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Ado迎えたjon-YAKITORY「シカバネーゼ」バイラル好調 “やり場のない心情”を描いた現代のミクスチャーロック

リアルサウンド

20/6/16(火) 12:00

参考:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest

 Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(6月11日公開:6月4日~6月10日集計分)のTOP10は以下の通り。

1位:yama「春を告げる」
2位:瑛人「香水」
3位:YOASOBI「夜に駆ける」
4位:DISH//「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」
5位:優里「かくれんぼ」
6位:Shuta Sueyoshi「HACK」
7位:神はサイコロを振らない「夜永唄」
8位:DISH//「猫」
9位:オレンジスパイニクラブ「キンモクセイ」
10位:jon-YAKITORY「シカバネーゼ」

 先週に引き続き、yama、瑛人、YOASOBIがトップ3をキープ。さらに『ミュージックステーション』に出演したことで、DISH//「猫」が原曲と「THE FIRST TAKE ver.」の2パターンでトップ10に食い込むなど、各曲が継続したチャートインを果たしている。そんな中で、今週は10位のjon-YAKITORY「シカバネーゼ」を取り上げたい。

 jon-YAKITORYはボカロPとしても活動している音楽プロデューサー。今回ランクインした「シカバネーゼ」はもともとボカロ曲として制作されていたようだが、ボーカリストにAdoを迎えたニューバージョンが3月29日に配信リリース。かゆかが描いた印象的なイラストも相まってじわじわ人気が高まり、このタイミングでバイラルチャート10位に躍り出た。

シカバネーゼ / jon-YAKITORY feat. Ado (Official Video)

 「シカバネーゼ」が人気を博している理由のひとつに、Adoのクオリティの高い歌唱が上げられるだろう。BINやsyudouのカバーなどで話題になった後、くじらとコラボレートした「金木犀」でボーカリストとして大きく羽ばたいたAdoは、毒っ気のある低音歌唱から、叫びのような高音歌唱までを自在に使い分け、様々な楽曲を歌いこなしていく素晴らしいテクニックの持ち主だ。大サビでの声色の変化には、聴いていてもゾッとするほど鬼気迫るものがある。ボカロ曲だった「シカバネーゼ」がAdoの表現力豊かなボーカルによって色味を変化させたことは、大きなインパクトを伴っていたに違いない。

金木犀 feat.Ado (Official Video)

 また、疾走感で攻めるのではなく、ミドルテンポでしっかり聴かせる楽曲展開も面白い。野太いベースラインにトラップビートを混ぜ込みながら、Led Zeppelinかと思うくらいダイナミックなロックサウンドを聴かせる瞬間もある。まさに2020年のミクスチャーロックという感じだが、それらを違和感なく配合できるところに、現代のコンポーザーらしい強みが見えてくる。

 今のところ「シカバネーゼ」のヒットはTikTokによるものが大きいが、投稿を見ていると〈本性なんて見せない/美しい僕らのまま/さあ神様 壊して壊してよ ねぇ〉という箇所が多く使用されている。もちろんこの部分だけをピックアップして独自解釈することも可能だが、楽曲全体はやり場のない絶望や怒りに対してもがくような内容になっていて、そうなる前に「美しいままの姿で壊してくれ」と叫ぶ切実さが、多くの人の心を虜にしているのではないだろうか。

 なお、歌詞だけ見ると“重さ”や“暗さ”が際立つが、そこに「シカバネーゼ」という言葉遊び的なタイトルが付いていることも、同曲が受け入れられやすくなっているポイントだろう。〈同じように戻せはしない/最後にまた /笑って笑ってよ僕に〉というパートも、コロナ禍で変わってしまった世界に絶妙に合っているし、やはり優れた楽曲は図らずも世の中とリンクしてしまうものなのだろうか、と思わざるを得ない。

 jon-YAKITORYは、6月7日には古川由彩をボーカルに迎えた「ススメ!」という曲もリリースしているが、こちらは生きづらい世の中での孤独な心情をキャッチーなサウンドで昇華したダンスポップになっている。“ネガティブ”をバネにして生まれるjon-YAKITORYのポップソングたちは、今後も大いに話題になりうる可能性を秘めている。

ススメ! / jon-YAKITORY feat. 古川由彩 (Official Video)

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