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多様化する“続編もの”ドラマ 成功の鍵は「変わったこと・変わらないこと」の見極めにあり

リアルサウンド

19/12/19(木) 6:00

今クールの連続ドラマはいわゆる続編モノが多かった。

 13年ぶりの続編となった『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)、12年ぶりの続編となった『時効警察はじめました』(テレビ朝日系)は、わかりやすい続編だが、今年の1月クールに放送された『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』の半年後で同じ世界観を舞台にした刑事ドラマ『ニッポンノワールー刑事Yの反乱ー』(日本テレビ系)や、キャラクターだけが同じで舞台を不動産会社から航空会社に移した『おっさんずラブ-in the sky-』(テレビ朝日系)までバリエーションは様々で、『相棒』、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(ともにテレビ朝日系)、『孤独のグルメ』(テレビ東京系)といった人気シリーズも続編モノだと考えると、一口に続編モノと言っても、全く別のジャンルに思えてくる。

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 では、その違いはどこにあるのか。結論から言うと、それは“時間の流れ”の違いではないかと思う。

 まず『まだ結婚できない男』と『時効警察はじめました』だが、この二作は劇中の時間と視聴者の時間が同じ流れとなっていた。だから13年後に続編が作られた作品なら、登場人物もきっかり13年分、年を取っており、たとえば『時効警察はじめました』ならば、ヒロインの三日月しずか(麻生久美子)がいつの間にか結婚して離婚していたといった生活面での変化が描かれていた。

 とは言え、まったく別人のように変わってしまうのであれば続編の意味がないので、そこは前作からの連続性が求められる。『時効警察』ならば、主人公の霧山修一朗(オダギリジョー)と三日月のどこかすっとぼけた楽しいやりとりだし、『まだ結婚できない男』なら桑野信介(阿部寛)の偏屈な考えだったりする。そんな「変わったことと、変わらないこと」を観ることで、視聴者は昔ながらの友人に再会したような感覚が味わえる。これは、生身の俳優が演じるからこそ成立する感覚だろう。

 『北の国から』(フジテレビ系)や『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)といった長きに渡ってシリーズ化された作品では、小さな子どもだった俳優が時間の経過とともに大人に成長し、進学したり結婚したりする姿が描かれるため、子どもの成長記録的な側面がある。

 いわゆる現代を舞台にしたドラマの多くはこういったリアルタイム系だが、それだけに出演俳優のスケジュールをあわせることが難しい。特に主演俳優が10代~20代の若手だったりすると、出演直後に突然人気が出てしまうことが多い。出演時に地味な脇役だった俳優が大ブレイクしてしまうこともあれば、様々な事情で引退したり、出演することができない俳優もいたりするので、時間が経てば経つほど、続編が作りにくくなってしまうのだ。

 そんな中、絶妙なタイミングで二度に渡って映画化し、きれいに終われたのが、宮藤官九郎脚本の『木更津キャッツアイ』(TBS系)だろう。本作は主人公のぶっさん(岡田准一)が癌で余命半年という状況から始まるのだが、完結編の映画『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』は、ぶっさんが死んだ二年後という舞台設定で、ゾンビとして登場する(昔のままの)ぶっさんに、大人になりつつある仲間たちが別れを告げることがテーマだった。これはドラマ終了から4年後という、あのタイミングでないと描けなかったテーマである。

 2017年に7年ぶりに続編が作られた医療ドラマ『コード・ブルー』(フジテレビ系)もそうだが、生身の俳優を起用した作品は続編を作るタイミングが難しい。しかし、だからこそうまくハマると、青春の一場面を刻印した「思い出のアルバム」のような美しい効果を生み出すことができる。

 一方、『相棒』、『ドクターX』、『孤独のグルメ』といった作品は、劇中で流れている時間は現代と同じだが、主人公は年齢不詳で時間が止まっているようにみえる。こちらはアニメでいうと『サザエさん』(フジテレビ系)に近い作りで、劇中の時間は確実に流れているのだが、登場人物は同じ姿のままだ。主人公が大人だから細かい変化を描いていないだけとも言えるが、例えば『相棒』の場合は、周囲の人間関係は変化していくのに、主人公の杉下右京(水谷豊)は年齢不詳で家族関係も謎なので、年々、漫画やアニメのキャラクターに近い存在になってきている。

 最後に、近年増えているのが、主人公の過去を描いた前日譚。最近では『男はつらいよ』シリーズの主人公・車寅次郎(渥美清)の少年期を描いた『少年寅次郎』(NHK総合)が印象的だったが、前日譚の場合は、人気作のその後を描く続編モノとは真逆の、過去を掘っていくアプリーチとなるのだが「変わったことと、変わらないこと」を描くという意味では同じことだ。『少年寅次郎』は、その按配が絶妙で「あの子どもが寅さんになる」という説得力があったことが一番の成功要因である。

「変わったことと、変わらないこと」、その見極めが大事なのだ。 (文=成馬零一)

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