきました。彼女たちの演奏能力やパフォーマンスについては、どう感じられていますか?

木谷:両方とも上がっていますし、少し余裕まで感じられるんですよね。特に大塚(紗英)さんと西本さんのふたりは「職人ですか?」ぐらいのレベルになっていて。大塚さんは、アニサマ(『Animelo Summer Live 2018 “OK!”』)での「God Knows…」のギターソロもよかったですね。あれは「すげぇ!」って思った人も多いんじゃないかなと思います。それに大橋(彩香)さんと伊藤さんは笑顔がいいですよね。そして愛美さんはフロントマンとして全体的なバランスをうまく取りつつ、パフォーマンスを大切にして動きながら、メリハリをつけて演奏にも注力していて……だから、すごくバランスが取れたバンドだなぁと思いますよ。メンバーが変わったから仕方ない部分はあると思うんですけど、Roseliaとは演奏技術でちょっと差が開いちゃったかなと感じるくらい上達しています。でも、Roseliaはこれから新メンバーも入って、2~3カ月ぐらいはしっかりもう一度練習し直す時期になるんじゃないでしょうか。 もう一度合わせるところからスタートするのは大変だと思いますが、彼女たちのポテンシャルならさらなるスキルアップが可能だと期待しています。

――メンバーが変わると、呼吸から変わってしまいますからね。

木谷:そうですね。あとは3番目の実演バンド・RAISE A SUILEN(以下:RAS)も、先日THE THIRD(仮)名義でライブアルバムを出したんですが、おそらく純粋な演奏技術だけで言えば、RASが一番だと思いますね。ポピパも負けているわけではないと思いますが、ポピパとRASは名前が知られている日本のトップクラスのガールズバンドと並んでも遜色のない実力を持っていると思います。

ーーそのRASの構想は、どのように生まれたのでしょうか?

木谷:RASは元々僕が発案しました。『ガルパ』の他の3バンド(※「Pastell*Palettes」・「Afterglow」・「ハロー、ハッピーワールド!」。この3バンドは現在演奏は行っていない)を歌うときに、バックバンドがいないとカラオケになってしまう。かといって男性のバックバンドを入れたくはなかったから、まずはバックバンドを担当するグループを考えたんです。その流れで自分たちのオリジナル曲も歌ってもらおうか、と。

――このメンバーになったきっかけは何だったんでしょうか?

木谷:Raychellさんには『カードファイト!!ヴァンガード』(テレビ東京系)のエンディングテーマを歌ってもらったことがあったので、そこから去年行われた弊社の10周年ライブでも歌ってもらったんです。そのときにドラムの夏芽さんがサポートで手伝ってくれて、ギターを大塚さんが弾いてるのを見て「これでもう1バンド作ったらいいんじゃないの?」と思ったのが最初ですね。先日、5人目としてDJ担当の紡木吏佐さんが加入しました。彼女もすごく練習しているので、ライブなどの雰囲気作りが上手くて。しかも小さい頃にインターナショナルスクールに通っていたので、英語もできるんです。だから、歌・演奏・英語の三拍子が揃っているので実は海外展開も視野に入れていて。女性版ONE OK ROCKを目指してるんですけど……大袈裟すぎますか?(笑)。

――いえいえ、そんなことは!

木谷:あと、RASには今後、バンドとしてもっと自由にやってもらおうかなと思っていて。来年はほかの作品の、それも他社作品のオープニングやエンディング曲を担当してもらいたいですね。そうやってポピパとRoseliaとの差別化もしていこうと考えていて、演奏や歌のスキル的にも彼女たちなら実現してくれると期待しています。それにRASって、身長差も含めてのアンバランスさがいいんですよ。初めて見る人でも、すぐに覚えてもらえると思うんです。

■「『バンドリ!』はガンダム、『スタァライト』はエヴァに似ているんです」

――『バンドリ!』も含めて、最近の木谷さんが手掛けられているプロジェクトではやはり“音楽”というものが鍵になっているように思います。

木谷:音楽コンテンツは積極的に作っていくべきなんです。たとえ音楽コンテンツじゃなくても、音楽の要素を入れるべき。例えばアニメがヒットしたとしても、次に制作スタジオの枠を取れるのは3年後、早くて2年後です。その期間をどう埋めるかと言ったら、アプリゲームとライブしかないんです。だから音楽の要素は重要なんですね。同じ映像を100回観る人ってなかなかいないと思いますけど、同じ曲を100回聴く人はいますから。しかもイベントやライブとスマホって、相性もいいですし。

――その点は、今の文化に当ててだけではなく、昔のお仕事の中でも大事にされてきた部分のように思うのですが。

木谷:いや、そんなことはないんですよ。イベントが好きだからライブを行っていたというのはありますけど。前の会社(※株式会社ブロッコリー。木谷氏は同社の創業者でもある)でもライブやCDの発売をしていましたけど、それをあんまりビジネスにしようとは考えていなかった。今にして思うと、もっとやるべきでしたね。

――ミュージカルも『ギャラクシーエンジェル』でやられていましたし。

木谷:そうですね。でも『スタァライト』は、「男性が舞台を観るきっかけになった作品」って後々言われると思います。たぶん30代の男性に「舞台観たことある?」と聞いたら、そこまでいないと思うんです。でも、『スタァライト』のライブを観ると気づくんですよ。「『スタァライト』の舞台って歌いながら下りてくるから、ある意味接近イベントじゃん」って。それは、6月末のライブでお客さんが「え、これ現実!?」みたいにほっこりした顔をしているのを見て、思ったことなんですけど。

――その音楽を軸にした『バンドリ!』という作品を、木谷さんは今後どう成長させていきたいですか?

木谷:『バンドリ!』はやっぱり『ガンダム』にしたいんですよね。40年50年と続くものにしたい。だからこそ普遍的な物語にしなければいけないんですよ。例えば香澄たちが物語の中で高校を卒業するにしても、大学に行ったり社会人になってもバンド活動はやっている。で、もしかしたら花咲川女子学園の学園祭に、OGとしてゲストに来てライブをするかもしれない。そういった、ずっと続いていく物語にしていきたいですね。

――物語としては普遍的なところがやはり大事で。

木谷 そうですね。だから目的がはっきりしている『バンドリ!』は『ガンダム』に似ていて、『スタァライト』は『エヴァ』に似てるんですよね。

――最後にお聞きしたいのですが、今後木谷さんがやってみたいことはありますか? 『バンドリ!』に関係しないことでも構わないのですが……。

木谷:うーん……実際進めているものもいくつかあるんですけど、まだ明かせないですね。でもどれももうピースは埋まっていて、どうブラッシュアップするかというところまで来ています。また新しいことが発表されていくのを期待して待っていてもらえればと思います。(須永謙二)

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